もはや完全に世の中に根付いたといっていいAI。ソフトバンクのPepperやコネクテッドカーをはじめ、さまざまな分野でなくてはならない存在となっている。そして、最近ではこのAIはユーザーの感情を認識するほどまでになっている。
感情認識AI のサービスを提供する株式会社シーエーシー(CAC)は、リアルタイムで自動車の乗員の感情分析が可能な車内センシングAI「Automotive AI」を提供開始した。
車内のカメラやマイクで乗員の感情を分析
「Automotive AI」は、自動車内に搭載したカメラやマイクで、運転者や同乗者の表情や音声のデータを収集し、それらを基にリアルタイムで乗員の感情を分析するシステムだ。
米国のAffectiva,Incが開発した最先端の車内センシングAIであり、ディープラーニングを利用した世界最大級の表情と感情のデータベースとAffectiva社独自のアルゴリズムにより高い感情分析精度を誇るという。
以下を指標とし、ユーザーの感情を分析する。
- 4つの感情値
喜び、怒り、驚き、Valence(肯定的表情/否定的表情) - 8つの表情値
笑顔、眉を上げる、眉間にしわを寄せる、頬を上げる、上唇を持ち上げる、鼻にしわを寄せる、目を閉じる、口を開ける - 3つの眠気に関する指標
あくびをする、瞬きをする、瞬きの頻度 - 顔の向き・角度
上下、左右、前後の向き - 3つの音声感情
怒り、笑い、興奮
このため、単純な頭部位置や視線測定に依存する従来のシステムと比較して、事故を予防できる可能性が高まる。また、自動運転の商用利用促進にも効果が見込める技術だという。
特徴は以下のとおりである。
- 車内に設置したカメラとマイクから映像や音声を収集し、マルチモーダルな感情分析を実現。映像に映っている人物の表情(形や動き)を分析し、マイクからは発話者の音声(トーン、テンポ、音量など)を分析する。
- 外部ネットワーク接続を必要としないローカル処理モードでの使用が可能。
- RGB/近赤外線カメラの利用が可能なため、逆光や暗闇などでも運転者の表情を正しく検知できる。
- ディープラーニングによる画像認識技術を用いて、顔画像から表情や感情を高い精度で分析する。
同社では、今後、自家用自動車への搭載だけでなく、電車やバス、タクシーなどの公共交通機関における運転者の状況把握のソリューションとしても利用できるよう展開していくという。
広告やヘルス分野など拡がるAI感情分析サービス
AIによる感情分析を用いたサービスとしては今回の「Automotive AI」のほかにも、英国発のベンチャーRealEyes(リアルアイズ)社とグローバルで動画広告配信ソリューションを提供するGlassView(グラスビュー)社が提供している視聴者の感情を元に動画広告を最適化する新サービス『GlassView Emotion(グラスビュー エモーション)』がある。
これは、動画広告を見ている視聴者の微細な顔の表情を人間の基本感情といわれている、“喜び”、“驚き”、“混乱”、“悲しみ”、“嫌悪”、“恐れ”に分類し、リアルタイムに反応を確認することが可能だ。
これにより、視聴者が広告に対してどんな反応をしているか、また広告に対する反応率など、以前ではアンケートでしか判断できなかったものを定量的に確認することができるため、ターゲティングの最適化や広告予算の分配などの指標になる。
最近では、LGエレクトロニクス社が米国での認知向上を目的に動画キャンペーンを4カ国で配信。結果キャンペーン利用意向が128%上昇する高いパフォーマンスを得る結果となったという。
また、音声感情解析AI「Empath」を提供する株式会社Empathとトップアスリート向けに体調・トレーニング管理クラウド「ONE TAP SPORTS」を開発・展開する株式会社ユーフォリアは、業務提携を行いアスリートのメンタル管理に乗り出している。
このサービスは、アスリートのメンタル面でのケアを狙ったもの。音声感情解析AI「Empath」を利用することで、これまで把握困難であったメンタル状態の可視化およびデータ化を進めていくという。
また「Empath」は、被災地でのメンタルケアにも活用されたことやストレスチェック義務化対応アプリ「じぶん予報」を展開するなど、メンタルヘルス分野で多くの実績を有している。
AIの感情認識の先にあるものとは
このところのテクノロジーの進化の速さには驚くものがある。一昔前に機械が自分の感情を分析できるとは誰が想像しただろうか。
しかし、テクノロジーの進化はここで止まらない。AIの感情認識の先にあるもの、それはAI自身が感情を持つことではないだろうか。かつて、SFの世界の中でしかなかったことが、現実になろうとしている。
img:PR TIMES