多くの人にとって希少性の高い美しいダイヤモンドとは、高価で手が出せない存在だろう。
そして、美しいダイヤモンドはたくさんの利益を生み出すことから、紛争国が武器を買うための資金源になったり、自然に全く配慮のない採掘によって環境破壊の原因になるなど、国際社会で大きな問題となっている。美しいものには、何かと棘があるものだ。
そんな中、安価に購入でき、しかもダイヤモンドにまつわる数々の問題に一石を投じる日本製の“養殖ダイヤモンド”が今秋から流通を開始する。
天然ダイヤモンドと同一物質の日本製「養殖」“ラボグロウンダイヤモンド”を今秋から流通開始
ピュアダイヤモンドファームシンガポールは、科学的・物質的・光学的に天然ダイヤモンドとかわらない「ラボグロウンダイヤモンド」の流通を、今秋から開始すると発表した。
ラボグロウンダイヤモンドとは、文字通り「研究室(ラボ)」で「育てられた(グロウン)」ダイヤモンドのことだ。
魚を養殖したり、野菜をハウスで栽培したりするのと同様に、日本に所在するピュアダイヤモンドラボの研究所が管理する環境下において、純粋な炭素から作られている。
しかもピュアダイヤモンドラボでは、天然では2%しか存在しないという不純物なしの希少・高価なダイヤモンドと同じグロウンダイヤモンドを製造しているという。
ラボでは、他にも希少性の高いレッドダイヤモンドやブルーダイヤモンドも製造。さらに天然ダイヤモンドでは存在しない多様な色合いのダイヤモンドをつくることもできるという。自然界にはない虹色のダイヤモンド生成も夢ではない。
ここで押さえておきたいのは、ラボグロウンダイヤモンドは「人工の偽物ダイヤモンドではない」ということだ。
ハウスで育てられた野菜を人工野菜と呼ばなかったり、養殖の魚を人工魚とは呼ばなかったりするように、ラボグロウンダイヤモンドもまた、天然とは作られている過程が異なるだけで本物のダイヤモンドと変わらない。
世界をみると、市場規模8兆8千億円の半分の流通をしめるというジュエリー先進国アメリカでは、比較的手ごろな価格のラボグロウンダイヤモンドが店頭で普通に売られている。
そしてピュアダイヤモンドラボで製造されている日本製ラボグロウンダイヤモンドは、日本が誇る工業技術によって極めて緻密で美しく生成されており、世界でも通用する品質を実現しているという。
日本では天然のダイヤモンドを採掘することはできないので、これまで海外のダイヤモンドが市場で流通するだけだった。これからは、日本の工業技術を駆使して製造された“養殖”日本製ラボグロウンダイヤモンドが、世界に輸出されるわけだ。
日本の宝飾業界にとって、また世界のダイヤモンド市場にとっても画期的なことといえるだろう。
ブロックチェーンによってトレーサビリティーの完全性を確保
ラボグロウンダイヤモンドは、天然ダイヤモンド同様に、国際的な鑑定機関のGIA(米国宝石学会)による鑑定書が与えられる。どこの研究所でいつ生まれたものなのか、その品質の高さが鑑定書によって明らかになるわけだ。
そしてピュアダイヤモンドラボによるラボグロウンダイヤモンド流通の最大の特徴としてあげられるのは、この鑑定書に基づき開発された、ダイヤモンド市場のためだけの独自のブロックチェーン開発にある。
このシステムでは、ラボグロウンダイヤモンドの生成から研磨、鑑定にいたるまでの情報を収集してデジタル化。個体情報を作成して最終消費者に提供することによって、ダイヤモンドのトレーサビリティーの完全性を確保する。
世界のダイヤモンド市場では、正当性を証明するはずの鑑定書すら偽造されている可能性がゼロではない。
海外でも流通を予定している日本製ラボグロウンダイヤモンドがブロックチェーン技術により管理され、トレーサビリティーが担保されれば、安心して購入してもらえるだろう。
なお、ピュアダイヤモンドブロックチェーン・プロジェクトの最高技術責任者(CTO)である河崎純真氏は、今年1月に発生した580億円相当の仮想通貨NEM流出事件解決に貢献したホワイトハッカーとしても知られる。
河崎氏は、ピュアダイヤモンドブロックチェーン開発プロジェクトについて「ブロックチェーンの正しい活用法」と考えているという。
またピュアダイヤモンドラボの代表取締役でプロデューサーの安部秀之氏は、ピュアダイヤモンドブロックチェーンで「すべてのダイヤモンドがストーリーを持つようになる」と述べている。
