Facebookの“ダイバーシティー政策”の成果と取り組み。日本のダイバーシティー進行の参考となるか

性別・国籍・障害の有無などを問わず多様な人材を採用し活かすダイバーシティの考え方が、日本の企業で重視されるようになっている。

少子高齢化による人材不足を補うため、はたまた個性豊かで優秀な人材を集めるためなど、そのメリットはさまざまに考えられるが、実際には十分に進んでいないのが実情だ。

世界では、ダイバーシティの取り組みがどの程度すすんでいるものだろうか。

Facebookに勤める女性の割合は31%から36%へ増加

世界で22億人のユーザー数を抱える超巨大SNS「Facebook」では、2018年7月12日(米国時間)、自社のダイバーシティについての年間報告書を発表した。

Facebookでは、企業として成功するためにダイバーシティに関連する取り組みを重視している。Facebookはさまざまな性質・価値観をもったユーザーが利用し、友人とつながっているため、そのようなユーザーのニーズに応えるためには、ダイバーシティの対策により社内も多様性に満ちた環境をつくることが必要、というのがFacebookの考え方だ。

そして対策の結果、まずFacebookに在籍する女性従業員の割合が、2014年からこれまでで31%から36%に増加したとのことだ。その詳細は以下の通り。

過去5年で、Facebookの女性従業員の数は全体で5倍以上となり、特にテクニカル分野では、女性の割合が7倍以上に増えたとのこと。

象徴的なのは、アメリカの大学において、コンピューターサイエンスを専攻する女性は18%のまま増えていないのに対し、Facebookがソフトウェアエンジニアリングの部門において新たに採用した大学卒の女性は、全体の16%から30%に倍増している点だ。

アフリカ系、ヒスパニック系ともに従業員の割合は増加

人種に関しても、以下の通りダイバーシティ対策が進んでいる。

一方でテクニカル分野やシニアリーダー層でのこれら人種採用の取り組みは以下の通り。今後さらなる改善を必要としているとのこと。

多様性を前提とした候補者選びが成功

Facebookでは、人材採用の際にあらかじめ多様性を考慮した候補者選びを行うとともに、多様性をさらに広げる方法(diversity slate approach)を採用し、効果を上げているとのことだ。

これによって、採用担当者は採用責任者に対して、女性やマイノリティーの候補を提案しやすくなる。

また採用の担当者全員に、より多様性がある候補者を採用しようとする傾向ができあがったとのことだ。この方法は2015年から開始し、女性・マイノリティー層の採用率安定化にも効果をあげているようだ。

加えて多様性を生かした環境づくりが、人材維持のために役立っている。例として専門的な能力を開発するためのFacebookリソースグループの運営などに投資を行っているという。また偏見をなくすための各種プログラムが社内で好評とのことだ。

ダイバーシティをすすめるために、学生が実践的なトレーニングを積める機会を創出することが必要

Facebookでは、ダイバーシティをすすめ幅広い人材を採用するにあたり、大学をはじめとした教育機関へ赴くだけでは不十分と語っている。学生がそれまでの学びを活かせる実践的なトレーニングが行える機会を提供する必要があるということだ。

たとえばアフリカ系・ヒスパニック系の学生が多い大学をはじめとして、Crush Your Coding Interview、Facebook University Training Programのようなプログラムを展開し、実際に採用につながっているという。

性別や人種以外でもダイバーシティが進む

性別・人種以外の点でも、Facebookはダイバーシティ対策をすすめている。たとえばLGBQA+(レズビアンやゲイなど)やトランスジェンダーを自認するアメリカ国内での従業員の割合は、最近の1年で7%から8%に増加。また障がい者の人材の採用・活用にも積極的に取り組み、「2018 Best Places to Work for Disability Inclusion」(2018年度障がい者インクルージョンのための最高の職場)にもえらばれている。

世界的に有名な巨大企業「Facebook」では、紹介したようにダイバーシティの取り組みにおいて大きな成果をあげている。多様性を前提とした人材採用を行ったり、偏見をなくすためのプログラムを実施したりなど、日本の企業でも参考になる点は多いだろう。

他国でのこうした取り組みや成果を見極め、日本でのダイバーシティの向上へと寄与させたいところだ。

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