世界中でIT化、デジタル化が加速し、あらゆる分野で「デジタルトランスメーション(DX)化」が進んでいる。それは空港においても例外ではなく、空港のDX化は世界的に拡大しつつあり、新たな市場機会を生み出している。
欧州の空港では、インフラの物理的な限界に伴い、オペレーションのデジタル化に向けた投資が進んでいる。一方、アジア太平洋地域の空港では、空港での顧客体験向上やブランディング向上にDXを用いるケースがみられる。
フロスト&サリバンは、空港のデジタルトランスフォーメーション化(DX)についての見通しをまとめリサーチ「空港のデジタルトランスフォーメーション(DX)化:グローバル展望」として発表した。
それによると、生体認証やブロックチェーンなどのテクノロジーにより、空港のIT投資額は世界全体で2016年の35億6,000万米ドルから、2023年までに46億3,000万米ドルに成長する見通しだという。
空港のDX化を促進するテクノロジーの数々
まず、このレポートでいうIT投資額とは、ITシステム向けソフトウェアおよびデジタルテクノロジーの中核となる関連アプリケーションを含んでいる。その例が以下になる。
- オペレーションコントロールシステム
- 共通ソフトウェア及びアプリケーション(ウェブ・モバイル)
- 荷物管理ソフトウェア
- 空港管理アプリケーション(AODB、RMS、FIDS、A-CDM)
- ビジネスインテリジェンスソフトウェア
- 請求・収益管理システム
同社の分析では、生体認証、ブロックチェーン、アナリティクス、AIといったテクノロジーが空港のDX化を促進するという。以下でそれぞれのテクノロジーの動向をみていこう。
- 生体認証
国境警備やさまざまな業務プロセスの自動化を可能にする。この技術は主にセルフ式の本人確認プロセスにおいて、あらゆるタッチポイントでの導入が既に開始されているという。
将来的に、本人確認プロセスは空港の最初のタッチポイントで個人の生体データを提出するだけで済むようになり、その後は次の到着地点でのみ本人確認を実施すれば済むようになることも考えられるとしている。 - ブロックチェーン技術
生体データやほかの個人データ保存の信頼できるネットワークとして、より安全かつ迅速な顧客体験の提供が可能となる。そのほか、セキュリティやプライバシー上の懸念を排除する。
これにより、乗客は高い価値の個別化されたサービスや製品と引き換えに、個人のデータをより積極的に共有していくことが考えられるという。
また、ブロックチェーンの特性を活かし、現状ではベンダーが個々に業務を行う独立した形態から、協調型の業務形態に変わることも可能となると予測している。 - アナリティクス
アナリティクスにより、オペレーターはピーク時や緊急時の対処に向けた事前措置が可能になるという。これは、今後、空港のあらゆるシステムから生み出されるデータは照合され、過去やリアルタイムおよび未来を予測するデータを提供するために分析されることになるからだ。 - AI
チャットボットや顧客の嗜好の予測、最適な製品・サービスの推奨などの領域において、顧客アプリで既に導入されている。AIは今後、空港のeコマースでの導入が進むほか、空港の空間管理やリソースの割り当ての効率化も可能になると予測している。
これらについて、フロスト&サリバンのシニア業界アナリストのレンジット・ベンジャミン氏は以下のように述べている。
「空港はデータ駆動(データドリブン)型のインフラへと移行しつつあり、データアナリティクスやストレージ、セキュリティサービス・製品に向けた莫大な投資が今後なされるでしょう。また、空港の機能やプロセスを統合するエンドツーエンドのデータプラットフォームの成長もみられるでしょう」
増加の一途をたどる空港のIT投資額
このような空港でのDX化の促進に向け、世界のソリューションベンダーは、すでに対応準備を進めている。
たとえば、NECによる「生体認証技術」がある。これは指紋や顔などの生体認証によって出入国審査の精度アップとスムーズな手続きを両立するeパスポートとして提供している。
今後も空港のDX化に向けたさまざまなソリューションが登場し、空港のIT投資額は増加の一途をたどるだろう。
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