社会全体の高齢化によって患者が増え、医師不足の進行が社会的課題となっている。特に地方では、医療リソースの不足が深刻な病院や地域が多々ある。

そこで注目されているのが、医師と離れた場所でも医療を受けられる遠隔医療だ。インターネットを介して遠隔地にいる医師に相談ができれば、医師のいない僻地でも診療が可能であり、医師不足を軽減する1つとして期待されている。

そんな中、1つの遠隔医療アプリが内閣府主導の「近未来技術社会実装事業」に採択された。

24時間365日スマホで医師と相談できるドクターシェアリングアプリ「LEBER(リーバー)」

LEBERは、2018年1月にリリースされたスマホ用のドクターシェアリングアプリだ(現在はiOSのみ対応)。LEBERでは、チャットボットによって患者の身体の状態を、チャット形式で丁寧にヒアリング。サービスに登録された全国の医師が、その情報にあわせて適切なアドバイスを行ってくれる。さらに必要に応じて、症状にあわせた医療機関や市販薬の紹介も実施。医療機関やドラックストアについてはマップ表示も可能だ。

このアプリでは自分の症状によって相談料金を100円・300円・500円のいずれかからえらぶ。相談料金があ上がるごとに、より評価が高い医師によってよりスピーディに回答してもらえる。

たとえば100円なら、全ての医師が回答可能で、回答時間は3~12時間程度。症状が軽く、それほど緊急性のない相談に適しているだろう。

また500円を払うと、評価が3つ星以上(医師の評価の最高は5つ星)の医師から、3~30分で回答してもらえる。子どもが夜中に突然高い熱をだした場合などの緊急性を要する際や、仕事を抜けられないビジネスパーソンが一刻も早く症状を改善したい際などに活用できそうだ。

医師からは、「心配いらない(安静にすべき)」「病院に行くべき」「市販薬で対処可能」といった明確な回答と共に丁寧なコメントが行われる。

なお市販薬の紹介は画像付きで行われるため、ドラックストアで迷うことなく便利だ。また相談や回答の履歴は、カルテとして3ヵ月間保存される。プレミアムメンバー登録をすれば、無制限での保存も可能だ。

ちなみにアプリでは複数アカウントの利用も可能とのこと。カルテもアカウントごとに生成される。LEBERは企業の福利厚生や、保育園や高齢者施設での医療サービス用途としても利用が予定されている。

アプリの運営元である株式会社AGREEは、LEBERでセルフメディケーション推進による日本の医療費削減や医療の地域格差是正、早期発見・早期治療への橋渡しといった社会的な問題の解決を目指している。

LEBERが内閣府主導の「近未来技術社会実装事業」に採択される

近未来技術社会実装事業とは、AI・IOTなどの技術によって、産業の生産性向上・住民の健康維持など様々な課題を解決し、地方創生につなげられる事業のこと。関連する提案を地方公共団体から募集し、中でも優れた事業に関しては、関係府省庁により総合的な支援が行われる。

そしてLEBERは2018年8月8日、茨城県・つくば市による提案「高齢社会の課題を解決する近未来技術(Society5.0)社会実装 (自動走行、農業、医療、防災)」の1つとして採択された。これによって、日本の遠隔医療の普及が促進されることを期待したい。

遠隔医療のサービスは他にも続々と登場

LEBER以外にも遠隔医療のサービスは続々と登場している。たとえば株式会社Kids Publicが提供する「小児科オンライン」もその1つ。

子育て中の母親向けの遠隔医療相談サービスで、現役小児科医がビデオ通話ソフト「Skype」・コミュニケーションアプリ「LINE」を通して相談を受け付ける。このサービスは、都市・地方・海外在住の日本人問わず、多くの母親によって利用されている。

またAIによる医療系製品開発を専門とする株式会社NAMでは、チャットボット型電子カルテ「ドクターQ」を提供。これは医師が患者の経過を把握するための医療機関向けのサービスだ。

現代の医療現場では、適切な患者の経過把握が大きな課題となっている。患者は治療後の経過が良いと感じると、医師へ報告しないことが一般的。特に自覚症状が少ない慢性疾患では、患者は自分の判断だけで治療をやめてしまうこともよくある。

たいして患者については、自分自身の医療情報を持つことが難しいのが現実だ。通常カルテをみることはできないし、お薬手帳はスマートフォンで持ち歩けない。

また、これまでの遠隔医療では相手の顔をみて会話をしながら診療しなければならないとの制約があり、医師が患者の経過を手軽に収集するという状況ではなかった。

ドクターQでは、これらの課題を解決する。まず患者はLINEを使い、医師替わりのチャットボットから問診を受けたり、自分のカルテをみたりすることが可能だ。たいして医師は、ドクターQにより、患者経過を簡単に把握できる。

患者とはボットを介してコンタクトをとる。電子カルテのフォーマットに従い、医師に代わってチャットボットが患者に対してLINEで質問を行う。

手軽に使えるLINEという連絡ツールをうまく活用した、遠隔医療サービスの一例といえるだろう。こういったサービスが普及すれば、治療後の経過が悪くなっても医師に相談が行われず、症状を悪化させてしまうような事態は減りそうだ。

「チャットボット型電子カルテ」は医師と患者のコミュニケーション問題をクリアする!医療系AIスタートアップのNAMが提供を開始

日本の遠隔医療は確実に進歩している

高齢化による医師不足、地方の医師不足 – これらを解決するにあたって遠隔医療の活用は必須といえるだろう。

そんな中、今回紹介したLEBERやドクターQのように、ただ「遠隔からインターネットを介し医師に相談できる」というだけでなく、医師・患者両者が便利に使えるようにサービスや機能が工夫されたサービスも登場している。

これらのサービスが普及し、日本の医師不足解消が実現する未来は近いのだろうか。

img:PR TIMES