世界的に電子決済が推進されている中、国内でも「キャッシュレス・ビジョン」が掲げられ、いよいよキャッシュレス化社会実現に向けて各所取り組みが開始された。

東京オリンピックなどの国際行事にむけての取り組みでもあるが、現時点で生活者は現金とキャッシュレスでの決済はどのように使い分けているのだろうか。

様々な調査から依然として現金払いが多いものの、キャッシュレス化社会実現に向けて新しいサービスも登場し始めている。

キャッシュレス化の現状は現金派が依然優勢。20代・30代は半数が現金払い

昨今は国家主導で、現金払いよりもユーザーにとって手間の少ないキャッシュレス化にしようとする事業が進められている。しかし、ユーザーの使用状況はキャッシュレス化に近づいているのだろうか。

株式会社日経リサーチは生活者の金融に関する意識や行動の実態を把握し、金融総合定点調査「金融RADAR」の2018年版をリリースした。

その結果によれば、現金払いとクレジットカード払いの使い分けが進んでおり、スーパーやコンビニ、美容室、飲食店などの頻繁に買い物を行う場所では、いまだ現金払いが多い。

また、家電量販店、ディスカウントストア、ショッピングセンター、その他専門店など、1回あたりの購入金額が大きくなる店舗では、キャッシュレス化は進んでいる結果となった。

年齢別で見てみると20代・30代は現金払いが圧倒的に多く、特に美容室の場合はクレジットカード派に現金派が20ポイント以上の差をつける形となった。一方で、電子マネーは着実に浸透しており、コンビニでの使用頻度は33%程度で40代・50代を中心に広がりを見せている。

全体では20代・30代女性は現金派の方が多く、スーパーや飲食店などでの支払いは50%を超える結果となった。

スマホ決済プラットフォーム「ポケットチェンジ PAY」の登場でおつりの煩わしさから解放か

日本でのキャッシュレス化進行はしつつもあまり浸透していないと考えられることが、前述の調査から明らかになっている。現段階では、キャッシュレス化に一気に舵を切ることは難しいだろう。その中でキャッシュレス化社会の実現に向け可動予定のサービスを紹介しよう。

株式会社ポケットチェンジは、2018年夏より小銭を1つのチャージ手段とした、小売店舗・施設・自治体などが、独自にオリジナル電子マネーを発行でき、スマホで決済可能なプラットフォーム「ポケットチェンジPAY」を発表した。

このサービスは手数料や導入費用が無料であり、以前は高額な導入費用がかかったりの手数料が発生している割に現金派のユーザーが多いため、キャッシュレスにメリットを感じることができなかった飲食店や施設利用など、現金使用のところに導入してもらうのが狙いだ。

「ポケットチェンジPAY」は、ユーザーが小売店や飲食店などが発行した独自マネーをユーザーのスマートフォンにチャージし、使用することが可能。またユーザーは小銭やおつりをこれらの独自マネーに交換することもできる。

以前までは財布に貯まり、重くなる一方であった小銭も1円単位でチャージして使用可能だ。また、飲食店などで専用デバイスを用いれば、ユーザーはレジに向かわずともその場で会計が可能になる。

「ポケットチェンジPAY」を上手に活用できればキャッシュレス化が実現し、スマートフォン1台で決済が可能になる。おつりで財布に小銭が増えていく煩わしさや、現金を下ろす手間もかからなくなると期待される。

キャッシュレス化社会の実現は、日本でも着実に進行しつつある。しかし、世界と比べると遅れていると言えるだろう。野村総合研究所の調査では、キャッシュレスの普及率は韓国が96.4%、英国が68.7%、オーストラリアが57.1%と続き、日本は19.8%と諸外国の3分の1以下だ。

このような状況を打破すべく、福岡市ではLINE株式会社と合同でキャッシュレス化プロジェクトを行うなど、キャッシュレス社会への取り組みが日本でもさまざま行われ始めている。

日本におけるキャッシュレス化社会の展望

日本におけるキャッシュレス化は、まだまだ発展途上といえるだろう。これからさらなるサービスが登場し、キャッシュレス化の勢いは増加すると予測されるが、現在現金払いをしているユーザーはキャッシュレス化を望んでいない人も多い。

博報堂生活総合研究所の調査では、男性が41.3%、女性が61.5%の方がキャッシュレス化に反対している。どうやら「お金を使いすぎてしまう」ことや「メリットを感じない」という人が多くいるようだ。

また独自マネーと現状の電子マネー、クレジットカード、今後登場する可能性が高い独自規格など、決済手段がさらに増える場合は、ユーザーによってはキャッシュレスから現金払いに戻る可能性も考えられる。

これらの項目から日本におけるキャッシュレス化は、まだ発展途上段階であり、今後はユーザー、店舗側双方の意識を変えつつキャッシュレス化を目指す必要があるだろう。

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