ITやテクノロジーの進化に伴い、通常のデータでは処理できない巨大な量を処理する「ビックデータ」が注目を集めている。
GPSなどの位置情報データもその一つで、利用分野は今後、産業、個人、家庭、公共などで飛躍的に拡大すると見込まれており、総務省の「G空間×ICT推進会議報告書」によると、市場規模は2020年度には最大62兆円に拡大すると予測されている。
位置情報データ活用プラットフォーム「Location AI Platform」を開発・提供するクロスロケーションズ株式会社は、企業が位置情報ビッグデータを活用し事業展開やマーケティングに活用できるプラットフォーム「Location AI Platform(ロケーションエーアイプラットフォーム)」をクラウド形式で提供開始した。
同社によると、これにより、専門知識が無くとも、簡単に位置情報データを活用した事業展開やマーケティングが行えるようになったという。
専門知識不要で簡単に位置情報データを活用
広告配信における位置情報の活用の現状は、ビッグデータ活用の側面より、ターゲット顧客をどこまで高精度にトラッキングできるかというマイクロデータとしての運用が注目されている。しかし、トラッキングを主体とした来店計測ではデータ量が不足しがちだ。
対策を打つためにどういうエリア特性の地域から来店する傾向があるかなど、分析を行なう上でデータ量が充分ではないからだ。全体傾向の把握や施策の改善を行なう上で、十分な判断材料とはなっていないのが現状だ。
「Location AI Platform」は、このような専門知識がなければ解析困難である位置情報ビッグデータを、実際のビジネスで有効活用できるために開発されたプラットフォームだ。
位置情報ビッグデータをプラットフォームが分析、施策立案と実施をAIが支援する。また傾向値としてのデータを活用することで、プライバシーなどに配慮した安全な位置情報の活用を促進する。
位置情報ビッグデータを活用し、最適なロケーションベース広告の配信ができる「XL Advertising」、戦略立案のための分析レポートを提供する「XL Insight」、企業が保有する位置情報データを取り込みプラットフォームが保有するデータと複合して分析ができる「XL Analyzer」の3つの機能を持っている。
このプラットフォームの活用事例として、川崎駅前店舗の戦略マップ作成をみてみよう。
上の図の赤が来店確率の高いエリア、青が来店確率の低いエリアである。このように「XL Insight」で、ROI向上に結びつく施策立案とその評価ができる。
また「XL Insight」では、XL戦略マップ(特許出願中)も作成可能で、自社店舗に来店する確率が高いエリアとそうでないエリアが明確になる。
また、上の図の緑がCRM上で顧客の多いエリアである。このように、作成した戦略マップに自社のCRMデータを照らし合わせ、どのエリアに課題があるかを分析できる。
そして、上の図のように施策実施後の顧客エリアの増加を確認できる。
分析の結果、川崎駅前では、来店確率が高いが会員登録数が少ないエリアに対し、中吊広告やモバイル広告で会員になるメリットを訴求した。また、近隣の競合の影響を受けている青のエリアには、差別化されたオファーを提供することにしたという。
3カ月後には、戦略エリアの新規会員数の増加を戦略マップで確認し効果測定が可能だという。
大手SNSなど外部メディアに広告配信する「Shufoo!」
近年では、「Location AI Platform」のような位置情報を用いたデジタルマーケティングサービスが登場している。
凸版印刷が運営する電子チラシサービス「Shufoo!(シュフー)」が開始したビッグデータを活用した新しい広告サービス「Shufoo! Audience Targeting Ad(シュフー・オーディエンス・ターゲティングアド)」もその一つ。
これは、Shufoo!に訪れる年間3,000万人のチラシ閲覧ログデータを蓄積しながら、Shufoo!利用者に対し、大手SNSなどの外部メディア上で個人を特定しない形式で広告配信することが可能としたサービスだ。
株式会社フリークアウトのジオマーケティングプロダクト「ASE(エース)」と連携し、ユーザーごとのShufoo!利用ログを蓄積・分析した「日常買い物行動圏」や、「閲覧店舗カテゴリ」などのデータを活用し買い物意欲の高い主婦を効率的にターゲティングするセグメント化を実現した。
具体的には、大手SNSなどの国内主要媒体に対し、多彩なフォーマットで広告を配信し、そこから指定した店舗にユーザーが来店したか、スマートフォンの位置情報で来店を判定するというシステムだ。
ターゲットとなる企業は、実店舗をもつ会社ならほぼ全ての企業となる。対象となる主なジャンルは、流通小売業(スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、家電店、衣料品店、不動産業、自動車販売など)や飲料、食品、日用品、化粧品などである。
専門家でなければ難しかった分析が簡単に
ビックデータの活用により、事業展開やマーケティングの分析法が大きく変わろうとしている。しかも「Location AI Platform」によって、これまでは専門家でなければ難しかった分析が簡単に行えるようになった。
今や事業展開やマーケティングの分析や店舗への集客もほとんどがデジタル化されたといっていいだろう。今後、このようなビックデータを用いたマーケティングが主流となる時代になりそうだ。