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仮想通貨を皮切りに、さまざまな分野でブロックチェーン技術が注目を集めている。これは、データをこれまでのように一元管理するのではなく、多くの場所で分散管理するため、安全性や透明性が高いからだ。
音楽業界ではアーティストの収入が不均衡だったり、中抜きされたりといった問題がある。今回、ブロックチェーン技術を活用することでその問題を解決するというサービスが登場した。
ブロックチェーン技術を活用した音楽アーティストのためのプラットフォーム「eMusic(イーミュージック)」が日本初上陸した。「eMusic」のプラットフォームを通じて、小売業者、サービスプロバイダー、アーティスト、レーベル間での収入を公平に分配することで、不均衡な分配システムを解決するという。
「eMusic」はこれを機に、ブロックチェーンを活用した音楽フェスや、コンサート、アマチュア音楽家への支援など、音楽に関わる他分野への展開も検討していく。
中抜きされていた収益をアーティストに届ける
現在の音楽業界では、販売価格の30%が小売業者、60%がレーベルや出版社、10%がアーティストに配分されている。音楽が市場に出るまでには、たくさんの中間業者が関与しており、それがゆえにリリースの遅延や中止に発展することも多くある。
「eMusic」を活用すれば、従来の小売業者やレーベルなどにより中抜きされていた収益が、ブロックチェーン技術を採用することでアーティストたちに届くようになる。
「eMusic」は、リリースプロセスをレーベル用とサービスプロバイダー用にわけるだけではなく、通常であれば第三者機関が担っている支払い機能までも提供することで、レーベルとアーティストへの均等な分配を可能にした。
さらに、売り上げは公開されたデータベースで追跡できるため、ブロックチェーン技術を生かした透明性のある取引が確保できることに加え、自身の音楽がどこで、誰が購入して聴いているのかが把握できたり、コスト削減、収益の拡大、瞬時にロイヤリティ支払いを受け取れたりするなどのメリットもある。
また、ユーザー側には、これまで大手のレーベルでは出会えなかった、新しいミュージシャンとの出会いや、多くの音楽が適切な価格で購入できるようになるメリットもある。このため、今後アーティストによっては、独占コンテンツ、コミュニティでの交流などの可能性も秘めているという。
トークンによるさまざまな機能
基本的な特徴は以下のとおり。
- Token-only Sales
トークン所有者限定価格で、特定の曲やアルバムを購入できる。 - Exclusive Content
トークン所有者だけ利用できるコンテンツを提供。 - Cloud Storage
一定以上のトークンを購入したユーザーは無限のクラウドストレージが利用可能になる(※一定額のクレジットサブスクリプションを実施したユーザー限定) - User Rewards
ユーザーは追加のトークンを入手し、「eMusic」プラットフォーム上でより多くのコンテンツを購入したり、他のユーザーとの交流が可能になる。 - Wishlist Grants
ウィッシュリストに登録したコンテンツ(例:5つのフルアルバム)をトークン所有者だけが参加できるコンペを実施 - Self-Publishing
コンテンツを自分自身で「eMusic」オンラインストアに納品・リリースが可能に。
データの所有権まわりの合意が整えば、その日のうちに「eMusic」上でコンテンツがあがる - Customer Support
デジタルウォレット利用に関するアシスト、トークンの送付や受け取りのやり方指導、個人鍵(暗号化された鍵)管理について、顧客に徹底したサポートを実施。
また追加機能として、
- Rating Reviews and Enhanced User Interaction
「eMusic」トークンを利用し、他のユーザーや専門家によるレビューを評価。コミュニティにおける議論の活性化や、価値あるレビューを提供する他、間違ったデータを指摘するなどの形でプラットフォームに貢献すると、その報酬として「eMusic」からトークンが付与される。 - Promotion
アーティストは「eMusic」からトークンを特別付与され、熱狂的なファンを惹きつけるためのマーケティングを実施可能。アーティストはこれまでとは異なる方法でファンにアプローチし、彼らを虜にすることができるようになる。 - Rights Exchange
トークンを利用して、音楽と関係する資産、アーティストがもつ権利、ミュージックスコア(楽譜)などを、「eMusic」プラットフォーム上でやりとりできるようになる。この権利の管理は、スマートコントラクトを利用して行われ、ロイヤリティーの一部や全部を、物やサービスを所有する権限を獲得するために利用することもできる。 - Rights Tracking
電子的なウォーターマーク(権限が誰に寄与するかなどを示す言葉や図柄)をダウンロードコンテンツに付与、元データの所有者の権利を守ると同時に、海賊版の摘発に最適。 - Crowdfunding
クラウドファンディング・プラットフォームを開発中。これにより、アーティストは新しい作品を出品、出資を募ることができる。※SEC(証券取引委員会)の規制に則って実施
ブロックチェーンで著作権問題を解決するサービスとは
ブロックチェーンによって個人情報課題や著作権問題を解決するというサービスはすでに登場している。
アート×テクノロジーを中心に事業を展開するスタートバーン株式会社は、2018年9月末をめどに文化・芸術品の管理に特化したアート×ブロックチェーンネットワークの構築の試験運用を開始する予定だ。
これは、長年意見が割れていた芸術・文化に関わる作品の「作品のタイトル、製作年、作者情報」などの情報と「所有者の個人情報や販売管理のための情報」をどのようにわけて管理するかという問題を解決するというサービスだ。
このネットワークを活用することで、どの参加機関も独自の作品証明書発行サービスを行うことができ、作品売買・管理ができるようになるという。また、それぞれの機関が運営中のサービスにアート×ブロックチェーンネットワークを組み込んでアップデートすることもできるのだ。
アーティストの怒りを鎮める「eMusic」
英国のロックバンドTHE WHOのリードボーカリストであるRoger Daltrey氏が2016年に「インターネットは歴史上最大の搾取だ」と発言し、音楽業界では物議をかもした。
たしかに、アーティスト側にすれば、インターネット上で著作権の所在などを無視され、自分の作品が勝手に流されているのは、耐えられないだろう。しかも、そこからはまったく利益が入ってこないのだ。
その不条理さを解決しようというのが「eMusic」だ。これにより、アーティストの収益が守られ、リスナーともども幸福な関係が築けることを願う。
img:PR TIMES