2020年にオリンピック・パラリンピックを控え、インバウンド消費への期待が広がっている。
政府が主導する「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」では、2020年に4,000万人の外国人観光客が訪日、との数値目標もある(2017年の実績は2,869万人)。
移動・宿泊・ショッピングなど、さまざまな形で消費が行われるが、現場では言語・コミュニケーションといった課題があるようだ。ここでは、「飲食店における外国人観光客への対応」に関する調査から、実態をみていきたい。
飲食店経営者の外国人観光客に対する意識は?
2018年8月3日、株式会社シンクロ・フードは、「飲食店における、外国人観光客の対応に関する調査」の結果を発表した。
シンクロ・フードは、飲食店に特化したリサーチサービス「飲食店リサーチ」を運営している。調査対象は、飲食店経営者・運営者、275名。期間は、2018年7月13日~19日。インターネット調査の形で行われた。なお、回答者のうち69.1%が1店舗のみを運営、78.6%が首都圏の飲食店、という構成になっている。
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「外国人観光客の来店頻度」について尋ねたところ、「毎日(10.5%)」、「週に数回(20.4%)」、「月に数回(33.1%)」、「ほぼ来店しない(26.9%)」という結果になった。「まったく来店しない」は9.1%で、ほとんどの飲食店で、外国人観光客が来店していることがわかる。
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「全来店者数における外国人観光客の割合」を聞くと、「外国人観光客の割合5%以下」が77.2%となった。大半の飲食店で、外国人客がそれほど多くない状況となっているようだ。
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「外国人観光客の来店数を増やしたいと思うか?」という問いに対しては、「とても思う(18.5%)」、「どちらかと言えばそう思う(39.3%)」という結果になった。約6割の飲食店で、外国人観光客の来店に対して、前向きな姿勢であることが読み取れる。
調査では、「とても思う」/「どちらかと言えばそう思う」の理由を、自由記述形式で聞いている。
外国人観光客は客単価が高い、という意見が目立つ。また、団体での来店を歓迎する飲食店も多いようだ。外国人観光客の特徴として、「SNSの利用」がある。「おいしい」など高く評価されれば、SNSにアップされ世界規模で拡散される。外国人観光客同士のつながりも強く、来店客の増加を期待する声が多い。また、外国人が店内にいることで、店の雰囲気づくりになる、という意見もみられた。
「まったく思わない」/「どちらかと言えばそう思わない」の理由としては、外国語でのコミュニケーションの課題が目立つ。「チャージ」や「お通し」など文化の違いからくるトラブルも問題となっているようだ。常連客への配慮から、外国人観光客をそれほど重視していない、というお店もある。
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「外国人観光客の対応で課題と感じる事」について調べると、「料理や食材の説明(59.6%)」、「店内でのマナー(44.0%)」、「苦手な食材の対応(40.4%)」が上位に挙がった。コミュニケーション、マナー、食文化の違い、が課題となっているようだ。
他にも、「予約の受付(32.4%)」、「会計に関する説明(26.5%)」、「オーダー間違い(21.5%)」、「決済方法(16.7%)」といった課題が並ぶ。やはり、場面ごとに、言語の違いによるコミュニケーションの難しさが課題となっている。
約6割の飲食店は、来店の増加に前向きだが、コミュニケーションを中心としたオペレーションの改善が必要といえそうだ。
このように、外国人観光客によるインバウンド消費の場面では、店舗での多言語対応が必要となる。この課題については、スマートフォンとQRコードを使ったソリューションがある。
スマホとQRコードで店舗の多言語対応を実現
2018年7月20日に、株式会社PIJINが、多言語商品情報プロジェクトとの連携を発表している。PIJINは、多言語表示サービス「QR Translator」の開発・運営事業を手掛ける企業だ。
多言語表示サービス「QR Translator」は、ユーザーがQRコードをスキャンすると、ユーザー端末の設定言語が認識される。それにより、設定言語に合わせ、コンテンツを表示することができる。
一方、多言語情報プロジェクトでは、専用アプリ「Mulpi」を開発した。商品パッケージや、店頭POPについているJANコード(バーコード)を読み取ると、メーカー公式商品情報を確認することができるアプリだ。約12万アイテムの基本データベースが利用可能だ。
QR TranslatorとMulpiが連携することで、店舗を訪れた外国人観光客は、プライスカードやショップカードのQRTコード(2次元コード)をスマホで読み取れば、自分の言語に翻訳された商品情報を確認できるようになる。
QR Translatorは、39言語に対応し、一つのQRTコードに最大15言語まで選択できる。
有料モデルを利用すれば、より詳細な商品情報を表示が可能だ。自由なデザイン・レイアウトの実現、SNS連携など、さらなる応用が期待できる。
多言語対応は、テクノロジーの利用が現実的
調査では、外国人観光客と飲食店の関係が浮かび上がった。飲食店は、インバウンド消費にメリットを感じ、6割が外国人観光客の来店増加を望んでいる。その一方で、電話予約・メニュー・オーダーといった場面で、言語の違いによるコミュニケーションが課題となっているのがわかった。マナーや文化の違いからくるトラブルの解決も難しくしているようだ。
店舗の多言語対応では、スマホとQRコードを使ったソリューションが登場している。コミュニケーション問題のスマートな解決法として、飲食店での応用も考えられるかもしれない。
グローバル化がさらに進む現代において、英語さえできれば、という状況ではなくなってきている。しかし人間の限界を考えた場合、複数の言語を覚えるには時間も余裕もなかなかないだろう。そこを埋めてくれる存在として、テクノロジーによる解決に期待が高まる。
img:PIJIN
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<参照元>
飲食店.COM(株式会社シンクロ・フード)調べ