公園で「野球、サッカーは禁止」といった看板をよくみかけるという声がSNSなどでよく話題となっている。実際にSNSでは「子どもと遊んでいると注意された」、「公園は禁止の看板だらけで子どもが遊べる場所ではなくなっている」といった投稿が増えている。

では、その実情はどうなのだろうか。株式会社キャップスアソシエーションは、公園の利用価値を発信するWebサイト「公園のチカラLAB」にて、その真偽と実態を調べるために約300カ所の公園を調査し分析・レポートした。

公園と住宅が隣接する都市部で発生しやすいという事実

公園のチカラLABでは首都圏・中京圏(地方都市)・関西圏の3つのエリアから子育てに人気のある地域の公園を約100カ所ずつ抽出し、公園の立地や、実際に掲げられている禁止看板の種類や文言、禁止内容を分類・集計した。

また調査対象の公園は子どもにとって身近な公園、いわゆる街区公園や児童遊園と呼ばれる公園に限定した。

その結果、公園の禁止事項は近隣からのクレームによって生まれやすく、特に公園と住宅が隣接する都市部で起こりやすい現象だということがわかったという。

なかでも顕著なのは、野球・サッカーができない公園が中京圏近郊の地方都市では22%にとどまるのに対し、首都圏では100%、関西圏でも62%にのぼることだった。

また首都圏や関西圏では小学生がする野球・サッカーと、乳幼児が保護者と柔らかいボールを使ってする遊びがひとくくりにされ、画一的にボール遊びが禁止されているところも多くあったという。

禁止される第一の理由は、都市公園法に基づく条例などで定められている「ほかの公園利用者の迷惑にならないように利用する」という点がある。

確かに、公園で乳幼児を遊ばせる保護者やベンチで憩う高齢者にとって、どこから飛んでくるかわからない小中学生が遊ぶ野球やサッカーの勢いのあるボールは恐ろしい。

公園を管理する自治体はすべての利用者の安全確保はもちろん、事故があった時の訴訟リスクを避ける意味でも原則禁止にせざるを得ないポイントになると分析している。

これについては、2004年に愛媛県今治市で小学校の校庭から飛び出たサッカーボールをオートバイの80歳代男性が避けようとして転倒、その際のけがが原因で死亡した事故が発生しており、自治体がそのリスクを懸念するのは当然だろう。

一方で、公園に隣接する住民からのクレームで野球・サッカーが禁止されているという側面もあり、その点でも地域差があるという。

例えば、野球・サッカーの禁止が22%に留まった地方都市では、禁止であっても個別の公園ごとに「ゲーム形式の野球・サッカーはダメ」、「キャッチボールは南北方向ですること、東西は禁止」などの子どもの遊びに配慮した言葉になっている。

このようなローカルルールは、コミュニティがちゃんと機能した自治会と自治体が連名で掲げている場合が多いようだ。地方都市では、都市部と比べると人口密度も低く、近隣住民が危険を感じることも少ないのかもしれない。

一方、人口密集地に立地する首都圏や関西圏の都市部の公園では、民家や集合住宅が公園に隣接しがちだ。

また地方の街よりもコミュニティが機能せず、管理する自治体はクレームがあった時の“相談相手”となる自治会などもないに等しいので、苦情対応として画一的な禁止看板を掲出せざるを得ないのだと考えられると分析している。

利用者側ですみ分けていくことが重要に

しかし、たくさんの禁止事項がある公園では子どもが自由に遊べず、放課後の小学校の校庭も使用できないと子どもたちは遊び場を失ってしまう。そのような状況は、文部科学省が数十年来指摘している子どもの体力や運動能力の低下にさらに拍車をかけることになる。その点は大きな問題だ。

しかしながら、体格・体力差がある乳幼児から小学生までが「子ども」とひとくくりにされて、ひとつの公園で同時に遊ぶのは安全面で無理があると同社では指摘している。

小学生が遊ぶ午後は避けて、なるべく午前中に乳幼児を遊ばせる保護者も多いが、すべての保護者がそうできるわけではないため、特に面積の小さい都市部の公園は乳幼児が安心して遊べる環境も必要と考えられるという。

このため、都市部の公園の野球・サッカー禁止に関しては、キャッチボールやゲーム形式で遊ぶ時は、運動公園や野球場を利用することで、乳幼児と公園のすみ分けをする必要があると提言している。

また、公園での身体を動かす遊びは、脳や身体を刺激しさまざまな能力を育みスポーツへの関心を生む。「野球・サッカー禁止=遊べない」ということではないため、しっかり点検・整備された安全に遊べる遊具があれば、充分に身体を動かすことができると指摘している。

このため、野球・サッカーに関していえば、野球・サッカーはできないが身体を動かし遊んでスポーツへの関心を生む公園、キャッチボールやパス回しなどの練習を通じて関心を好きに変える公園、本格的にスポーツとして楽しむ公園、などと利用者側ですみ分けていくことが重要になるとしている。

こうしたすみ分けについては国や自治体でもすでに推進していく動きがあるという。

国レベルでは、改正された都市公園法(2018年4月施行)に基づいた国土交通省の資料でボール遊びなどを一律に禁止するのではなく、地域住民とルールを決めていく協議会設置などの仕組みづくりが提言されている。

それぞれが相手の立場を思いやった環境づくりを

筆者が子どもの頃は、特に禁止事項などはなく公園や空き地で自由に野球やサッカーを楽しんだものだ。

しかし、今回の調査では、さまざまな禁止事項や注意書きが公園にあることが改めてわかった。公園でさまざまな禁止事項や注意書きが多くなったのは、前述した2004年の事故がきっかけのように思われる。

これは、裁判にまで発展しており、その少年の親に対する教育責任まで問われる事態となった。

公園利用者、近隣住人ともに、安心して暮らせる環境を自治体、利用者、近隣住人それぞれが相手の立場を思いやった考えのもとで作っていく必要があるだろう。

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