従来人間の感情を正確に測定するのは不可能であった。また、判断できるのも臨床心理士などの専門家のみであり、自分自身でメンタルケアを行っていたとしても効果があるのか、明確に判断を下すのが難しい状態である。

しかし、人工知能により人の感情を分析し、ビジネスに応用する動きが活発になっている。今回はそれらのサービスをご紹介したい。

感情を分析しその人に必要な広告を提供。最新の動画広告配信サービスが登場

動画広告を最適化したいという悩みはマーケティング担当ならば、誰しもが持っていることだろう。しかし、インターネット上の広告は技術が上がっていても中々視聴者の反応を直接分析できるものは少ない。

そのなかで、視聴者の感情を直接分析できる動画広告配信サービスが登場し、先行導入事例では利用意向が128%上昇するという高いパフォーマンスを発揮し、成果を上げている。

英国発のベンチャーRealEyes(リアルアイズ)社とグローバルで動画広告配信ソリューションを提供するGlassView(グラスビュー)社は視聴者の感情を元に動画広告を最適化する新サービス『GlassView Emotion(グラスビュー エモーション)』の提供を開始した。

この『GlassView Emotion』は、動画広告を見ている視聴者の微細な顔の表情を人間の基本感情と言われている、“喜び”、“驚き”、“混乱”、“悲しみ”、“嫌悪”、“恐れ”に分類し、リアルタイムに反応を確認することが可能。

これにより、視聴者が広告に対してどんな反応をしているか、また広告に対する反応率など、以前ではアンケートでしか判断できなかったものを定量的に確認することができるため、ターゲティングの最適化や広告予算の分配などの指標になる。

すでに他国では先行して導入されており、LGエレクトロニクス社は米国での認知向上を目的に動画キャンペーンを4カ国で配信。結果キャンペーン利用意向が128%上昇する高いパフォーマンスを得る結果となった。

その他の活用事例では以下のようなものが、挙げられている。

  • 動画広告に対する受容セグメント(地域別、性別、年齢別)の発見や、ターゲティングの最適化
  • 動画広告クリエイティブのA/Bテスト。1-10の点数で評価
  • 感情の変化を1秒ごとに追跡可能なため、どの部分が効果的でどの部分に改善の余地があるのか、クリエイターとのコミュニケーションツールとして活用
  • 多種多様な業界や国の動画広告のノルムと比較し、ベンチマークする

また 「The Facial Action Coding System(フェイシャル・アクション・コーディング システム:FACS)」というアプリケーションがWebカメラに写された視聴者の表情を読み取り、人間の感情の可視化を可能にした。

  1. Webカメラ、または、携帯電話カメラへのアクセスを許可した視聴者の顔を認識
  2. 動画視聴などの外部刺激を受けたとき,表情筋が動き,顔面の動きとなり表情表出することを利用し、44の動作単位を要素に顔面動作をデータに変換
  3. 顔認識技術により計測された一つ一つの微細な顔面動作を、基本的な感情指標である、喜び、驚き、混乱、悲しみ、嫌悪、恐れに分類

音声感情解析AIが「アスリートのメンタル状態」を可視化。課題だったアスリートのメンタルケアが実現に

近年、AIを始めとした技術の発展でフィジカル面の測定は、以前と比べてかなり容易になったと言えるだろう。しかし、メンタル面の数値化・可視化に関しては非常に困難であり、難航していた。

その中で、音声感情解析AI「Empath」を提供する株式会社Empathとトップアスリート向けに体調・トレーニング管理クラウド「ONE TAP SPORTS」を開発・展開する株式会社ユーフォリアが業務提携を行いアスリートのメンタル管理に乗り出した。

アスリートは、大事な試合で万全のコンディションになるようにフィジカル面は様々なデバイス等により、数値化され管理体制ができあがっている。しかし、メンタル面は表面に現れにくく、把握することが困難な上にパフォーマンスに直接影響するものだ。

これらの課題に音声感情解析AI「Empath」を利用することで、これまで把握困難であったメンタル状態の可視化およびデータ化を進めて行く。

また「Empath」は、被災地でのメンタルケアにも活用されたことやストレスチェック義務化対応アプリ「じぶん予報」を展開するなど、メンタルヘルス分野で多くの実績を有している。

AIが人間の感情を分析した先にもたらすもの

AIの進化により、以前までは正確な測定が難しく、専門家による診断が必要不可欠であった人間の感情分析が可能になりつつある。今まで定性的だった測定を定量的に可視化することができれば、作業はより効率化するだろう。

また、メンタルヘルス分野でも感情を定量的に測定できることは、うつ病への早期発見などの問題解消にも役立つ。発見から解決まで時間がかかる上に明確な基準が患者にはわからないことが多いこともあり、これらのサービスは多岐にわたり活躍することだろう。

動画広告もユーザーにとって最適な広告をマッチング可能になれば、収益の大幅な増加も見込めるはずだ。仕事の最適化が我々にもたらすものは大きい。

img:PR TIMES