Web上に乱立しているキュレーションサイトでは、コンテンツの無断使用が頻繁に起こっている。このため、Web上のコンテンツに対する法的処置の整備が進められており、コンテンツを所有しない個人のキュレーションによる収益獲得のハードルは上がっている。

今回、「メディアのシェアリング・エコノミー」という新しい概念で個人の収益獲得をサポートしようというサービスが登場した。ノアドット株式会社は、運営するサービス「nor.」の利用を個人ユーザーに開放したことにより、メディア事業を営む法人だけでなく個人であっても記事を合法的にキュレートでき、発生した広告収益の一部を受け取ることが可能になる。

180以上のコンテンツからキュレーションが自由に作成可能

「nor.」は、記事を作る「コンテンツホルダー」と記事を選んで届ける「キュレーター」を効果的につなぐことで「メディアのシェアリング・エコノミー」を実現する新しいコンセプトのコンテンツ共有プラットフォームだ。ヤフー出身のノアドット 最高執行責任者 中瀨竜太郎氏によると、「新しいコンテンツ流通の枠組みを創っていく必要がある。その土台となるのがnor.だ」という。

<参照元>
メディア業界の未来を拓く「シェアリング・エコノミー」 :ノアドット 最高執行責任者 中瀨竜太郎氏 DIGIDAY

その仕組みは、メディアの機能をコンテンツを「作る」ことと、作られたコンテンツを選んで「届ける」ことの二つに分解する。そして、それぞれを担う「コンテンツホルダー」と「キュレーター」とが出会い、コンテンツとチャネルをお互い自由に組み合わせられる機能をCMSやAPIで提供する。

コンテンツホルダーがthis.kiji.isドメインから配信するページに掲載された広告で発生した収益は、コンテンツを作ったコンテンツホルダー61.8%と届けたキュレーター38.2%という分割比率で分配する。

作業は以下のような流れになる。

  1. コンテンツホルダーは、コンテンツを作成してnor.に保管。
  2. キュレーターは、届けたいコンテンツをnor.から探し、その見出しを取得。「見出し」は「記事のタイトル」「メイン画像1枚」「記事の本文冒頭100字」を指す。
  3. キュレーターは、取得したコンテンツの見出しを、自身のウェブサイト/アプリ/SNSから読者に配信。
  4. 読者が見出しをタップすると当該コンテンツのHTMLページがnor.で生成され、this.kiji.is というドメインのウェブサーバーから読者に配信される。
  5. 読者のコンテンツ閲覧に伴って発生した広告収益を、コンテンツを「作った」コンテンツホルダーと「届けた」キュレーターとで分け合う。

そして、一般社団法人共同通信社とその加盟紙(地方新聞社など)40媒体を含む計180媒体以上が、コンテンツホルダーとしてnor.のデータストレージに記事を保管し、それらの配信を互いに担っている。たとえば、新聞社によるエンタメ媒体記事のキュレーション、スポーツアプリによる新聞記事のキュレーションなどが活発に行われているのだ。

今回の個人ユーザーへのサービス開放により、誰もが独自のコンテクストでnor.内から記事を選び取り、SNSアカウントやブログ、ウェブサイトやアプリから読者に届けられるようになる。コンテンツホルダーによる記事の利用許諾がすでに与えられた状態で安心して利用でき、さらに記事を新たな切り口で流通させた貢献に対してコンテンツホルダーからの収益分配まで得られるという。

コンテンツホルダーのブランド力で読者にアピール

今回の「nor.」の個人ユーザーへの開放によって、混迷を呈しているといえるキュレーションは大きく変わるだろう。

中瀨氏によると、この最大のメリットは「コンテンツホルダーのブランド力」だという。これは、記事ページのヘッダーはすべてコンテンツホルダーのブランドのみになっているため、コンテンツホルダーのブランド力で読者にアピールできるというわけだ。

今後は、個人コンテンツホルダーへの開放も行い、ブロックチェーン技術を用いた価値の蓄積および信用にもとづく広告以外での収益分配も行っていく予定だという。

img:PR TIMES