ドローンは空中撮影だけでなく、現在はあらゆる分野での導入が検討されている。しかしながら規制が厳しく、中々うまくいかないのが現状だ。その中で、現在目覚ましい成果を上げているのが医療分野である。
海外では途上国を中心に展開しており、もはや欠かせない存在になりつつある。日本でも導入を開始するために実証実験が開始された。
テラドローン、ゴルフ場、個人住宅へ向けた緊急用ドローン飛行実験を実施
テラドローン株式会社、東急不動産ホールディングス株式会社、オムロンヘルスケア株式会社の3社は合同で迅速な人命救助を目的にAEDを搭載した救急用ドローンによる飛行実験を千葉県大網白里市にある一般住宅地とゴルフ場の複合開発地「季美の森」において実施した。
なお、個人住宅へのAED運搬実験は日本ではじめての取り組みである。この実験はゴルフ場でプレーヤーが倒れた場合を想定し、従来どおりのゴルフカートでのAED運搬や救急車を呼んだ場合とクラブハウスからドローンにてAEDの運搬する場合の有効性の比較実験である。
実験結果は、10番ホールのグリーンへのAED運搬実験では2分11秒でAEDの運搬が完了。また、住宅地への運搬は2分22秒という結果になった。事前に従来どおりの運搬方法の時間を計測結果は10分10秒であったため、ドローンによるAED運搬の有効性を確認できる結果となった。
距離が伸びるほどさらなる技術向上によりドローンの有効性は増すことが期待できる。AEDの配置が難しい郊外団地やスポーツ施設ではドローンによる運搬は、救命率向上にむけた有効な手段であるといえるだろう。
「医療」こそがドローンが活躍する舞台、空飛ぶ機械は未来のライフライン
世界中でドローン実用化に一番注目しているのが医療分野だ。世界では、毎年5歳以下の520万人の子どもが、基本的な医療物資が手に入らないがために命を落としており、途上国では交通インフラが整備されていないケースも多く、救命率の停滞につながっている。通常のインフラを使用しないドローンならば、血液やワクチンなどを迅速に届けることができると注目されている。
実際に医療分野で活用が開始され始めており、実際に実績を上げているため、今後も医療分野で活用されていく見込みだ。
実際の成果を紹介しよう。
カリフォルニア州メンローパークが拠点の「Matternet」はオールシーズン使える道路へアクセスできない人が10億人ほどいる。そのような人たちに医療物資を提供するために立ち上げられた。
Matternetは、ユニセフと共同でHIV検査キットのドローン輸送をアフリカのマラウイで実施した。同社のドローンは最大積載量2kgで10キロ先の目的地に15分で運ぶことができる。
マラウイでは10人に1人はHIVを患っており、2014年にHIV関連で死亡した子供は1万人に及ぶ。HIVに感染した母親を持つ子供の初診に対応できるラボは全国に8つしか無く、満足に検診できる体勢が整っていない。
従来はオートバイが使われてきたが、交通インフラの不足、配達時間の長さ、石油が高額とHIV検査は中々進まないことが現状である。ドローン輸送によりこれらの問題を大幅に改善されることが期待されている。
また、ルワンダでは「Zipline」がルワンダ政府とともに「血液」のドローン輸送にとりくんでいる。同社のドローンは最大重量1.5kg、飛行距離は一回の充電で75km。と長距離の輸送が可能となっている。
2017年3月時点で、Ziplineはルワンダの病院の大半を占める21の病院と連携している。病院からの発注を受けると、ドローンに乗せられた血液が倉庫から飛び立ち、時速100キロで目的地へ向かう。
ドローンが人や動物に接触する事故を防ぐためにパラシュートで物資を投下する。この方法を採用したことにより、4時間を要した配達は15分に短縮された。1日の配達回数は500回を超えるなど、順調に増加している。
ルワンダのプロジェクトが好調なこともあり、Ziplineは2016年8月に北米ネバダ州などの僻地にあるネイティブ・アメリカンの居留地に医療物資を届けるプロジェクトを発表するなど、規模も順調に拡大している。
ドローン輸送が展開する他分野への拡張の道
ドローンの医療物資や血液の運搬により、インフラがあまり整備されていない地域では劇的な改善をみせた。
しかしながらドローン輸送の安定した実用化に向けては、積載量やバッテリー寿命まで様々な困難が立ちはだかる。最大のハードルは飛行制限だろう。途上国がドローン輸送の舞台に選ばれるのは意思決定の速さも影響している。
途上国での成功事例がさらに増えれば、様々な国でもドローン輸送が導入されるかもしれないが、その道のりは長そうだ。しかし、医療物資輸送が確固たるものとした上での他分野への展開は現実味を帯びてくる。
今後は医療物資輸送が全てドローンに入れ替わる日も来るかもしれない。救急車よりもまずドローンが現場に到着し診断する。そんな未来はもう目の前に迫っている。
img:PR TIMES