ソフトバンクの「Pepper」により、すっかりサービスロボットが我々の身近なものになった。また、ドローンもさまざまな分野で活用されるようになり、世の中には欠かせないものとなった。

IT専門調査会社IDC Japan株式会社は、国内商用ロボティクス市場におけるサービスロボットおよびドローンのユーザー利用動向調査結果を発表した。それによると、コミュニケーションロボットの需要が高いことや、ドローンは屋外に加えて屋内での活用も期待されていることがわかった。

サービスロボットの活用領域は「受付/案内/接客」が34.8%で最多

同調査では、2018年5月に従業員数100人以上の国内企業に勤務する「サービスロボットおよびドローン導入済みで何らか関わりのある」あるいは「導入を検討する立場にある」540名にアンケート調査を実施した。

調査によると、産業用以外で活用されるサービスロボットを導入検討中の企業が想定するサービスロボットの活用領域は、「受付/案内/接客」が34.8%で最も高い結果になった。

IDCでは、この結果から、店頭に設置し顧客と対話するコミュニケーションロボットの需要が高いことがうかがえると分析している。

また、「工場内搬送」を担うサービスロボットの需要も高いことわかった。「工場内搬送」作業には、部材や商品を自律的に安全に搬送できる移動型搬送ロボットが活用され、導入も始まっている。

こうした領域は、作業の定型化による人間のロボットによる作業代替が容易な分野であり、省人化による作業効率向上への期待が明らかになった。

国内商用ロボティクス市場において、サービスロボット市場は、産業用ロボットに続く大きな市場であり、IDCでは2018年以降は本格的な市場の立ち上がりが見込まれると予測している。

屋内での活用にも期待が高まるドローン

また、ドローンの導入を検討している企業が想定するドローンの活用領域においては、「物流センター/倉庫内物品検査」が39.4%と最も高いことがわかった。一般的にドローンは屋外利用が想定されているが、今回の結果では、屋内での活用にも期待していることが明らかになった。

物流センターや倉庫内の物品検査にドローンを活用することによって、人やサービスロボットでは困難な垂直移動による物品のバーコード読み込みなどの物品管理作業を可能にすることが期待されているという。

ドローン市場は航空法などの法規制で飛行範囲や侵入禁止区画が設けられており、現状ではドローンを活用したビジネスの規模は小さい。しかし、国土通産省は、山間部や離島でのドローンの商用利用を解禁し、さらに2020年以降には都心部でのドローンの商用利用解禁に向けた検討も始めている。

このため、2018年には本格的な市場の立ち上がりが見込まれるという。

これらの結果について、IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストである藤村成弘氏は「ITサプライヤーは、サービスロボットやドローンの活用が期待されている領域を把握し、サービスロボットやドローンサプライヤーと提携しながら、ユーザー企業の需要を満たす最適なソリューションを提案していくことが重要である」と述べている。

屋内点検サービスの先鞭をつけた「Biインスペクター」

ドローンについては今後は屋内での活用が増えるようだが、そのサービスの一例として、ブルーイノベーション株式会社の屋内点検サービス「Biインスペクター」がある。

このサービスは、ドローンによる屋内の点検サービスを得意とする同社が、「Blue Earth Platform(BEP)」と呼ばれるミッションをベースに複数のロボットやドローンを統合管理するプラットフォームにより、任意の地図情報や、物体の位置情報、そしてそれらオブジェクトの属性情報を統合・管理することによって、ドローンやロボットの自動制御による業務ミッションの達成をスマートに実現していくというものだ。

具体的なメリットとしては、

  • 従業員の安全性向上
  • 作業時間の大幅な短縮
  • 圧倒的なコスト抑制

といったメリットがあり、これまで点検作業が難しかった工場、プラント、トンネル・配管といった現場での低コストで安全な点検業務が実現できる。

需要を満たす最適なサービスの提案がカギ

今回の調査では、本年2018年にサービスロボット、ドローンとも本格的な市場が立ち上がることがわかった。まさに、「元年」だ。

今後は藤村氏も指摘しているように、期待されている分野を的確に把握すること、そして需要を満たす最適なサービスを提案していくことが市場拡大のカギとなるだろう。

img:NIKKEI