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製造業や接客など、さまざまな分野でのAI活用が進んでいる。それは、企業の「面接」にまで及んでおり、2019年卒の新卒採用は、様々な企業がAI採用に取り組み、まさに「AI採用元年」と言える年だった。
では、2020年卒の新卒採用ではどうなるのだろうか。人的資本経営(Human Capital Management)の哲学に基づく人材サービス事業を展開する株式会社ヒューマネージは、2020年3月卒予定の大学生、大学院生を対象とした新卒採用について、企業の採用担当者向けに実施したアンケート調査結果を発表した。
それによると、4社に1社以上が「既に導入している」~「導入に向け検討中」と答え、採用人数が100名を超える企業においては、5社に1社が導入を決定済であることがわかった。
4社に1社以上がAI採用の活用に積極的
調査によると、新卒採用でAIを「既に導入している」企業は、全体の5.4%となった。これに「導入が決まり準備中」、「検討中」の企業を合わせると26.3%となり、新卒採用におけるAIの活用に積極的な企業は、4社に1社以上の割合であることがわかった。
さらに、採用(予定)人数が「10名以下」の企業と「101名以上」の企業を比較すると、「10名以下」では、AI採用を導入済~導入に向け検討中の企業は11.6%に留まるのに対し、「101名以上」の企業ではその4倍近く、44.5%の企業がAI採用に積極的な姿勢を示しているという。
また、17.9%とほぼ5社に1社が「既に導入している」もしくは「導入が決まり準備中」と回答しており、採用予定人数の多い企業が先行してAI採用に取り組んでいることがわかった。
では、新卒採用にAIを活用するに際し、課題はあるのだろうか。その課題について訊くと以下の結果となった。
AIの活用に際し、課題に感じていること(複数回答)
- 活用のイメージがわからない 42.2%
- 具体的な進め方がわからない 34.6%
- 導入コストが高い 31.7%
- 検討/準備におけるマンパワー不足 23.5%
- 社内に専門家がいない 15.0%
- 社内の理解が得られない 10.9%
- パートナー会社の選定が難しい 10.0%
この結果について、同社ではメディアで様々な企業の「AI採用」の事例が取り上げられてるため、企業はAI採用に注目しているとしている。しかし、自社の新卒採用に導入した場合の具体的な結果がみえないことや、そのメリットが良く把握できない企業もまだ多いことが窺えると分析している。
同社では、今回の調査結果より、2020年卒の新卒採用においても、特に採用人数の多い企業がけん引役となって、AI採用はさらに拡がると予想している。
また、取り組みが拡がるとともに、単なる合否判断ではないAIの活用事例も増えつつあるという。具体的には、学生の志望度・マッチング度に合わせたきめ細かい対応――「マッチング度は高いが、志望度がまだ高まっていない学生へ個別に働きかける」「辞退の可能性を予測して、学生に合わせた重点的な働きかけを行う」というように、マーケティング支援ツールとしてAIを活用している事例などである。
大型IT関連投資が続く一方で深刻化するIT人材不足
このようなAIの活用が進むにつれ、国内ではIT人材不足が深刻化している。たとえば、求人検索エンジン「スタンバイ」による求人動向調査によると、同サイトに掲載された全求人840万件のうち、求人のなかに「ブロックチェーン」の単語を含む求人は前年同月比4.2倍に増加していることがわかったという。
また、「スタンバイ」における「AI/人工知能/機械学習」の求人を見ると、IT企業やメーカーをはじめ、広告業界、教育業界など募集企業の業界は多岐にわたり、エンジニア、研究員、コンサルティング営業など幅広い職種の求人が掲載されているという。
一方、国内のIoT市場におけるユーザー支出額は、IDC Japanによると2017年の6.2兆円から2022年に12.4兆円に成長すると予測されている。
また、国内のFinTech(フィンテック)市場規模は、矢野経済研究所によると、2015年度の48.8億円から2021年度には808億円に成長すると予測されている。
これに伴い、「スタンバイ」におけるフィンテック/FinTechの求人も前年同月比2倍に増加しており、金融機関、IT企業、コンサルティング会社などのエンジニア、事業企画、コンサルティング営業、グローバル職など多岐にわたるのだ。
このような背景のもと、経済産業省の「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、今後ますますIT需要が拡大する一方、労働力人口の減少が見込まれるなか、IT人材の求人数増加と人材不足、給与の高騰は進むと予想している。
最終判断は「人」というスタンスでのAI活用を
企業により採用活動はそれぞれ異なる。それにより、フィットする人材もまたそれぞれの企業で異なるのだ。
これについて、株式会社ヒューマネージでは、企業、求職者ともに最適なマッチングをするためには、AIまかせにするのではなく、最適な活用方法とともに、「膨大なデータから科学的に判断する部分はAIに任せ、最後の意思決定は人が行う」というスタンスが必要だと提言している。
AIによる採用活動は、人による主観的な判断が介在しないというメリットにもデメリットにもどちらにも転がる可能性がある「諸刃の剣」があると考えられる。このため、ヒューマネージの提言のように最終判断は「人」というスタンスでの活用が望ましいのではないだろうか。
img:Value Press