9割以上の学生がインターンに参加する時代。ミレニアル世代のインターンに対する意識とは

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企業と人材のミスマッチを防ぐため、学生が就職前に一定期間実際に企業で働くというインターンシップが急増している。実施する学校も、受け入れ側の企業も右肩上がりで増加している。その形態も1日で終わるものから長期間続くものまで多種多様だ。

大学生向けのキャリア支援を行うNPO法人エンカレッジは、就職活動をする学生の状況を調査する目的で、2019年度に卒業予定の全国の大学生/大学院生を対象にインターン意識調査を実施した。

その結果、2019年卒業予定の学生のインターン参加率は実に92.0%に上ることがわかった。

上位校の92%の学生が最低1社のインターンを経験

この調査は、2018年6月14日から6月30日に実施され、調査対象は2019年卒の大学生・大学院生610名。エンカレッジと株式会社RECCOOが共同で行った。

全体回答者の610名の在籍大学群別割合は、上のグラフのように、「東京一工」(東京大学・京都大学・一橋大学・東京工業大学)が9.2%、「早慶上智」(早稲田大学・慶應義塾大学・上智大学)が13.0%、「旧帝」(北海道大学・東北大学・名古屋大学・大阪大学・九州大学)が21.6%、「有名国立」(筑波大学・東京外語大学・お茶の水女子大・千葉大学・横浜国立大学・神戸大学)が11.8%、「GMARCH」(学習院大学・明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学)が5.2%、「関関同立」(関西大学・関西学院大学・同志社大学・立命館大学)が7.0%、地方国公立が19.5%、私立大が12.6%となった。

このように全回答者に占める、GMARCH、関関同立以上の上位校学生の割合は67.2%となった。

やはり、インターンシップを実施している企業は、大企業ほど都心部に位置してることが多く、地方の学生より都心部の学生の方が参加率が多いのは当然のことと言える。

そしてこのグラフはサマーインターンかウインターインターンどちらかに参加経験がある19卒学生の割合だ。この割合は92%に上り、ほとんどの学生が最低1社のインターンを経験していることがわかる。


この二つのグラフは、上位校学生のサマーインターン・ウインターインターンそれぞれの参加割合だ。サマーインターン参加率は82.5%、ウインターインターン率は72.5%だった。上位校学生はウインターインターンよりも、サマーインターンに参加する傾向が強いようだ。

また、サマーインターンの参加率は上位校以外の学生の参加率と比べて14.5%高い数字となっているという。

ほとんどの大学の夏休みは約2カ月、それに対し冬休みは約2週間程度ということから、サマーインターンへの参加率が高いのは、学生の時間的や精神的余裕が起因しているのではないか。

次に、6月30日の時点で内定承諾をしている学生の38.7%がインターンきっかけで内定を承諾していることがわかった。

内訳をみると16.4%(80名)の学生がサマーインターン、22.3%(109名)の学生がウインターインターンがきっかけで内定を承諾している。

時期的に、一般的な本選考の時期と近くなるウインターインターンほど、内定承諾をする学生の割合が大きくなっている。

また、上位校学生で見ても39.4%(138名)と、全体とほぼ同じ割合でインターンがきっかけで内定を承諾していることがわかった。上位校学生の特徴として、若干ではあるもののサマーインターンきっかけで内定承諾した割合の方が大きくなっている。

これらの結果から、同社では上位校学生を採用ターゲットにしている企業に対し、早期から接触を図ることを提言している。

実際、これに加えて昨今の深刻な人手不足から企業の間では学生の「青田買い」傾向が強まっているという。

参加で最重要視するのは「プログラムが魅力的かどうか」

また、学生がインターンする企業を選ぶ際に重視する軸を調査した。サマーインターン、ウインターインターンそれぞれのエントリー時に最も重視した基準を選択して回答する形式だ。

選択項目は以下の11項目である。

この結果、サマーインターンが「プログラムが魅力的かどうか」(上位校32.7%、それ以外34.9%)、ウインターインターンも「プログラムが魅力的かどうか」(上位校24.74%、それ以外32.61%)と両方でトップとなった。

実際にインターンに参加した後の学生の声の中には、以下のようなものがあったという。

『業務体感ワークに加えて、自己分析ワークがあり、就活の参考になったし、学生のことを考えてくれているのだなと思い、好印象をもった。』

『プログラムの内容も、少人数にこだわって質の高いフォローをしてくれたのがよかった。限られた時間かつ必要最低限の時間の中でやらせるスタイルがいいと思った。』

これらにより、インターン参加前後でプログラム内容への関心の高さがうかがえるとしている。

またウインターインターンでは「選考へ直結する可能性」が2番目に選択されていたという(サマーインターンでは3番目)。

ウインターインターンきっかけで内定承諾をした学生の割合が高かったように、ウインターインターンでは学生も企業も、選考への意識が高まる傾向があることがわかったという。

この時期では、ほとんど卒業、就職が目の前にあるだけに、両者とも具体的な選考について取り組むことになるからだろう。

拡大するインターン。新形態の派遣就業サービスも登場

ここでインターンの現状を見てみたい。2016年に文部科学省が設置した「インターンシップの推進等に関する調査研究協力者会議」によると、インターンシップ(単位認定を行うもので、特定の資格取得に関係しないもの)の実施大学数や参加学生数は、1997年以降増加傾向にあるという。1997年には107校だった実施校数は2014年には566校に、実施率は18.3%から72.9%まで約5.3倍に拡大している。

また、2016年度は、学生の参加率は30.5%、企業などの実施率は55.6%、大学などの実施率は58.9%となっている。

このようにインターンシップは拡大傾向にあるが、これに対応する新しいサービスも登場している。

総合人材サービスのパーソルグループで人材派遣・アウトソーシング事業を手掛けるパーソルテンプスタッフ株式会社が展開している派遣就業サービス「はたまな」は、「はたらく×まなぶ」をコンセプトに、就職活動前の学生(大学生・短大生・専門学生)を対象にした実践的な就業体験を積むことができる派遣就業サービスである。

パーソルテンプスタッフの派遣スタッフとして登録した学生に対し、志向性や勤務条件に応じた仕事を紹介。学生は派遣先企業の指示のもと、実際の職場でより実践的な仕事を体験することができる。

就業前には専門コンサルタントがビジネスマナーや業界・職種を理解するための研修を実施。また、就業中のフォローや就業後の評価など、派遣サービスのノウハウを生かし学生の就職活動を支援するのが狙いだ。

ここで提供されるインターンシップは、従来のインターンシップとは異なり、学生側には「仕事への取組み姿勢や適性に対する客観的な評価」、企業側には「仕事への取組み姿勢や適性に対する客観的な評価」というお互いにとってメリットがあるものになっているという。

ミレニアル世代に向けた新しいインターシップの必要性

今回の調査の回答結果からも、ミレニアル世代の特徴がみて取れる。たとえば、インターンへの参加基準のトップだったのが「プログラムが魅力的かどうか」ということ。報酬や企業の知名度などではなく、自分にとって大切なものを優先するこの世代ならではの回答だ。

また、別の記事でふれたが、今後、複数の仕事・活動を掛け持ちするという新しい働き方「スラッシュキャリア」が拡がってくると思われる。

このため、企業はミレニアル世代の考え方をきちんと把握した上で、「スラッシュキャリア」などの新しい働き方についての自社の方向性をはっきりとさせたインターンの実施が求められる。

img:PR TIMES

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