2015年8月の国会で「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(通称:女性活躍推進法)が成立した。これは、「女性労働力」を積極的に活用して、日本の経済を活性化させようというもの。また、「働き方改革」においても、女性の活躍を推進しようというさまざまな政策が打ち出されている。
では、その実態はどうなっているのだろうか。株式会社帝国データバンクは、女性の雇用や登用に対する企業の見解について調査を実施した。その結果、女性管理職の割合や従業員全体の女性割合が上がってきていることわかった。
女性従業員割合は平均24.9%。前年より0.3ポイント上昇
まず、自社の従業員に占める女性の割合を尋ねたところ、女性従業員割合は平均24.9%となり、2017年より0.3ポイント上昇した。「30%以上」と回答した企業は 29.7%であった。また、女性従業員割合が10%に満たない企業は29.3%(「10%未満」23.5%と「0%(全員男性)」5.8%の合計)だった。
2017年と比較すると、「30%以上」(2017年29.8%)がほぼ横ばいとなったものの、「20%以上、30%未満」が0.4ポイント上昇したほか、「10%以上、20%未満」「10%未満」がいずれも低下した。
自社の管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は平均 7.2%と、2017年より0.3ポイント上昇しており、比較可能な2014年以降で最も高くなっている。
「30%以上」とする企業は6.8%にとどまったものの、前年(6.4%)より0.4 ポイント上昇した。管理職の女性割合が「0%(全員男性)」(48.4%)の企業は半数近くに達するものの、緩やかな低下傾向が続いたとしている。
この結果をみると徐々にではあるが、女性の進出が増加していることがわかる。また、管理職においても女性の割合が増加している。
また、自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均9.7%となり、2017年から0.4ポイント上昇した。「0%(全員男性)」が59.0%と6割近くに達するものの、前年(59.4%)より0.4ポイント低下している。
「10%未満」(14.7%)と合わせると、女性役員が10%に満たない企業は73.7%と前年より0.8ポイント低下した。また、「30%以上」の企業は13.0%となった。
女性管理職の平均割合について上場・未上場別にみると、未上場企業が平均7.2%、上場企業が平均5.1%と、未上場企業が上場企業を2.1ポイント上回っており、未上場企業でより女性登用が積極的となっている。
また、2017年との比較では、上場・未上場ともわずかに高まっており、管理職への女性登用は緩やかに進んでいる様子がうかがえるとしている。
一方、女性管理職の平均割合を企業規模別にみると、規模が小さくなるほど女性管理職の割合は高いことがわかる。業界別では以下のようになる。
- 女性管理職の割合が高い
『不動産』『小売』『サービス』『金融』 - 女性管理職の割合が低い
『建設』『運輸・倉庫』『製造』
『小売』は前年から1.4ポイント上昇したほか、『農・林・水産』も1.0ポイント上昇した。とりわけ、「医薬品・日用雑貨品小売」が前年から4.9ポイント上昇し業種別でトップとなったほか、「家電・情報機器小売」が前年の13位から8位に上がった。
このように、女性管理職の登用は進んでいるが、なかでも「医薬品・日用雑貨品小売「家電・情報機器小売」の上昇率が高いことが注目される。これらの業種は女性視点でのビジネスが有利になるのであろう。
企業の女性役員の登用は相対的に緩やかに拡大
また、上の図は自社の女性管理職割合は5年前と比較してどのように変わったか尋ねた結果である。これをみると「変わらない」とする企業が69.8%と多数を占めた。割合が「増加した」と回答した企業は21.6%と2割を超えた一方、「減少した」企業は3.9%にとどまった。
また、現在と比較して今後どのように変わると考えているかを尋ねたところ、企業の6割弱が女性管理職の割合は「変わらない」とみているものの、企業の24.6%で女性管理職の割合が「増加する」と見込んでおり、女性の管理職登用については、概ね拡大していくと考えている様子がうかがえるとしている。
他方、女性役員については、5年前と比較して「増加した」企業は8.2%だったが、今後「増加する」と考えている企業は7.5%にとどまる。企業における女性役員の登用は相対的に緩やかに拡大するとみていることが明らかとなったとしている。
そして、自社において女性の活用や登用を進めているか尋ねたところ、企業の43.1%が「社内人材の活用・登用を進めている」と回答した(複数回答。以下同)。他方、「社外からの活用・登用を進めている」は12.7%となり、企業の1割超は活用・登用する女性として社外も視野に入れている様子がうかがえるとしている。
社内または社外から女性の活用・登用を進めている企業は48.4%(2前年調査48.3%)で、女性の活用・登用を進めている企業は前年とほぼ同水準となった。
女性の活用や登用を進めている企業にその効果を尋ねたところ、以下のような結果になった。
- 「男女にかかわらず有能な人材を生かすことができた」(67.6%)
- 「女性の労働観が変化してきた」(27.6%)
- 「多様な働き方が促進された」(25.6 %)
- 「従業員のモチベーションが上がった」(25.5%)
- 「女性を登用したことで業務が円滑に進んだ」(25.1%)
また、女性活用・登用の効果を従業員数別にみると、概ね従業員数の多い企業で効果をより実感する傾向がみられたという。従業員数 1,000人超の企業では以下のような項目が全体を大きく上回った。
- 「女性の労働観が変化してきた」(43.0%)
- 「多様な働き方が促進された」(43.0%)
- 「女性管理職比率が上昇した(目標に近づいた/目標を達成した)」(26.9%)
- 「男性の労働観が変化してきた」(17.2%)
他方、「女性を登用したことで業務が円滑に進んだ」は従業員数が5人以下の企業で3割超となった。従業員規模により、女性の活用・登用から異なる効果を得ている様子がうかがえるとしている。
これらから大企業ほど女性登用の効果を実感していることがわかる。これは、規模大きい企業ほど女性の数自体が多く、その効果は大きくなるのだろう。
ビジネス界でも本格的に始る女性進出
男性は「労働」し、女性は「家庭」を守る、という時代は完全に終わりを告げた。女性の進出は何も今始まったわけではない。
これまでも、政治界、芸術界、スポーツ界などさまざまな分野で女性の進出が活発化してきたが、ビジネス界でもより一層女性の活躍が目立つ日は近いだろう。
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