会社に勤めていると、定期的に訪れる目標面談に気が重くなるといった経験は多いのではないだろうか。申し訳程度の目標を設定し、無難に目標面談をクリアする、というのは、個人的にも周りでよくみられた光景だ。
このような有効とはいえない目標面談について、上司の対応次第で従業員のモチベーションを引き出すという興味深い調査結果が公開された。
目標管理についての上司への評価は10点満点中5.6点
以前AMPでも代表の堀氏を取材した、人事表管理クラウド「HRBrain」を運営する株式会社HRBrainは、2018年8月18日~20日にかけ、人事評価を受ける立場にある全国の従業員男女600名を対象として、「目標管理の実態と従業員の本音に関する意識調査」を実施。
なかでも個人の目標設定をしていると回答した従業員295名に対し、「目標管理に対する上司への評価」や「目標達成へのモチベーション」について聞いた。
株式会社HRBrainが行なった以前の調査では、日本の会社の約7割がアナログ的な手法で目標管理シートを運用している実態や、約8割もの従業員が面談や提出日直前になってその場しのぎの目標設定をした経験があるという結果がみられたとのこと。
効率的に目標管理が行われていなかったり、名ばかりの目標設定が当たり前になっていたり、というのは、多くの会社員が感じていることではないだろうか。
そんな結果が出ている一方で、今回の調査では、目標管理について自分の上司に対し10点満点中で点数をつけるとしたら何点か聞いたところ、平均は5.6点、中央値は6点という高いとはいえない結果になった。
点数の理由については、「一人ひとりをよくみてくれている(9点)」といったポジティブな回答もみられる中、「人の話を全然聞かない(1点)」や、「口だけなので(4点)」といった手厳しいものも多かった。
お世辞にも有益といえない目標設定がまかりとっている原因の1つとして、このような上司の品質や態度もあげられそうだ。
部下の目標を把握し的確なフィードバック、頻繁な評価をしてくれる人が理想の上司と従業員の約6割が回答
同調査では「この上司なら目標達成に向けて頑張れる」と思える上司像についても聞いた。結果、回答率が高かったのは以下の選択肢だった。
- 「部下の目標を把握し、的確なフィードバック・評価を頻繁にしてくれる人」(58.0%)
- 「目標達成に向けて、一緒に取り組んでいる姿勢を感じる人」(52.5%)
- 「自分に合った目標設定を一緒に導いてくれる人」(38.6%)
性別・年代別でみると、20~30代の女性では「部下の目標を把握し、的確なフィードバック・評価を頻繁にしてくれる人」の回答率がいずれも70%を超え最も高かった。若い女性ほど、的確な評価を頻繁に行う上司を理想とする傾向があるようだ。
仮にもせっかく立てた目標について、上司が粗雑に扱い一方通行のようになれば、当然ながらモチベーションは上がらないだろう。部下の目標を、丁寧に扱う上司が理想とされるのは十分に理解できる。
目標達成に関する面談で上司と話したい内容のトップは「目標達成に対する自分への評価」
次に目標達成の面談で、どんな内容を上司と話したいか聞いたところ「目標達成に対する自分への評価」(60.3%)との回答が最も多く、以下がそれに続いた。
- 「個人目標と、求められている・期待されていることとの摺合せ」(53.6%)
- 「目標達成がどうキャリアアップや昇進に繋がるのかの確認」(42.4%)
それに対し、以下にあげる選択肢の回答率は低かった。
- 「目標達成に対する不安や悩みの相談」(21.4%)
- 「会社以外の業務(プライベートや副業など)とのバランスの相談」(15.6%)
目標達成の面談に関しては、自分の評価や何を期待されているかを気にしている人が多いようだ。目標管理について、それらを知る機会として認識している従業員が多いともいえるだろう。
目標達成のモチベーション上位は、「インセンティブや報酬」「昇給や成長」「上司からの良い評価」
同調査では、目標達成のモチベーションは何かについても聞いた。結果、「インセンティブや報酬などの獲得のため」(48.1%)が最も高く、以下がそれに続いた。
- 「昇給や成長などのキャリアアップのため」(36.9%)
- 「上司から良い評価をされたい、ほめられたいため」(25.8%)
報酬や昇給、キャリアアップなど目にみえる成果を、目標達成のモチベーションとすることが多いとの調査結果は、会社員の多くが頷けるのではないだろうか。
一方で、以下のような選択肢の回答率は低かった。
- 「後輩や同期にかっこいい姿を見せるため」(3.7%)
- 「同期や同僚より成果を出したいため」(6.1%)
- 「プライベートをより楽しむため」(16.6%)
同期・後輩からの評価やプライベートは、モチベーションにつながりにくいようだ。
フィードバックの頻度が高い方が、経営者の方向性に対する理解度が高いという調査結果も
別の調査になるが、株式会社タバネルが2018年6月に行った「社員意識とフィードバックの関係についての調査」の結果にも触れておきたい。
この調査では、「経営者の考えている方向を理解している」との問いに対して、「大いにあてはまる」「ややあてはまる」と答えた従業員の割合が、上司から頻繁にフィードバックを受ける従業員ほど高いという結果になった。
以下の表にあるように、「直属の上司から月一回以上フィードバックを受けている」従業員と「フィードバックを受けていない」従業員を比較すると、前者の方が「経営者の考えている方向を理解している」と回答した割合が5倍も多い。
上司のフィードバックの頻度が、経営者の考える方向性の理解を深めるのに役立ってることが、この結果からもわかる。言い換えれば、経営者の方向性にそった適切なフィードバックが、従業員の理解を深める助けになる、ということだろう。
上司の適切なフィードバックが目標管理を成功に導き、組織を強くする
今回の調査結果では、上司が適切にフィードバックを行うことによって、目標管理に対する従業員のモチベーションを高めることがわかった。またあわせて紹介した調査結果でも、上司のフィードバックにより、経営者の考える方向性についての従業員の理解を高めるとの結果も出ている。
今まで形骸化することも多かった目標管理を成功に導き、組織を強くするためにも、企業は上司のフィードバックの仕方について改めて考え直すべきだろう。