「ことわざ」とは不思議なもので、言語が違えど同じ意味の言葉が往々にして存在する。日本語の「憎まれっ子、世にはばかる」は、英語では「Ill weeds grow apace.」。雑草はすぐ伸びる、という意味だ。

セクハラ、Googleとの知的財産を巡る裁判、ドライバーの低賃金などが露呈し、すっかりネガティブなイメージがついてしまったUber。創業者のTravis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏は2017年6月に主要投資家からの圧力を受けてCEOを辞任した。

しかし、誰がなんと言おうと、Uberをあれだけ大きな企業にした成功者であり、世界に名をとどろかす実力者。タダでは起きないとばかりに、チャレンジングなニュースが飛び込んできた。

フードデリバリーの立ち上げを、ハード・ソフトの両面からサポート

Travis Kalanick氏はUberのCEO退職後、2018年3月に投資ファンド 「10100 Fund」 をスタートさせた。同ファンドの主な投資領域は、コマース、不動産、そして新興市場であるインドや中国におけるイノベーション。それらの取り組みを通じて「大規模な雇用創出」を目指すそうだ。

Travis Kalanick氏は10100 Fundを通じて、City Storage Systems(シティ・ストレージ・システムズ、略称:CSS)を1億5000万ドルで買収。CEOに就任した。同社は不動産を購入し、新しいサービスや展開を再開発する事業を行なっている。

CSSが手がけているのは、フードデリバリーサービスを始めるために必要となるハードウェア、ソフトウェアを提供する「CrowdKitchens」というサービスだ。

料理を提供するにあたって必要な調理道具やキッチン、ユーザーに料理を安く早く届けるためのロジスティクス、ビジネスを伸ばしていくために必要なマーケティング、この3つをフードデリバリーを始めたい事業者に提供する。

ロジスティクスに関しては、Travis Kalanick氏のUberでの経験が活きてくるかもしれない。Uberの現CEO、 Dara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏も「Cloud KitchensはUberEATSのパートナーだ」とポジティブなツイートをしている。

CrowdKitchensはフードビジネスをどのようにアップデートするか

『AMP』では定期的にフードビジネスの動きを紹介してきた。過去に紹介したシェフのためのコワーキングスペース「FOODWORKS」は、フードビジネスを始める敷居を下げ、新興ブランドを次々に生むことに成功していた。

シェフの起業がNYでブームに?コワーキングスペースから生まれるユニークな食のブランドたち

フードデリバリーサービスの盛り上がりを背景に、店舗を持たないレストラン「ゴーストレスラン」がNYを中心に登場。食の新しい動きとして注目してきた。

NYでは”店舗のない”レストランが増加中。フードデリバリー産業の成長が後押し

ゴーストレストランの場合はキッチン機能のみをフード提供者が所持し、ロジスティクスやマーケティングにあたる部分をUberEATSなどのプラットフォーマーが担っていた。

CrowdKitchensがそれらと異なるのは、キッチン、ロジスティクス、マーケティングを一気通貫でサポートしようとしていることだ。

不動産コストや設備投資コストなどハードウェアに関する部分、マーケティングに関するソフト面のコスト削減やノウハウの提供、ロジスティックに関するオペレーションやコストもサポートする。フードデリバリー参入企業にはかゆいところに手が届くサービスであり、ニーズは高そうだ。

キッチン、ロジスティクス、マーケティングに一気通貫で取り組めるならば、新たにフードビジネスを始める敷居はさらに低くなるだろう。

Uber創業者Travis Kalanick氏が次に取り組むのは、名もなき個人の挑戦を後押しすることだ。そこには、18歳の頃に初めて起業した自分のような誰かを応援したいという思いがあるのだろうか。

img:CrowdKitchens , 10100 Fund , Twitter