お酒を飲む時には、どのような判断を私達はするのだろうか。“味”、“量”、“値段“もちろんこれらの指標はすべて重要だろう。
しかし、コストパフォーマンス(コスパ)という指標で選ぶ人も多いのではなかろうか。なるべく安価で酔えて満足できれば良いという考え方もあるかもしれない。
お酒を大量に摂取することは体に害だとされており、健康志向・コスパ志向がますます広がる中で、以前までのお酒の飲み方は時代に合わなくなってきている。
より簡単に酔うことができ、安価な高アルコール市場が現在のトレンドになりつつあり、急成長している。
第三のビールを缶チューハイが購入頻度で上回る
ビール大手5社の出荷量が依然減少傾向にある中で、飲みやすくて安価な高アルコールの缶チューハイが幅広く受け入れられ好調だ。
フィールド・クラウドソーシング事業を展開するソフトブレーン・フィールド株式会社が「缶チューハイに関するアンケート」を実施した。
その結果、購入頻度は缶チューハイ19.9%、ビール25.2%と、まだビールには及ばないものの、第三のビール(16.4%)や発泡酒(6.5%)を完全に追い抜き、2位となった。
好みの度数に関しても調査が行われ、「4~7度」が47.3%、「8~9度」が25.1%、「1~3度」が20.3%という結果になり、やはりまだ以前から発売されていた中程度のアルコール度数は人気なものの、高アルコールの商品も確実にそのシェアを拡大している。
飲酒歴別に見てみると、「1年未満」と回答した中での「8~9度」の高アルコール缶チューハイは平均よりも高い36.4%、「1~3年」は逆に「1~3度」の低アルコールが人気で、「3~10年以上」の場合は、「4~7度」が最も人気という結果になった。
高アルコール缶チューハイは、ストロング缶の人気上昇とCMでの認知効果もあいまって、飲酒歴の浅い層のトライアルとして選ばれているようだ。しかし、飲酒歴が長い層には以前から販売されていた缶チューハイが人気だが、確実に高アルコール缶チューハイも受け入れられつつある。
ビールも高アルコール市場に参戦。1缶あたりの満足感向上に向けて
コスパ良く飲みたいという声に着目したのは缶チューハイだけではなく、以前までは高アルコールとは無縁のビール市場も同様のようだ。
高アルコール市場は2013年から現在まで2ケタ成長と着実にシェアを伸ばしており、市場シェアは3,000億円を突破した。この高アルコール市場の定義は7%以上のお酒のことを指しており、この市場のことをRTD市場と現在は呼称している。
RTDはReady to drinkの略語で、「割ったり混ぜたりする必要がなく、栓をあけてすぐ飲めるアルコール飲料」のことをさす。缶チューハイなどをイメージしてもらうのがよいだろう。
RTD市場は続々と新商品の開発・発売が繰り返され、1缶でも酔えることや、満足度が高いことから徐々に人気を高めてきた。
その人気に注目し、ビールも高アルコールがトレンドになりつつある。以前まではビールのアルコール度数は4.5~5%程度で、高アルコールのビールはあまり発売されなかった。
しかしRTD市場の成長をうけ、消費者側も「1缶で酔って満足したい」・「5%では物足りない」などの要望が相次ぎ、高アルコールビールが登場する運びとなった。
現在のRTD市場の市場規模は3,000億円で、ビール市場は1.6兆円規模の市場規模があるが、そのほぼ全てがアルコール度数は7%以下と言われている。具体的なシェアでいえば高アルコールビールは1%程度しかない。つまり高アルコールビールは未だ手付かずの優良市場ともいえるだろう。
しかし、ただアルコールを高めただけではビールの“うまさ”は表現できない。ビールのうまさを残しつつ、高アルコールのニーズに答えるためにも各社がしのぎを削る商品開発競争が始まっている。
高アルコールビールはトレンドとなるか
高アルコール市場はこれからも間違いなく、伸び続けるだろう。CMでの認知効果もあり、お酒を飲んだことない方にも、飲みやすさと1缶で十分に酔える手軽さが受けて市場は拡大の一途をたどっている。
消費者が、以前よりも1缶での満足度にこだわるようになったコスパを重視している証拠ともいえる。より安価で酔えておいしいものを消費者は求めているのだ。
ビールにおいてもその流れは変わらない。ユーザーニーズを満たす高アルコールビールを開発した企業が、1%の市場を獲得・拡大させ、トレンドを拡大させる可能性を秘めているのかもしれない。
img:@Press