あらゆる分野の諸問題を解決に導く「テクノロジー」。インターネットによって情報伝達が高速化し、人工知能による業務効率化など、その恩恵は計り知れない。

そのテクノロジーは、深刻な状況にある国内の林業においても活躍が期待される。

国産間伐材を有効活用したノベルティグッズ製作・販売などを通し、日本の林野業界の活性を目指す“森の総合商社”フロンティアジャパン株式会社は、全国の木材・木材製品の売り手と買い手を直接つなぐマッチングサービス「KIBA.com(キバドットコム)」ウェブサイトを2018年1月にオープン。7月17日(火)より、本格的にサービスをスタートする。

「売り手」と「買い手」が直接コンタクトできるウェブサイト

FAO Global Forest Resources Assessment 2010」によると、日本の国土面積に占める森林率は世界第3位だという。しかし、戦後をピークに国産木材の需給量は減少の一途をたどっており、林野・木材産業は、衰退の危機を迎えている。

その背景には輸入材の台頭、住宅・生活スタイルの変化、人材不足などのさまざまな社会的要因があるが、同社が着目したのは 「情報不足」だという。

売り手である製材・加工業者が抱える悩みは

  • 「業界が閉鎖的」
  • 「自社が取り扱う商材以外の情報が少ない」
  • 「商流が長くユーザーニーズを把握しにくい」
  • 「コストや納期の希望の乖離」

などだ。

一方、買い手の工務店・家具メーカーは「特殊加工に応えたいが、対応してくれる製材会社とのパイプがない」、そもそも「欲しい材がどこにあるか分からない」などの悩みを抱えている。

この課題解決のため、同社の幅広いネットワークにより「売り手」と「買い手」が直接コンタクトできるウェブサイトを開設した。そのマッチングサービスが「KIBA.com(キバドットコム)」だ。

キバドットコムの特徴は以下の通り。 

  1. 製材会社・加工会社サーチ

    木材事業者の紹介ページより、希望にあった会社をサーチ。企業情報の他、納入実績や掲載製品なども随時更新される。
  2. 木材・木材製品サーチ

    製材会社や材木屋、加工会社が製品をサイトに直接掲載でき、定番品から長期在庫品・規格外品の情報も公開。国産を中心に輸入材も用意する。
  3. 企業取材コラム

    木材や業界ニーズに関する知識の豊富な当社スタッフが直接現場に出向き、取り扱い木材やセールスポイントを取材する。
  4. 納品後決済、未納品リスクをゼロに

    新規取引では前金が当たり前のため、「キバドットコム」では月末締の後払い決済を用意している。また複数の取引が発生しても請求は一本化される。

これまで日本では、森林に関する情報量が圧倒的に少なく、売り手と買い手のニーズの把握すら難しい状況にあった。「キバドットコム」では、発信ノウハウの乏しい林野産業の川上サイドにプライオリティを置き、製材会社の情報発信やプロモーション支援、製品企画などをサポートしていく。

それぞれの企業の強みや特徴を可視化することで、ユーザーはニーズにマッチした物選びが可能になり、企業は自らの価値を高める努力で、より経営が強固になるとしている。

林業再生を目指したICTの利活用おける政府の取り組み

林野庁が発表した「スマート林業の実現に向けた取組について」によると、「農林水産業・地域の活力創造プラン」として、ICTの利活用を徹底し、森林調査や施業計画立案の高度化、市場情報のサプライチェーンを通じた共有による作業効率や付加価値の抜本的向上などを促進するとしている。

これについては、下記の三つに段階に分けた、対応・取り組みが必要だとしている。

  1. 資源段階
  2. 生産段階
  3. 流通段階

1.については、森林整備や木材生産の効率化に不可欠な施業集約に向け、これまで紙ベースで管理されていた森林資源情報や地図情報をデジタル化し、森林GIS(地理情報システム)により一元的に管理(全都道府県で導入済)している。

また現地調査を省力化するとともに、森林所有者に対し、より分かりやすい施業提案等ができるよう航空レーザ計測、UAVなどによる詳細な森林情報(立木、地形情報)の把握に向けた取組を推進している。

これらの施策に加えて、森林資源や所有者などの情報を効率的かつ安全に共有し活用していくため、森林クラウドの導入に向けた共通のシステムを国が整備する。現在、これに基づいたクラウド化に向けた取組を推進中だという。

さらに、これら共有された情報をもとに、ICTなどの先端技術を活用した施業集約化の効率化・省力化などの実践的取組への支援を実施する。

これら取り組みの事例として、北信州森林組合のICTを活用した生産管理手法の導入と、岡山県真庭市のクラウドとUAV(無人航空機、現在ではドローンが一般的)を活用した森林資源の共有を挙げている。

2、3については、木材の生産・流通段階において、作業の効率化・安全性の向上等を図る機械の開発や、ICTを活用したサプライチェーンマネジメント(SCM)システムの構築、ICTを活用した需給マッチングに向けた研究開発などを推進中だという。

林業における情報不足を解消し活性化へ

フロンティアジャパン株式会社によると、日本の林業が衰退している大きな要因の一つに「情報不足」があるという。今回の「KIBA.com」はその情報不足を解消しようというものだ。

日本の国土面積に占める森林率は世界第3位。この豊かな資源をどう有意義に活かすか。「KIBA.com」が林業のスマート化の一助となり、活性化につながってほしいところだ。

img:Dream News