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企業が行う社会貢献(CSR/企業の社会的責任)は多岐にわたる。そして企業の社会貢献とは、大企業のものだけではない。
社会的にみても意義深い貴重な取り組みをする中小企業も存在する。たとえば能登の数馬酒造では、SDGsという国際的な目標に向けて、さまざまな取り組みを実施し、それが国からも評価されている。
持続的な開発目標(SDGs)に取り組む能登の数馬酒造が「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選出
石川県能登町の「数馬酒造」では、日本を含む国連加盟193か国が掲げる「持続的な開発目標(SDGs)」に向け、耕作放棄地解消・地域の雇用創出などの地域課題に取り組んでいる。
そして、この度、この取り組みにより「2018年経済産業省『はばたく中小企業・小規模事業者300社』」に選出された。これは経営資源の有効活用などによる生産性向上、積極的な海外展開、インバウンド需要の取込み、多様な人材の活用、円滑な事業承継などで優れた取り組みを行う中小企業・小規模事業者を選定するもの。
くわえて、地域企業と積極的に協業を行い、農業者・畜産業者とコラボレーションすることで製造された純米酒「竹葉 能登牛純米」は、石川県が定める「プレミアム石川ブランド」に認定された。
プレミアム石川ブランドには、石川県内の中小企業などが開発・改良した製品のなかでも、新規性・技術独自性といった点で優秀かつブランド化の可能性が高いものが選ばれる。
「竹葉 能登牛純米」は、能登地域の農業者・畜産業者との副産物をシェアし開発された商品の背景と、これから期待される販路拡大の可能性を評価されたかたちだ。
数馬酒造の取り組みは、良質なモデルケースとしてほかの中小企業にも大いに参考になるだろう。
世界的な問題の解決に取り組む「SDGs」とは?
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳す。SDGs(持続可能な開発目標)は、世界に存在する問題を解決することで持続可能な世界を作り上げるため、国連加盟193ヵ国が2016年~2030年までに達成を目指す国際目標だ。この国際目標は、2015年9月の国連サミットにて採択された。
より具体的には、SDGs(持続可能な開発目標)は17の大きな目標と、この目標を達成するために設定された169のターゲットによって構成される。
17の目標は以下のとおり。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
そして169のターゲットは、これらの目標に紐づいて設定されるわけだ。
一例として「8.働きがいも経済成長も」には、「一人当たりの経済成長率を持続させる(特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ)」や「2030年までに世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善する」などのターゲットが設定されている。
目標やターゲットは多岐にわたるが、1つ1つみていくと、そのどれもが国際社会が取り組むべき基本的な問題であることは容易に理解できる。
数馬酒造が取り組むSDGsの例
それでは、数馬酒造では具体的にどのようにSDGsに取り組んでいるのだろうか。主な取り組みとの一部として以下があげられる。
- 里山里海の維持(2014年~、SDGs該当項目:8・11・12・15・17)
国内ではじめて世界農業遺産に認定された「能登」の里山里海の維持に貢献するため、株式会社ゆめうららと連携し、耕作放棄地を活用した酒米づくりの開始。これまで東京ドーム4個分の耕作放棄地を復活させた。 - 若者を巻き込んだ商品づくり(2014年~、同:11・12・15・17)
県内の大学生が、酒造りの開発から販売までの全ての過程に携わり、若い世代向けの日本酒「chikuha N」を開発。 - 能登島の耕作放棄地活用(2016年~、同:11・12・15・17)
地元・能登島の耕作放棄地を活用して、能登島の6件の農家によって20年ぶりに酒米づくりを復活。収穫した酒米は数馬酒造が買い取り、「能登島」という清酒にして販売している。 - 廃園となった保育園を活用しての醤油製造(2017年~、同:11・12・15・17)
数馬酒造が酒造りを始める明治以前から続けている能登最古の醤油事業。旧醤油蔵取り壊しに伴って、地域で廃園となった保育園を醤油蔵に改装した。
この醤油蔵では2019年春から、能登の耕作放棄地で栽培した小麦と大豆を使用した醤油の仕込みを開始し、1年後の春に製品として流通させる予定だ。
このように見渡してみると、1個の中小企業・小規模事業者が行う取り組みとしては幅が広くその内容も豊かで意義深い。
使い捨てプラスチック製ストローの使用廃止もSDGs
企業が取り組むSDGsの例として注目したものはほかにもある。たとえば「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」の使い捨てプラスチック製ストローの使用廃止もその1つだ。
「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル ホテル」では、2018年12月までに全てのレストラン・宴会において、使い捨てのプラスチックストローの使用を取りやめ、環境に優しい「生分解性ストロー」に変更すると発表した。
このストローは、使用後に微生物の働きによってコンポスト化が可能。仮に焼却されても有害物質が発生せず安全だ。
なお同ホテルでは、1999年から環境保護や地域社会貢献を目的とした数々の取り組みを実施しており、「横浜市環境事業功労賞(横浜市/2000年)」および「かながわ地球環境賞(神奈川県・かながわ地球環境保全推進会議/2001年)」を受賞している。
こちらも企業が取り組むべきSDGsの例として参考にしたいところだ。
数馬酒造が取り組むSDGsはほかの中小企業のモデルになる
中小企業がCSRのために社会貢献を始めようと考えたときに、何から始めればよいか困る担当者は多いのではないだろうか。
SDGsという国際的な目標に絡め社会貢献に取り組む数馬酒造の例は、そんな中小企業の貴重な参考モデルになることだろう。
数馬酒造が行っているような取り組みが広がれば、日本はもっと豊かで国際的にも尊敬される国へ成長していくかもしれない。