「無意識バイアス」がダイバーシティ推進を阻害する。e-learningツール「ANGLE」がデータ分析結果を発表

昨今、「ダイバーシティ」という言葉が注目を集めている。

これは、経済産業省によると、女性をはじめとする多様な人材を活躍させ、少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高めるという戦略だ。

同省では企業の経営戦略としてのダイバーシティ経営を推進するため「新・ダイバーシティ経営企業100選」や「なでしこ銘柄」などを選定し、後押ししている。

しかし、ダイバーシティ推進については、実際には「具体的施策につながらない」「成果が見えない」という声が聞かれるのも事実である。

では、ダイバーシティが進まない要因とは何だろうか。株式会社チェンジウェーブでは、2018年5月にローンチした、企業の管理職向けe-learningツール「ANGLE」によるダイバーシティ推進の阻害要因となりうる「無意識バイアス」をテーマにしたコース受講者のデータ分析結果を発表した。

それによると、71%の管理職が「自分にバイアスがある」とし「ないと思っていた固定観念が自分の中にあると気づいた」などと記述したほか、アンケートでは86%の受講者が「今後の自分に役立つと思う」としているという。

人材マネジメントの障壁となる無意識バイアスとは

まず、同社のいう「無意識バイアス」とは何だろう。

人間が1秒間に取得する情報は1,100万件だという。このうち、意識して判断するのはたった40件といわれている。脳は大量の情報を処理するため、「無意識で」経験則によるパターン認識を行い、判断のショートカットをしている。これが「無意識バイアス」だ。

「無意識に持つ偏見」と訳されることもあるため、ネガティブなイメージを持つ人も多いらしいが、実は誰もが持っている、脳の「省エネ機能」だという。これは自分の育ってきた社会環境、経験などに大きく影響される。

しかし、この無意識バイアスは、多様な人材をマネジメントする際に障壁となりうることがわかっている。管理職が自分の主観的な基準や思い込みに気づかないまま部下の評価や担務を決めてしまうと、多様な個を活かし、チームの成果を上げていくことは難しくなるからだ。

しかし、ダイバーシティ先進企業であっても、研修を受けたとしても、「自分にバイアスはないので問題ない」「知識はあるが、行動に移すほどのことはない」と感じている管理職は多く、具体的な動きにつながりにくいのが現実だという。

この課題に対しチェンジウェーブでは、ダイバーシティ&インクルージョンの実践に影響を及ぼす管理職が以下のように考え、実践型e-learningツール「ANGLE」無意識バイアス編を開発した。

  1. 無意識バイアスを理解し、ほぼすべての人にあるものだと知る
  2. 一般論としての知識ではなく、「自らの」バイアスに気づく
  3. 無意識バイアスをコントロールする具体的な手法を学び、行動に移す、といったことが必要である

自らのバイアスレベルを可視化する「ANGLE」

「ANGLE」無意識バイアス編には以下の3つの大きな特長がある。

  1. 独自のIAT(無意識バイアス計測法)を開発

    IATはハーバード大学とワシントン大学の研究者らが開発した無意識バイアスの計測法だ。これまで気づくことができなかった、自らのバイアスレベルを可視化することができる。

    ANGLEではさらに、日本人特有の無意識バイアスを学術的にも正確さを保証された方法で計測できるよう、研究者監修のもと、IATを独自に開発した。
  2. 実際に行動する「課題」を設け、意識化につなげる

    チェンジウェーブが400社以上の変革を通して見た事例を取り上げ、対処法を解説した後、具体的に行動することを課題としている。また、その行動結果を記述し、内省するプロセスも設けた。この反復で意識化を促し、定着度の高い学びにつなげる。

    さらに、他の受講者の記述も閲覧できるので、他者の気づきからも行動のヒントが得られる。
  3. 受講者の傾向分析や他社との比較が可能

    受講者データは企業の担当者が管理画面で確認できる。自社受講者の傾向分析や他社との比較が可能であり、ダイバーシティ推進戦略策定に寄与できるという。

9割近くが「ANGLEは今後の自分に役立つ」

今回の受講者アンケートでは、450名のうち、9割近くが「ANGLEは今後の自分に役立つ」と回答したという。では、ANGLEに有用性を感じたポイントはどこにあったのだろうか。

ANGLE第1回にはセルフチェックが含まれている。設問に対して「直感で出した答え」と「意識して出した答え」のねじれを実感し、自らのバイアスに気づくことができる。

たとえば、「女性の社会進出は必要だと思う」と回答した人は95%、「仕事と家庭の両立は歓迎すべき」としたのは93%、ほぼ全員だった。

しかし、「1歳の子どもがいる男性社員に海外出張を打診する」という設問にYESと答えたのは67%、「1歳の子どもがいる女性社員に海外出張を打診する」については33%と性別を変えるだけで倍以上の差が出た。

つまり、男女差なく仕事すべきと思っていても、無意識のうちに「子どもがいる女性の海外出張は無理だろう」と考えてしまうのだ。

では、「打診」さえしないのはなぜだろうか。実はこれが、無意識バイアスが生じさせる機会提供の差なのだという。

受講者からは、回答する過程で無意識バイアスを実感したという以下のようなコメントが寄せられている。

続いて、IATのデータを示す。この分布図は受講者の無意識バイアスレベルを示している。これによると、性別バイアスは93%の受講者にみられた。うち、「男性=仕事、女性=家庭」の結びつきが強いのは92%、「男性=家庭、女性=仕事」の結びつきが強いのは1%だった。

これについて、IATの監修にあたった潮村公弘教授は以下のように話している。

「男性=仕事、女性=家庭、というのは日本人にも強固に存在している無意識バイアスですが、それがこの分布図でも明確に実証された形です。このように、無意識バイアスは誰にでも存在するものですから、それを受けとめ、常に意識し続けることが肝要です」

また、「バイアス=悪い」という思い込みがあると、無意識バイアスを否定したり「自分にはない」と隠そうとしたりするという。しかし、皆が持っているものだと理解したうえで、自分の無意識バイアスを正確に認識し、意識を向け続けることで、マネジメントは確実に進歩するとしている。

ANGLEは受講者がこのプロセスをたどることで、納得感高く自己理解を進めていく方針だ。

たとえば、50代の男性管理職Aさんの場合、セルフチェックで回答に迷ったことで自らの無意識バイアスに気づいた後、IATの値も高いことを認識した。これについて「値が高く驚いている。意識するようにしたい」とコメントしている。

無意識を可視化し客観的に分析する障害要因を探る

株式会社チェンジウェーブの試みは、自己の無意識を可視化し、客観的に分析することで、ダイバーシティ推進を妨げている要因を導き出そうというものだ。

ダイバーシティ推進のための行動のヒントとするには、このようなサービスを受講してみるのもいいだろう。

img:PR TIMES

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