AIはもはや“名医”の域にまで。世界トップレベルの専門医と同等の診断が可能なAIが登場

TAG:

人工知能(AI)の進化が止まらない。毎日、ニュースでAIに関する話題を聞かないことはない。IT専門の調査会社IDC JAPANの調査によると、2017年の国内コグニティブ/AI(人工知能)システム市場の市場規模は約275億円、それが2022年には約3,000億円にまで急成長すると予測している。

とはいえ、AIの専門家でない一般の人が、すぐに思いつくAIの実質的な成果といえば、AIが将棋や囲碁のプロに勝ったということぐらいだろう。生活に直結するシーンで活用されるAIは、現在どのくらい進化しているのだろうか。

英ディープマインド、目の疾患を検出する人工知能(AI)を開発

米グーグルの持ち株会社アルファベット傘下の英ディープマインドは8月13日に、目の疾患を検出する人工知能(AI)システムを開発したことを発表した。なおディープマインドは、2016年に囲碁の世界トップ棋士を破ったAI「アルファ碁」の開発元でもある。

同社のAIに関する高い技術はすでに実証済ということだ。生活に必須の医療分野で、AIがどのように活用されるかというのは楽しみなところだ。

開発されたAIの診断精度は世界トップレベルの眼科医並み

そして驚くべきは、ディープマインドが今回開発したAIの診断精度だ。50以上の目の疾患を対象に調査したところ、なんと世界トップレベルの眼科医と比較しても94%という高い精度で、治療の緊急性を患者に提案できたというのだ。対象となっているのは、網膜の一部に異常な血管ができる加齢黄斑変性や、糖尿病性黄斑浮腫だ。

現時点ですべての目の疾患をAIで検出できるわけではないだろうが、それほど遠くない未来には、アルファ碁のように世界の名だたる専門家を超える精度を誇るAIが現れ、身近に活用できるようになるのではないだろうか。このAI開発には、そんな希望さえ感じさせてくれる。

なお、今回のAI開発研究は英国民保険サービス(NHS)などと16年に開始したということだ。過去に撮影し匿名処理を実施した数千もの目のスキャン画像をAIに学習させることによって、AI診断の精度を高めたという。開発されたAIは、光干渉断層検査(OCT)スキャンの画像データをもとにして、10種類の目の疾患の特徴を見分けるだけの能力を持つとのこと。

医療現場での実用化に向け臨床試験の実施を進める

ディープマインドなどでは今後、臨床試験の実施を進め、医療現場における実用が可能な認可取得を目指すとしている。この通りすすめば、ディープマインドとしては初の医療向けAIシステムとなる。なおディープマインドでは判断の妥当性に関しても着目し、AIの診断経緯に関しても説明できるようにするとしている。

大量な画像やデータをもとに、スピーディーに法則性・誤差を発見するのはAIの得意分野だ。一方、目の疾患は仮に診断による発見が遅れ、治療が間に合わないと失明にいたる可能性さえある。

ところが専門医による画像分析を経た診断は、作業の煩雑さが要因で間に合わないことがあったという。ディープマインドは、今回開発されたAIによって「早期治療を必要とする患者を発見しやすくなる」としている。

日本でも医師不足が深刻化しているのは、いまさら言うまでもない。このような優れたAIの活用は、今後の日本医療を支える上でもますます必要になってくるだろう。

他にもある医療×AIの事例

実際、日本の医療現場でもAIの活用は始まっている。

医療系AIスタートアップの株式会社NAMが、2017年11月に発表したチャットボット(自動応答プログラム)型電子カルテ「ドクターQ」もその1つだ。

現代の医療現場では、医師が治療後の患者の経過を把握するのが難しくなっている現状がある。患者は経過が良好だと医師に報告しないことが一般的だが、慢性疾患では自覚症状が少ないため、治療をしなければならない状態でも自己判断によって治療を中止してしまうことも多い。

ドクターQは、この問題を解決するためのチャットボット型電子カルテだ。ドクターQでは、広く使われているメッセージアプリ「LINE」を利用する。医師はチャットボットを介してLINEで患者に経過質問をし、患者がそれに答えるという仕組みだ。そしてシステムはカルテに記載すべき患者情報や、医師がフォローすべき患者情報、患者が気にするべき診療情報を自動で収集・整理する。

その他、自治医科大学では、論文情報・臨床出たなどを蓄積したAIが、人間の医師と対話し、病名候補をみつけるシステム「ホワイト・ジャック」を開発中。これが実用化されれば、医師の診療を効率化するとともに、見落としによる誤診を予防できる。

社会の高齢化・地理的な要因による医療格差など問題が山積している日本の医療現場にとって、AIの活用は待ったなしですすめていく必要がある。また利用者にとっても、AIによって医療の利便性や精度が高まるのであれば、大いに歓迎すべきだろう。

AIの実用化はすぐそこまで来ている

今回紹介した医療現場のAIのように、今後は、AIをベースとしたサービスは続々と展開されていくことだろう。AIが生活の中に当たり前に溶け込む日も近い。

AIが人間の仕事を奪うのでないか、という懸念も一方にあるのは事実だ。しかし医療現場をはじめとして人材不足・労働者不足は顕著になっている。こういったシーンでAIを必要とする流れは止められるものではないし、今後より加速度的にすすんでいくだろう。

img: @Press , NIKKEI

モバイルバージョンを終了