“オフィス環境”は脳の活性化に大きく影響する。働き方改革のカギは“空間の特性”にあり

働き方改革によって、全ての社員がオフィスで顔を合わせながら働くべき、という考えはすでに古くなりつつある。

そして仕事を行う場所についても、これまでは与えられた条件の中で業務を行うのが当然と考えられていた。「心頭滅却すれば火もまた涼し」ではないが、これまでは集中しさえすればどんな場所でも仕事ができるはずという古い考え方もあった。けれど、この考え方は正しいだろうか。

働き方改革では、テレワークなどによる柔軟な働き方の推進とともに、労働の生産性向上もテーマとされている。どんな空間が社員にとって働きやすいか考えるべきときが来ているのではないだろうか。

株式会社イトーキ、空間の特性の違いによる脳の活性化の差異を検証する実証実験を実施

オフィス家具などオフィス関連事業を展開している株式会社イトーキは、2018年5月、空間の特性の違いによって、作業時の脳の活性度にどのような変化が生じるか実証実験にて検証した。

杏林大学名誉教授で医学博士の古賀義彦氏による監修のもとで、「脳の活性度が高い状態」をパフォーマンスが高い状態であるとの仮説もたて、株式会社スペクトラテック社の「spectratechOEG-SpO2」を使用し、前頭部16部位の脳血流量〔酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)〕の測定分析を実施。

以下3種類の空間において、空間が作業のパフォーマンスにどのような影響を与えるか測定した。

3つそれぞれの空間にて、被験者は以下にあげる2つのテストを実施。その際の脳血流量を測定して、脳の活性度を比較した。

判断力が求められるテストでは「クローズ空間」で最も脳が活性化

実験の結果、ウィスコンシンカードソーティングテスト(主に前頭葉の活動を検証)で、最も血流量が増加したのはクローズ空間だった。これは判断力がもとめられる作業では、周囲の視覚的・聴覚的刺激によって注意がそらされることがないクローズ空間において最も脳が活性化することを示す。

オフィスで働いたことがある人なら、難しい判断が求められる作業については、だれにも邪魔されない場所で行いたいと考えたことがあるのではないだろうか。この実験結果は、多くのオフィスワーカーにとって納得できるだろう。

簡単な計算などの単純作業では「セミクローズ空間」で最も脳が活性化

次にクレペリンテスト(主に左脳を使う作業)では、セミクローズ空間において最も血流量が上昇した。簡単な計算のような単純作業では、程よい開放感があるセミクローズ空間で最も脳が活性化するということだ。

これも、デスクワークをした経験がある人ならうなずける結果ではないだろうか。難しい判断を迫られるほど神経を研ぎ澄ませる必要がない作業なら、適度にオープンな環境の方がかえって集中でき、周囲に目や耳を傾けるなどして集中をゆるめ程よくリラックスもできる。

オープン空間では、脳の活性化がみられず

たいして視覚や聴覚の注意を妨げる要因が多いオープン空間では、特徴的な脳血流量の変化はなく、脳の活性化はみられなかった。このような空間は、特定の作業に集中するのに最も適していないということだ。

とはいえ、一般的なオフィスワークでは、周囲と密接にコミュニケーションをとらなければいけないシーンも多く、その際にはオープン空間が最も望ましいといえる。

何の仕切りもなくデスクが並んでいるようなオフィスというのは、以前からもっともよくあるタイプだろう。ただ、そういったタイプのオフィスより、自宅や自習室、あるいは定時を過ぎ一人になったオフィスの方が仕事の効率がよい、と感じたことがあるデスクワーカーは多いのではないか。

要は仕事の特性によって、効率がよいオフィス空間・適切なオフィス空間のタイプが異なるということだ。

※「イトーキ調べ」

働き方改革の一環としてオフィス変革を検討すべき

繰り返すように、生産性の向上は働き方改革のテーマの1つだ。今回の実験では、仕事の特性にあった空間選びが、仕事を行う際に脳の動きに大きな影響を及ぼすことがわかった。

テレワーク推進も同じことがいえるが、広くオープンなオフィスに社員が集まるべきという考え方に固執するのはもう古い。仕事の生産性をあげるためにも、企業は空間の適正などに注目したオフィス変革にも注目することが期待される。

img:PR TIMES

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