「働きがい」は売上高に直結。従業員の意識にみる真の働き方改革とは

「働き方改革」が進められるなか、これまでになく「働きがい」というもの」が重要視されてきている。かつての高度成長期のように、何も考えずにがむしゃらに働くことが美徳とされた時代は終わった。

では、実際、現在の従業員は「働きがい」をどう感じているのだろうか。株式会社日経リサーチは、従業員の「働きがい」をバロメーターとして、組織の今の“健康状態”を診断する従業員調査をリニューアルし、「働き方改革」の取り組みをサポートする「組織活性化診断プログラム~働き方改革をサポート~」を発表した。

リニューアルの最大の目玉は、長時間労働、ワークライフバランス、ダイバーシティ、サービス残業、職場の生産性など働き方改革に関するテーマを網羅した診断フレームを用意したこと。

今回は約7万人分のビジネスパーソンのデータの中から、民間企業に勤務する(パート、アルバイトを除く)20~64歳の約5万人分を対象にした分析結果の一部を紹介しよう。

従業員の働きがいを高めることが自社の売上増加につながる

まず、上の図を見て欲しい。これは、「自分にとって働きがいのある会社である」、「お客さまは自社の製品やサービスに満足している」という二つの感じ方について、それによって勤務先の売上が増えているが、減っているかを聞いたものだ。

これをみると、この二つの働きがいを感じているビジネスパーソンはそうでないビジネスパーソンに比べて、勤め先で売上高が増えているとの回答が10ポイント以上多かった。

この結果について、同社は働きがいを高めることが、より良い自社の製品やサービスの提供につながり、結果的に成果につながっていると分析している。

次に、前述の「自分にとって働きがいのある会社」と感じているビジネスパーソンに「自分の仕事の目的や役割が明確になっている」か、あるいは「自分は、自分に課された仕事の目標を達成したいと強く思っている」かを聞いた。

その結果、「自分にとって働きがいのある会社である」と感じているビジネスパーソンはそうでないビジネスパーソンに比べて、「自分の仕事の目的や役割が明確になっている」「自分は、自分に課された仕事の目標を達成したいと強く思っている」と感じている割合が高かかった。

この結果から、目的や役割の明確化と目標達成意欲の高さが「働きがい」に密接に関係していることがうかがえると同社はみている。


上の二つの図は、残業時間について、「職場ではサービス残業せざるを得ないと思う人」と「自分の仕事はうまくいかないのではないかと不安になることが多いと思う人」という二つのネガティブな回答結果をそれぞれの残業時間ごとにその割合をグラフにしたものだ。

これをみると、残業時間が増えるにつれ「職場では、サービス残業をせざるを得ない」という回答が増えており申告された残業時間以上に残業している実態あることがわかる。

また、残業時間が増えるにつれ「自分の仕事はうまくいかないのではないかと不安になることが多い」という回答が増えており、残業時間の問題が不安につながる側面もあることもわかる。

このように、「働きがい」の向上だけなく、同時に残業時間などのケアも欠かせないようだ。同社では、働き方改革が盛んに議論されているが、モチベーションの向上を残業等の負荷も含めて総合的に取り組む難しさが改めて浮き彫りになっていると分析している。

働きやすさ1位のApple Japanの改革成果とは

働きがいの向上には、目的や役割の明確化、または残業時間のケアも欠かせないことがわかったが、このような改革を成功させている企業がある。それはApple Japan合同会社だ。

同社は、就職・転職のための企業リサーチサイト「Vorkers」を運営する株式会社ヴォーカーズが発表した「2017年 働き方改革成功企業ランキング」で、1位になっており、在宅勤務によるカスタマーサポート、通称AHA(At Home Advisor)社員も増えているという。

では、同社の従業員は実際どう感じているのか。以下で、Vorkersに投稿された同社社員のクチコミを紹介しよう。

21時にPCがシャットダウンする仕組みになり、昔に比べると業務改善されている。」(営業、女性、ネオキャリア)

「ワークライフバランス促進は経営陣から末端まで浸透していると思う。」(営業、男性、豊田通商)

「ここ1、2年でサービス残業、過残業に対する全社的な監視が行われ、プライベートな時間を確保しやすくなっている。」(SE、男性、日本ユニシス)

「21時以降はパソコンを使用することが出来ないので、ワークライフバランスは取れる。」(主査、男性、有限責任あずさ監査法人)

「今は19時20時にはほとんど退社しているホワイト企業になりました。」(プレイングマネジャー、女性、リクルートライフスタイル)

「水曜日ノー残業デー実施、毎日20時パソコン強制シャットダウン導入以降はやっとまともな会社になった感じ。プライベートな時間もしっかり確保できる。」(企画、男性、クラブツーリズム)

これからの働き方について従業員のメリットを考えつつ、まずは実行するという方針が見て取れる。同調査を参考として自社にどんな働き方改革を当てはめればいいのかを考えてみるのもいいだろう。

「働きがい」がカギを握る真の「働き方改革」

冒頭でも述べたが、「働き方改革」が声高に叫ばれてはいるが、あまり浸透していないのが実情だ。

今回の調査でわかったように、「仕事へのやりがいとワークライフバランス」は非常に重要だ。今後企業は、これまでのように旧来の考え方に固まった働き方を提供していては、やっていけなくなるだろう。真の「働き方改革」を浸透させるには「働きがい」や「ワークバランス」の向上を浸透させることが大切なのだ。

img: Nikkei

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