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人生100年時代となり、人々が働く期間は今よりも長くなる。一方で、技術革新のトレンドは高速で移り変わり、一度身につけた技術が時代遅れになるのも早くなった。
こうした時代の変化に対応する「働き方改革」として、「リカレント教育」の重要性が注目されている。大人になってからも就労だけでなく、何度も学び直しを行い、変化に対応する。
ただ現状、リカレント教育の実行にあたっては、資金や時間の問題に直面する人も多い。そんな中、企業研修の一環としてリカレント教育を導入するためのサービスが登場した。
体験型のリカレント教育を「仕事旅行」で実現
2018年7月12日、株式会社仕事旅行社は、「仕事旅行の自由研修」のリリースを発表した。
仕事旅行社は、2011年から、大人向けの1日仕事体験ツアー「仕事旅行」を提供していた。仕事旅行は、学びのサービスだ。さまざまな仕事のプロフェッショナルを訪問し、仕事観を聞き、その一部を体験する。これまで2万人を超える社会人が個人として参加している。
働き方改革の本格化に伴い、「仕事旅行」が法人研修や福利厚生のメニューとして導入されるケーズが増えた。そのため、新たに法人向けサービス「仕事旅行の自由研修」をローンチすることとなった。
これまで企業は、残業時間の削減や、働く場所の自由化、雇用体系の流動化といった働き方改革を進めてきた。しかし、リカレント教育については、具体的にどう進めていいかわからないという声が多い。
従来の座学型、あるいはOJTタイプの教育訓練以外の「大人の学び(リカレント教育)」として、「仕事旅行」に関心を持つ企業が増えている。
「仕事旅行の自由研修」では、第一線のプロフェッショナルの仕事を「楽しさ」と「学び」のバランスを考慮して体験する。仕事体験は150種類の中から、社員が目的や興味に合わせて、主体的に選択できる。仕事体験は1日完結なので、休暇や仕事のアフターを利用して気軽に参加可能だ。
導入担当者からは以下のような声があがっている。
- 「普段は接する機会のない経営者や職人の方々と交流することで、仕事に対するエンゲージメントの高まりを感じた」(IT)
- 「専門以外の仕事に触れることで視野がひろがり、お客様への伝え方が変わった」(福祉・介護)
- 「社員の提案が、机上の論から体験をモチベーションとしたものになった」(建築)
重要性が高まるリカレント教育。人々の意識は現状どうなっているのか。リカレント教育に対する意識調査が行われている。
リカレント教育に対する意識調査
2018年2月28日、人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社は、「リカレント教育」についてのアンケート結果を発表した。
アンケートは同社が運営する、ミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」上で行われた。対象は、サイトを利用している35歳以上のユーザー2,204名だ。
「リカレント教育を受けたいですか?」との問いには、90%が「今後リカレント教育を受けたい」と回答した。関心の高さがうかがえる。
「今後リカレント教育を受けたい」と回答した人に、「リカレント教育を受けたいと思ったきっかけ」を問うと、「今後の人生を有意義にするため」(67%)、同率で第2位「教養を深めるため」、「就職や転職のために必要性を感じたため」(51%)といった声が挙がった。生き方と職業、両面での必要性を感じているようだ。
「具体的にどんなことを学びたいですか?」については、第1位「英語などの語学力」(58%)、第2位「経営・ビジネスに必要な知識や能力」(57%)、第3位「専門的な資格の取得」(48%)という結果になっている。自分の価値を高めるとともに、転職も視野に入れている。
「リカレント教育を受ける上での課題」についての質問に対しては、第1位「学費や受講料の負担が大きい」(73%)、第2位「勤務時間が長くて十分な時間がない」(48%)、第3位「職を離れることによるキャリアの断絶が怖い」(24%)といった声が、上位を占めた。
90%がリカレント教育の必要性を感じる中、時間やお金・周囲の理解といった課題に直面しているのがわかる。
企業や社会が幅広いリカレント教育の機会を提供する
調査からは、個人がすでにリカレント教育の必要性を十分に感じており、専門分野やビジネスに活用できる知識を習得したいという意見が多かった。
一方、同サービスを導入した企業の意見を総評すると、「専門分野外の業務に携わることにより新たな価値観を得て、いい影響が出ている」とのことだった。
これから長期の就労が必要になることや、早い周期での社会の変化など、情報は多い。そういった中で専門分野だけに没頭するのではなく、リカレント教育を通して、異なる分野でインスピレーションを得てみるのもいいかもしれない。
とにかくリカレント教育の実践においては、個人も企業も、その方法を模索している段階のようだ。今回の「仕事旅行の自由研修」のように、企業が社員に対して、気軽に参加できる形で提供するのも一つのヒントとなるだろう。