2009年にブロックチェーン技術を利用したビットコインが登場し、ここ数年で大きな話題となっている。仮想通貨の市場取引が盛り上がり、「億り人(おくりびと)」という言葉が流行した。コインチェック事件も記憶に新しい。
Webとアプリを通じて取引する仮想通貨は、デジタルネイティブであるミレニアル世代と相性がよさそうにみえる。ミレニアル世代における仮想通貨の保有状況や期待感はどうなっているのか。
現在のミレニアル世代と仮想通貨の実情について、調査が行われた。
ミレニアル世代の「仮想通貨」保有状況
TesTee Lab!は、「仮想通貨に関する調査」の結果を発表している。「TesTee Lab!」は、若年層(10代、20代)を調査するアンケートメディアだ。
調査対象は、20代の男女2,905人(男性1,041人、女性1,864人)。
調査ではまず、仮想通貨の認知度を調べている。「仮想通貨を知っていますか?」との問いには、20代男性で53.6%、20代女性で38.8%が「知っている」と回答した。「聞いたことはあるが詳しくは知らない」を含めると、20代男女の約8割が「仮想通貨」という言葉を知っている、もしくは聞いたことがある、ということになる。
気になるのが保有率だ。「仮想通貨を保有していますか?」との質問に対しては、20代男性で15.7%、20代女性で9.3%が、「保有している」と答えた。「保有したいが方法がわからない」と答えた人も、20代男性で16.5%、20代女性で9.0%いる。
ビットコインが登場したのは2009年だが、ミレニアル世代はいつ頃から仮想通貨を保有しているのだろうか。保有者を対象に「いつ頃から保有していますか?」と聞いたところ、「2017年」との回答が、20代男性で38.6%、20代女性で37.3%で最多となった。
「2015年以前」と回答したのは、20代男性の30.7%、20代女性の35.8%。すでに3年以上保有していることになる。また、ほぼ半数は、去年から今年にかけて保有するようになっている。
その仮想通貨を支える技術である「ブロックチェーン」。ミレニアル世代は、この新技術がどの分野で発展すると考えているのだろうか。
保有者を対象に、「“ブロックチェーン技術”は今後どの分野で躍進していくと思いますか?」と聞いたところ、20代の男女ともに「銀行・資産運用」が第1位となった。2位が「決済・通貨・送金」、3位「EC(ネット上の商取引)」となり、「Fintech(フィンテック)」への期待が高いのがわかる。
調査では、仮想通貨を「知っている」もしくは「聞いたことがある」と回答した人に対して、「仮想通貨は決済方法として日本でも広まるか?」についても聞いている。ミレニアル世代の意見が、今後を占うかもしれない。
「広まると思う」と回答した人は20代男性で45.3%、20代女性で36.2%だった。逆に、「広まると思わない」と回答した人は20代男性で54.7%、20代女性で63.8%となった。
「広まると思う」理由としては、
- 「ネット取引が増え万国共通の貨幣決済が必要」
- 「観光客へ向けた決済方法として便利」
- 「電子端末で全てを賄える時代だから」
という声が挙がった。
「広まると思わない」理由して、
- 「マイナスイメージが強く信用度が低い」
- 「法整備(インフラ)が追いついていない」
- 「高齢者への浸透に時間がかかる」
といった意見が出ている。
認知度が高いミレニアル世代においても、仮想通貨による決済の一般化については、半信半疑のようだ。それでも、仮想通貨を用いた決済に取り組む企業は、次々に登場している。その状況をみてみよう。
※TesTee(テスティー)調べ:https://testee.co
仮想通貨を用いた決済に取り組む企業たち
ビットコインをはじめとする仮想通貨は、価格が激しい乱高下をみせるなど、投機の対象とみられることが多い。法定(フィアット)通貨を代替できるほどの実用性は、まだないと考えられている。
その一方で、国内では、ビックカメラでビットコイン決済が導入されるなど、一部の小売企業がポジティブな姿勢を見せている。これには、どういった理由があるのだろうか。
海外の例としては、ファーストフードチェーンのサブウェイを挙げることができる。2013年から、イノベーティブなフランチャイズが、実験的な試みとして、ビットコイン支払いの受け付けを開始した。
ロシアのバーガーキングでは、昨年、「WhopperCoin」と名付けられた独自のトークン(あるブロックチェーン上で発行される独自コイン)をローンチ予定と発表している。単なる支払手段としてではなく、ブランドが独自のトークンを発行し、ロイヤリティプログラムと組み合わせる、という形態だ。
カナダのケンタッキーフライドチキンは、今年1月、ビットコインでのみ購入可能なチキンバスケット、「The Bitcoin Bucket」を期間限定で販売した。ビットコインは価格が変動するため、Facebookのライブ配信機能を使って価格情報を発信したり、Twitter上で消費者とリアルタイムでやりとりをする、といった活動も行った。積極的なマーケティング施策として、各メディアで取り上げられている。
こうした企業・ブランドの動きには、彼らがターゲットとしている「ミレニアル世代」の意識や、仮想通貨を利用する層の「顧客単価」が関係している。
「ミレニアル世代」で仮想通貨への関心が高いのは、上の調査を見ればわかる。また、ビックカメラのビットコイン決済導入に関するITmediaのインタビューによれば、ビットコイン決済を選ぶ人の顧客単価は、その他の決済手段を利用する人に比べて2~3倍高いようだ。
ミレニアル世代は、今後メインの消費者層となる。また、お金を持っているアーリーアダプター層を取り込むこともできる。こういった理由から、各企業は仮想通貨の導入を行っているといえるだろう。
ミレニアル世代が育てる仮想通貨の将来
調査からは、ミレニアル世代において、仮想通貨への認知度が高く、一定の割合で保有者が存在することも分かった。ブロックチェーン技術については、Fintech分野への応用を期待するが、決済手段としての一般化については、まだ議論の余地があると考えているようだ。
企業は、ミレニアル世代やアーリーアダプターへのマーケティング手段として、仮想通貨を利用していると考えられる。そうした試みが繰り返される中で、仮想通貨による決済が一般の利用へと広がっていくのかもしれない。
仮想通貨の将来は、ミレニアル世代が育てていくことになりそうだ。
img:TesTee