企業の2/3が「AR・VR技術」をビジネス活用できると回答。AR・VR技術活用の現在と未来

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日本でも拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を活用した技術・サービスが、少しずつ活発化し始めている。

英国の投資銀行「Digi-Capital」が2015年4月に発表したところによると、AR・VRを合わせた世界の市場規模は、2016年には約50億ドル、2020年には1,500億ドルまで拡張すると見込んでいるとのことだ。

そんななか、ビジネスの現場ではAR・VRは実際にどの程度導入され、効果をあげているのだろうか。

調査対象となった企業の8割超がAR・VRを使った技術が5年以内に自社の主流になると回答

世界40カ国以上で事業展開しているコンサルタント企業「キャップジェミニ」の社内シンクタンク「キャップジェミニ・リサーチ・インスティテュート」では、2018年5月~6月にかけ、企業のAR・VR技術(没入型技術)の導入状況について調査を実施した。

対象となったのは自動車・部品、製造業、公共事業セクター系の企業(709社)で、なかでもその企業内でAR・VRをリードし高度な知識をもつ709名に対して調査が実施された。

この調査によると、現在AR・VR技術を採用している企業の82%が、それら技術が期待どおり、もしくは期待を上回る成果をあげていると回答。また現時点でAR・VR技術を導入していない企業の50%も、今後3年以内に関連技術導入を検討し始めるだろう、と回答している。

さらに企業の約46%が「今後3年以内」に、38%強が「今後5年以内」に(あわせて8割超)AR・VR技術が自社の主流になると考えている。

少し前までは近未来を描いた映画に登場していたAR・VRの技術が、現実の世界で当たり前に活用される時代になっているのだ。

AR・VRにより作業効率・生産性・安全性が向上

AR技術を採用している企業では、ARでマニュアル作業中にハンズフリーで作業指示ヘアクセスできるようになり、作業フローの合理化がすすみ、効率性が25%、生産性が23%向上したと回答。

またVR技術に関しても、ハイリスクな現場のかわりにVRを使った環境で作業員にトレーニングを行うことにより、効率性が15%、安全性が15%向上したと回答している。

現在、AR・VRを導入していない国内の企業も、この結果に注目すべきだろう。

AR・VRが最も利用されているのは修理&保守、設計&組立

今回の調査では、自動車・部品、製造、公共事業セクターの企業において、AR・VRが最もよく利用されているのが、修理&保守及び設計&組立の現場であることが分かった。

AR・VR技術を導入する企業の29~31%がこれらの技術を修理・保守に使用していると回答。具体的な利用シーン例は以下のとおり。

また設計及び組立の現場では、以下例のようなシーンでAR・VR技術が利用されていた。

一例としてフォードでは、VR技術を活用し、組立作業中に身体動作センサーがとらえた人間の動きを特定し、代替動作を指示している。その結果、フォードでは、従業員の怪我が70%も減少した上、人間工学的課題も90%減少しているとのこと。

いずれの結果も、これからAR・VR技術導入を検討する企業にとっては参考になるだろう。

調査対象の2/3の企業が、VRよりARの方がビジネスオペレーションに適用できると回答

同調査では、調査対象企業の2/3が、VRよりARがビジネスの現場で活用できると考えていることを明らかにした。

VRは、現実世界から隔離された状態で、単独での没入型ユーザーエクスペリエンスを強化する。一方のARは、現実の世界にデジタルの映像や情報を重ね合わせ連携させることができる。そのためARの方が画期的なユースケースを数多く生み出している。

実際、ARを展開する企業の45%は、その技術実装に積極的。これに対してVRを利用する企業では36%にとどまった。

AR・VRに対して最も積極的な投資をするのがアメリカと中国の企業

今回の調査では、AR・VR技術実装のトップを走っているのが、アメリカと中国であると明らかにした。アメリカ・中国では、調査対象の50%以上の企業がすでにAR・VR技術をビジネスオペレーションに導入している。

たいして、フランス・ドイツ・北欧・イギリスでは、50%以上の企業がAR・VRリーダーによる実験中の段階で実装に至っていない。

導入企業において既に成果をあげている状況を考えると、日本国内の企業でもAR・VR技術の導入ついて、より積極的に取り組むべきだろう。

AR・VRの活用で最大の利益を生み出すための4つの主要戦略とは

AR・VR技術を利用し最大の利益を得ている企業を「早期達成グループ」とし、それらがどんな企業か調査した。このグループに該当する企業は対象の16%にあたる。

これらの企業は、AR・VR技術の効果を拡大するため、以下4つの主要な戦略に焦点をあてている傾向にあるとのことだ。

  1. 集中型ガバナンスモデルの整備&AR/VR意識の構築・向上

    早期達成企業の78%が、企業全体のAR・VR利用を管理する専任の中央グループやイノベーションセンターを設けている。※その他の企業では51%
  2. 将来の導入に向けた人材育成への投資

    早期達成企業の93%が、専門家による機敏な社内チームに対し、重点的に多額の投資をしている。※その他の企業では76%
  3. 永続的な価値とサポートを従業員に提供する適切なユースケースにフォーカス

    適切なユースケースを探し出し、その適用性をテストすることが、早期達成企業が掲げる優先事項の1つとなっている。ところが現状では、企業の50%以上がそのようなユースケースを特定できていないことを課題としている。
  4. AR/VR統合のための技術基盤の準備

    AR・VR技術導入にあたって大きな障壁として、データやよび技術面での準備不足、あるいは対応力不足があげられる。自社の既存技術、企業文化にAR・VRをスムーズに統合することが求められる。

これら4つの戦略は、AR・VR技術の自社への導入にどれも有効・必要となることは想像に難くない。今後AR・VR技術を導入する企業は大いに参考にしたいところだ。

国内でもAR・VR技術の積極的な活用が求められる

今回の調査では、AR・VR技術の導入が企業にとって大きな成果を上げていることがわかった。

あげられているユースケースの1つ1つが、まだAR・VRを導入していない国内の多くの企業にとっても「なるほど」と頷けるものばかりではないだろうか。

AR・VR技術導入で先頭を走るアメリカ・中国に、生産性や効率性で差をつけられないようにするためにも、国内企業もより積極的にAR・VR技術導入に取り組むべきだろう。

img:PR TIMES

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