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最近、「エコシステム」という言葉をよく耳にするようになった。これは、もともとは生態系の用語で、生物や植物がお互いに依存しながら生態を維持する関係を指した言葉だ。これが、ITや通信を中心としたビジネス・経済で、業界や製品がお互いに連携することで大きな収益構造を構成することを指す言葉として、使われるようになったのだ。
今回、IT専門調査会社IDC Japan株式会社は、「データエコシステム」および「DaaS(Data as a Service)」に対するプレイヤーの取り組みの調査結果を発表した。
ここでは、モノが生成する「IoTデータ」と企業やヒトの活動が生成する「非IoTデータ」を組み合わせることで、無料のサービスから収益を得るモデルの創出を推進するプレイヤーの集合体をデータエコシステムと呼んでいる。またデータエコシステムを活用し、データに付加価値を上乗せして販売/流通することや、データ分析結果をもとに得られた収益をシェアするビジネス形態をDaaSと呼んでいる。
ベンダーの取り組みの3つの潮流とは
調査の結果、まず国内のデータエコシステム/DaaSに対するベンダー/企業の取り組みには現在、大きく3つの潮流があることがわかった。
- 製造業や流通業など、各産業に特化したソリューションを構築するデータエコシステムが増加しており、また各データエコシステムのデータを産業横断型で活用し、バリューチェーン/サプライチェーン(VC/SC)のつながりを強化する動きが増加していること。
- データエコシステムの活性化に向け、IoTの領域、非IoTの領域、物理領域の境界をなくし、データの活用をバリアフリーに広げることで、各領域の「イノベーションの連鎖」が加速していることだ。
- DaaS基盤を通じ、データをサービスとして提供するベンダーが台頭していること。また、データエコシステムに関わる産官学のさまざまなプレイヤーが、データの自由取引を通じたオープンイノベーションを目指す動きもみられるという。
今後は IoTデータ、非IoTデータともに増加
同社によると、IoTデバイス接続数の急速な拡大に伴い、IoTデータは全世界的に増加していくと見込まれるという。また、企業の業務システムのデータや、個人のスマートデバイスが生み出すデータなど、企業やヒトの活動が生成する非IoTデータも同様に増加していく。それによりIoTデータと非IoTデータの合計は、2025年には163兆GBに達するとみているという。
また、昨今では米中欧の大手ITプレイヤーを筆頭に、B2C系の非IoTデータを中心に活用することで、データが無料のサービスから収益を得ることを推進する動きが加速しているという。
こうした先進プレイヤーに対抗する上でも、IoTに関わるベンダー/企業は、あらゆる種類のデータ活用を視野に入れ、データエコシステム/DaaSを通じた新たなマネタイゼーションの道筋を見極める必要があると、IDCは分析している。
このような状況に対し、IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの鳥巣悠太氏は「データエコシステムベンダーは、VC/SCをつなぐことを念頭に、さまざまな産業特化型ソリューションの提供を進める必要がある」と分析している。
また、「ベンダーはデータの活用によって従来ヒトが行っていた作業を削減するだけでなく、物理世界におけるヒトの働き方改善、ダイバーシティ加速、新たなエクスペリエンスの創造を目指さなくてはならない。そのためにはIoT領域/非IoT領域といったサイバー空間と、物理空間の間でさまざまなデータをバリアフリーに活用する必要がある」とコメントしている。
今後大きな変革が必要に
今回の調査では、今後、IoTデータの増加とともに非IoTデータも増加するという。そして、その合計は、2025年には163兆GBに達するという。このように、今後も「データエコシステム」の増加が加速していくとみられる。
しかし、そのためにはさまざまな分野の企業のデータをバリアフリーに活用する必要があり、今後大きな変革が必要となろう。
img: PR TIMES