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2016年3月に「女性活躍推進法」が施行された。これにより、従業員数301名以上の企業は、女性活躍推進に向けた行動計画の策定などが義務付けられている。
では、施行から2年たった現在、その実態はどうなっているのだろうか。
エン・ジャパン株式会社は、同社が運営する人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』上でサイトを利用している企業の人事担当者を対象に「女性の活躍推進」についてアンケート調査を行ない、612社から回答を得た。
それによると、女性の活躍・定着に取り組んでいる企業は52%だった。
増加する女性社員の活躍・定着へ取り組み
まず、女性社員の活躍・定着に取り組んでいるかについては、52%の企業が「取り組んでいる」と回答した。2016年の調査に比べ2ポイント増加している。
また、2018年の結果を企業規模別でみると「取り組んでいる」と回答したのは、従業員数301名以上は66%。従業員数300名以下は49%という結果となった。
女性活躍・定着に「取り組んでいる」と回答した企業に、具体的な取り組みについて聞いた。
その結果、2016年の調査と同様に「出産・育児をサポートする福利厚生制度の充実」(67%)、「時短勤務・テレワークなどの勤務形態の多様化」(52%)が上位に挙げられた。
同社では、これまで同様、育休へのサポートや復帰後の雇用形態の多様化に対応することで、女性の活躍・定着を後押ししたいと考えている企業が多いようだと分析している。
また、3位には「管理職への積極登用」(44%)が挙げられており、これは2016年よりも2ポイント増加している。女性を重用しようという機運も高まっているようだ。
働き続ける女性の増加に伴う企業の悩みとは
次に「女性社員の活躍・定着に対して、課題と感じられることはありますか?」と聞いたところ、「女性社員の目標設定」(2018年:45%、2016年:24%)が最多となった。
2016年の調査でもっとも多かった「女性の意識」(同:37%、53%)は、2018年では16ポイント減となっている。
同社では、この結果について、働き続ける女性が増えたからこそ、どのような仕事を任せ、目標をどこにおくのかといった点に悩む企業の姿が浮き彫りになっているとしている。
また、注目されるのが「社内に女性のロールモデルがいない」である。
これは、2016には39%だったが、2018年は19%と20ポイントも減少している。これは、逆にいうと社内に女性のロールモデルが増えているということであり、女性社員の活躍・定着への取り組みが進んでいることがわかる。
「女性社員の活躍・定着への取り組みは、企業業績を高めることに影響があると思いますか?」と聞いたところ、67%の企業が「影響がある」と回答した。2016年の結果は54%だったことから、女性社員の活躍・定着の取り組みをよりポジティブに捉えるようになっていることが以下のコメントからわかる。
- 『女性は細かいことに気が付き、仕事が早い』
- 『業界的に女性が長く働き、活躍している会社は少なく、差別化が図れると思う』
など、女性社員の活躍・定着への取り組みのよい効果はすでに出ている企業が多いのがわかる。
一方、「影響がない」「わからない」との回答者からは
- 『女性社員が元々少ない』
- 『性別に関係なく、意識が高く能力がある人が活躍できれば良いのでは』
といった中小企業ならではの悩みや性差に限らない取り組みが重要ではないかというコメントが目立った。
影響がない、あるいはわからないとしている企業では、もともとあまり、性差をあまり考えていない企業が多いようだ。
女性の管理職登用には概ね拡大していく傾向に
企業が進めている女性の活用や登用による効果を示した別の調査もある。株式会社帝国データバンクの調査によると、女性管理職の割合や従業員全体の女性割合が上がってきているという。
まず、女性従業員割合は平均24.9%となり、2017年より0.3ポイント上昇している。
また、自社の管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は平均7.2%と、2017年より0.3ポイント上昇しており、比較可能な2014年以降で最も高くなっているという。自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均9.7%となり、2017年から0.4ポイント上昇している。
女性管理職の平均割合について上場・未上場別にみると、未上場企業が平均7.2%、上場企業が平均5.1%と、未上場企業が上場企業を2.1ポイント上回っており、未上場企業でより女性登用が積極的となっていることがわかる。
また、自社の女性管理職割合を5年前と比較した場合、「変わらない」とする企業が69.8%と多数を占めた。割合が「増加した」と回答した企業は21.6%と2割を超えた一方、「減少した」企業は3.9%にとどまった。女性の管理職登用については、概ね拡大していくと考えている様子がうかがえるとしている。
女性の活躍が企業の生き残りのカギに
企業の女性社員の活躍・定着への取り組みは進行しているようだ。しかも、約7割の企業が、女性社員の活躍・定着の取り組みは企業業績を高めることに好影響と回答している。
女性は出産や体力面で男性に劣るなどの理由でこれまでは重用を躊躇する企業が多かったが、もはやそのような時代は終わりを告げようとしている。
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