もはや、スマホ/SNSは我々の生活の一部になっている。これほど、SNSが浸透した現在、MediaKitが、米国で13〜79歳までを対象にした調査では、1日あたり、Facebookは35分、Instagramは1分を費やしていることがわかったという。この状況は日本でも似たようなものだろう。
今回この二つのアプリの利用時間を管理できるというアプリが登場した。Instagramは2018年8月1日、アプリ利用時間を管理できる新しい機能を InstagramとFacebookに導入すると発表した。
SNSの精神衛生への影響を考慮して開発
今回導入された機能は、「アクティビティダッシュボード」、「デイリーリマインダー」、「プッシュ通知のミュート設定」の3つ。
InstagramとFacebookでは、両プラットフォームを使う時間がユーザーに、前向きな体験であってほしいと考えているという。これらの機能は、コミュニティ(利用者)からのフィードバックや調査に加えて、SNSが精神衛生に及ぼす影響などを研究している外部の専門家や団体と協力して開発した。
各機能の特徴と設定方法は以下の通り。
- アクティビティダッシュボード
該当するデバイスのアプリ平均利用時間を確認可能
Instagram上では「アクティビティ」を、Facebook上では「Facebookの利用時間」をタップする。そして、トップ画面のダッシュボードで、過去1週間のアプリ平均利用時間を確認。グラフをタップしてその日の利用時間を確認できる。
- デイリーリマインダー
事前に設定した時間を超えてアプリを利用した場合、リマインダーを送信
アクティビティダッシュボード内の「デイリーリマインダー」をタップする。そして、利用時間の上限を選んでリマインダーを設定する。
- プッシュ通知のミュート設定
InstagramまたはFacebookのプッシュ通知を一定期間、制限可能
これは、「お知らせ設定」をタップ、「プッシュ通知をミュート」を選択し、プッシュ通知を制限する期間を設定(15分、1時間など)する。
InstagramとFacebookはこれまでの、ユーザーがプラットフォーム上での体験をより管理するための機能を導入してきた。Instagramでは、機械学習で不適切なコメント、いじめコメントを自動的に非表示にするフィルター機能、コメントをオフにする機能を、Facebookでは、トップに表示や非表示、フォローをやめる、フォローを休止機能などを提供している。
また、自殺防止に関しても注力しており、Save.orgなど自殺防止や精神衛生に関する活動団体と協力するほか、過去に自殺を考えた経験のある人々からの意見も取り入れながら、AIの活用や初動対応者の特定方法の改善などに取り組んでいるという。
高まるSNSの中毒問題。早急な対応策を
SNSの浸透とともに、SNSを取り巻く環境に変化が起きている。これまでスマホやSNSに関して、生活の利便性向上や生産性向上、市場/雇用創出など、ポジティブな側面にスポットライトがあたることが多かった。
しかしこの1〜2年の間に、スマホ/SNSに関する負の側面に注目する報道、研究、レポートが増えている。その多くが過剰利用や中毒による精神的な苦痛やうつ状態の発症を指摘している。特に、若年層への悪影響についてその深刻さを訴えるものが多いようだ。
特に問題なのが中毒性だ。英国Royal Society for Public Health(RSPH)は2017年に発表した調査レポートで、SNSはタバコやアルコールよりも中毒性が高いと指摘し、若者への影響が無視できない状況まで発展していると警告している。
Googleでエシカルデザインを担当した経験を持つトリスタン・ハリス氏の分析によると、SNSの中毒性はスロットマシンと同じであるあるという。同氏はこの状態を、心理的脆弱性をつき中毒にさせる仕組み「予測不能な報酬」と呼んでいる。たとえば、ポケットからスマホを取り出したときに、通知がどれくらいたまっているのかを知ることになるが、これが予測不能な報酬となり、何度もスマホを確認してしまう中毒状態になる。
また、Facebookに投稿した写真やコメントにどれくらいの「いいね」がつくのか、どのような返信があるのかが気になって何度もFacebookを確認する。またスクロールダウンしたときにロードされる友達の写真やコメントも予測不能な報酬に入るだろう。
こうした環境の変化に対して、大手メディアなどによる外部からスマホ/SNSを見直そうという動きに加え、内部からの動きも活発化しており、それらが相まって大きなムーブメントとなっている。
内部からの動きとは、Google、Facebook、YouTubeなど大手テクノロジー企業でかつて重要な役職を担っていたエンジニアやこれらの企業に出資していた投資家らによる、テクノロジーデザインを有害なものから人に優しいものに変えていこうという取り組みのことだ。
また、SNS運営側でもこの状況に対応した動きができている。Instagramはユーザーの精神的健康にフォーカスする「ウェルビーイングチーム」を発足させた。また、今回の時間管理アプリの導入もその一環だろう。このように、SNS側の動きも少しずつ出てきている。
利用時間の管理やルールを守った使い方を
SNSの問題については、国内でもその中毒性や個人情報が流出してしまった場合などの危険性をメディアが訴え始めている。たしかに街に出ると、若者層を中心にスマホを操作しながら歩いていく人ばかりをみかける。これらすべての人がSNSをみているとは言えないが、その多くはSNSのチェックや投稿中といったところだろう。
SNSはもちろん、コミュニケーションという面では非常に大きなメリットがあるため、今回の機能のように利用時間の管理やルールを守った使い方で、生活を豊かにするツールとして活用したいものだ。
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