ユーザーが手軽に情報発信ができるようになった現代は、まさに個人の時代かつ「評価経済社会」と言えるだろう。SNSで商品やイベントの情報を発信していたことがきっかけで買い物やイベントに参加するユーザーも増えている。
このように「評価経済社会」では個人の発信者・ユーザーの評価が人々の消費行動を促す大きな要因になってきている。
このようなトレンドを背景に、企業もユーザーの評価について見て見ぬふりができないものとなり、今では積極的に取り入れている企業もある。これらのユーザー評価の波は飲食店の店員にも波及してきている。
店員の評価で今日の店を決める?新しい店舗検索アプリterip(テリップ)が登場
株式会社Curiousは東京23区限定で、店の店員でお店を決めるアプリterip(テリップ)をリリース予定だ。
terip(テリップ)は以前までの評価サイトのようなお店の料理の美味しさや場所、値段ではなく店員の評価で決めるアプリだ。「接客の良い店員のいる店に行こう」「面白い店員がいるらしい」と言った具合に、検索が可能になる。
店員の評価は顧客が来店した際にアプリ上で少額のチップとメッセージを表す「ありがとう」を送ることで可能。自分がおすすめの店員をアプリ上で応援することができ、この「ありがとう」が店員の評価になりアプリ上に掲載される。
「ありがとう」をもらった店員側はもらった「ありがとう」をスターバックスドリンクチケットに交換可能。交換先は順次増えていき、今後は様々な商品や通貨との交換が予定されている。
terip(テリップ)は以前までの飲食店の評価から一変し、店舗を判断して行くのではなく個人に会いに行くという新しい飲食店検索アプリと言えるだろう。
企業が生き残るためにはファンの熱狂を足がかりにしたファンベースマーケティングが鍵
terip(テリップ)の登場は個人単位の評価経済に企業も着目してきたという証拠だろう。このような個人がファンを獲得し、ファンの熱量を通じてサービスの成長に活かそうとするアプローチが行われ始めている。
ファンベースとは、佐藤尚之氏の著書『ファンベース ──支持され、愛され、長く売れ続けるために』の中に執筆されているファン視点でマーケティング活動を行うことだ。
具体的には新規顧客の獲得が難しい時代に企業が生存するには「ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期に売上や価値を上げていく」マーケティング戦略のことである。
ファンベースにマーケティングを考える理由は主に3つある。1つは、情報過多の世の中のため、新たな情報が顧客に届きにくいこと。2つ目はどの企業も顧客の上位20%に当たるファンが売上を支えており、ファンを元にブランドは成り立っているため。3つ目は「ファンはどのメディアもしのぐ最強のメディアである」ということ。
情報過多の世の中だからこそ、SNSで評価の高いものや価値観の近い友人や家族が投稿した情報は価値が高い情報として伝播する。
時代と共に変化するサービスの価値を、ファンと一緒の目線で見極め、改善していく。自分たちのサービスの価値を支持してくれるファンを大切にし、今以上に喜ばせる。これがファンベースの考え方だ。
具体例では2016年にクラウドファンディングで3,900万円の製作資金を集め公開された映画「この世界の片隅に」がある。
投資者であるファンを喜ばせるために返礼を考えたことが、現在まで続くロングランの決め手になっている。作品の進捗メールや原作者描き下ろしのイラスト、エンドロールにファンの名前クレジット、サービス開発のプロセスにファンを巻き込むことで、ファンを「応援したい」という気持ちを引き出すことにつながった。作り手側との共有により、ファンにとってサービスの価値は唯一無二のものになる。
ファンベースの活用と個人評価経済の展望にみる未来の企業とは
評価経済社会は個人の経験やスキルによってファンを獲得できる時代に突入し始めた。これにより、個人の仕事が得やすい環境になってきている。
企業によってはサービスを知り尽くした「ファン」を中心にブランド強化を目指す手法も確立され始めている。しかし、依然として多くの企業は「ファンベース」でマーケティングを行っていないだろう。
今後の企業は「個人」「ファン」「サービス」をいかにして結びつけるかが、ブランド促進にもなり、失敗すればブランド価値の減少にもつながっていくことだろう。
img:PR TIMES