個人情報などの機密データの管理が問題になっている。データの流出やセキュリティの脅威にさらされる中、企業や各機関などはデータ管理に真剣に取り組まなければならない、状況になっている。中でも銀行は常に大量の機密データを保有しているため、データ管理の問題は切実である。
しかし、アクセンチュアが毎年発表している、世界のテクノロジートレンドに関する調査レポート「Banking Technology Vision 2018(バンキング テクノロジービジョン2018)」によると、多くの銀行は自行のデータの有効性や信憑性の検証を十分に行っていないことが明らかになった。
銀行でも大きいAIへの期待
「バンキング テクノロジービジョン2018」は、25人以上の有識者で構成される諮問委員会による分析、テクノロジー分野の有識者や業界の専門家へのインタビュー、および約800人の銀行の経営幹部および IT部門責任者を対象とした調査結果に基づいて作成されている。なお、この中には、31名の口内銀行の経営層およびIT部門責任者が含まれている。
今年のレポートのテーマは「Building the Future-Ready Bank(将来を見据えた銀行の確立)」。このテーマのもと、銀行における創造的破壊の次の波となる5つのITトレンドと、技術変革によって今後10年間に起こりうる、銀行業務のルールの変化について紹介している。以下でそれらを紹介する。
トレンド1: AIを「市民」に(Citizen AI)
AIは、バックオフィスのみならず、フロントオフィスで行員の一人としての活用へと拡大しつつある。顧客の信頼と信用を得られることをAIに期待する最大のメリットとして挙げており、透明性が重要な鍵となることは間違いないという。
- 79%(日本では87%)の回答者は、2年後には、AIが協力者兼信頼できるアドバイザーとして、人と一緒に働くようになると考えている。
- 90%(日本では90%)の回答者は、従業員と顧客はAIの意思決定で用いられる一般原則を理解しておかなければならないと述べている。
- 71%(日本では71%)の回答者は、AIによって導き出された意思決定や行動を透明化する最大のメリットは、顧客からの信頼や信用の獲得であると述べている。
- 24%(日本では23%)の回答者は、今後2年の間に、AIが活用される全ての領域で透明性を示していく計画であると述べている。さらに29%(日本では35%)は、接客時のAIの意思決定について完全に透明化する予定であると回答している。
トレンド2: 拡張現実(Extended Reality)
先進的な銀行では、顧客や従業員との物理的な距離を縮め、彼らとより密接に関わるために、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の利用を開始している。
- 80%(日本では90%)の回答者は、他行に先駆けた、拡張現実ソリューションの採用が重要であると考えているという。
トレンド3:データの信憑性(Data Veracity)
銀行のエコシステム全体でデータを統合するにあたり、データ品質が低いと余計なコストが発生する。
- 94%(日本では94%)の回答者がデータの整合性を信頼している一方で、52%(日本では48%)がデータ品質の評価・確認を十分に行っていない。
トレンド4:摩擦ゼロ・ビジネス(Frictionless Business)
多くの回答者が、柔軟性に乏しいレガシーシステムの問題解消に、マイクロサービスとブロックチェーンが役立つと考えている。
- 平均すると2.6年後には、銀行のバックオフィスではブロックチェーン・システムが始動することになると回答者は予想している。
- 44%(日本では19%)の回答者は、2年前と比べて、パートナー企業の数は、2倍以上に増加したと述べている。
トレンド5:インターネット・オブ・シンキング(Internet of Thinking)
銀行が、デジタルと融合した優れた顧客体験を提供したいと考えるなら、適切なテクノロジー基盤への刷新が必要だという。
- 84%(日本では94%)の回答者は、エッジコンピューティングによって、多くの技術の成熟が促進されると考えている。
これらトレンドを見ると、銀行においてもAIや拡張現実といった最新のテクノロジーに大きな期待がかかっていることがわかる。また、データの信憑性については、日本でも海外でも約半数の銀行が、未だがデータ品質の評価・確認を十分に行っていないという現実が浮き彫りになっている。
銀行の基幹システムはブロックチェーンに置き換わる?
このレポートで紹介している別のトレンド「摩擦ゼロ・ビジネス」では、今日の企業の成長はテクノロジーをベースとしたパートナーシップにかかっていることについて取り上げているという。
しかし実際は、多くの銀行が複雑で柔軟性に乏しい業務/技術プラットフォームを抱えており、外部のパートナーとの連携は決して容易ではないという。
特にブロックチェーンは、銀行業界にとって極めて重要な技術だ。
「テクノロジービジョン2018」では、今後3年間で自社にとって重要になる技術にブロックチェーンとスマート・コントラクトを挙げた回答者の割合は、銀行業界が最も高かった(他業界の平均が60%であったのに対し、銀行業界は71%)。
加えて銀行の上級役職者は、平均2.6年後には自行内で業務用のブロックチェーン・システムが始動し、将来的には自行の従来の基幹システムはコスト効率に優れたブロックチェーン・システムに置き換わるであろうと考えているという。
ブロックチェーン・システムの最大の特徴は「改ざんが極めて困難」という点だ。データ管理が重要な銀行で重視されるのは、当然のことかもしれない。
早急に取り組むべきデータの検証・評価
銀行の94%が自行で保有するデータを信頼しているものの、約半数がデータ品質の検証や確認を十分に行っていないというのは問題だろう。
アクセンチュアのシニア マネジング・ディレクターで銀行グループの責任者であるアラン・マッキンタイヤー氏も「銀行にとってデータの検証・評価は早急に取り組むべき極めて重要な課題の1つだ」と提言している。
なぜなら、データの履歴の検証や使用状況を理解し、それら検証データを適切に保護・保守することで、銀行は間違った知見や偏った判断を下すリスクから回避されるからだ。銀行も今、大きな岐路に立たせられている。
img:PR TIMES