仮想通貨の取引における正当性を担保するために生まれたブロックチェーンは、現在、仮想通貨以外の分野でも活用されるようになっている。
多大なコストをかけずとも、悪意ある第三者による不正なデータ改ざんを防ぎ、取引などの記録を半永久的に残せるというブロックチェーンは、さまざまなシーンで役に立つわけだ。出自の証明が重要となるダイヤモンドにおいても、確かにブロックチェーンは有効な技術といえるだろう。
天然と変わらぬ品質を誇り価格が安価なラボグロウンダイヤモンドは市場に変革をもたらす
ラボグロウンダイヤモンドの流通は、世界のダイヤモンド市場に大きな衝撃を与える可能性がある。
上述の通り、ラボグロウンダイヤモンドであれば極めて希少価値が高いレッドダイヤモンドやブルーダイヤモンドも、純粋な炭素から「養殖」することができる。
天然ダイヤモンドと品質が変わらない上に、天然ダイヤモンドと比較すると価格は安価になるのだ。しかもピュアダイヤモンドのラボグロウンダイヤモンドは、ブロックチェーンにより完全な正当性を証明可能な鑑定書もつく。
日本製ラボグロウンダイヤモンドの流通開始は、世界のダイヤモンド市場で大いに歓迎されることだろう。
ラボグロウンダイヤモンドは「血塗られたダイヤモンド」の流通や環境破壊を防ぐ
ラボグロウンダイヤモンドの登場は、世界のダイヤモンド市場にとって他にも重要な意味がある。それが「血塗られたダイヤモンド」とも呼ばれる紛争ダイヤモンドへの影響だ。
紛争ダイヤモンドとは、その名の通り紛争地域で産出され、紛争当事者の資金源となっているダイヤモンドのこと。
ダイヤモンドは国際市場において高値で取引されるため、紛争地域の国でも外貨獲得のための重要な資源となる。そしてダイヤモンドを売って得た資金を武器購入に充て、結果的に紛争を長期化させてしまっているといわれている。
また世界には、環境への配慮が十分になされずダイヤモンドの採掘を続けることで土地を荒廃させ、環境破壊を引き起こしている事例も後を絶たない。一方のラボグロウンダイヤモンドは、研究所において、炭素を利用し自然と同じプロセスで生成されるため環境への影響はない。
そしてピュアダイヤモンドブロックチェーンによって、ラボグロウンダイヤモンドが紛争ダイヤモンドとしての取引をされることもないのだ。
清廉なラボグロウンダイヤモンドは意識の高い消費者にも歓迎される
ダイヤモンド市場の暗部を描いた映画「ブラッド・ダイヤモンド」(2003年公開)をきっかけとして、ファッションブランドやセレブ達の中には、「血塗られたダイヤモンド」や環境破壊の引き金となるダイヤモンドを避ける傾向となっている。ダイヤモンドで自分を飾りたくても、血生臭いマイナスイメージのある商品は欲しくないというわけだ。
一方、研究所にてゼロから生み出されるラボグロウンダイヤモンドは、このようなマイナスイメージとは全くの無縁だ。
そういった点からも、意識の高いセレブのような消費者たちにラボグロウンダイヤモンドが歓迎される可能性は高いだろう。現代の消費者は、品質だけでなく商品の背景にも目を配るのだ。
くわえてダイヤモンドの出自の正当性を重視する宝飾ファンにとって、マイナスイメージがなく、なおかつブロックチェーンでその出自を担保されていることは非常に大きな魅力といえるだろう。
日本製ラボグロウンダイヤモンドは、ダイヤモンド市場にどんな波紋を描くか
古くから定評のある日本の工業技術と、新しいブロックチェーン技術を背景として、日本製のラボグロウンダイヤモンドは、大きな期待を背負って今秋からダイヤモンド市場に飛び込むことになる。
ダイヤモンド鉱山のない日本から「世界の市場に大きな波紋を広げる可能性がある養殖ラボグロウンダイヤモンドが生成されるようになる」と誰が想像したろうか。
日本のラボグロウンダイヤモンドが期待通り市場に歓迎されれば、天然と品質が変わらぬ希少なダイヤモンドが安価な価格で購入できるようになる。しかも紛争ダイヤモンドやダイヤモンド採掘による環境破壊の問題の解決に、日本製のダイヤモンドが大いに役立つというのは、日本人しては誇らしくも感じられる。
文字通り輝かしい日本製のラボグロウンダイヤモンドの船出を、今後も見守っていきたい。
img:PR TIMES