少子高齢化などによる人材不足や人件費高騰といった状況から、AIを用いた業務効率化を採用する企業が増えている。
その中でも世界的に注目を集めているのが、主にホワイトカラーの事務処理業務処理などをサポートするRPAだ。
今回、ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)とfreee株式会社(以下「freee」)といった日本の2つの大手企業がRPAロボットを共同開発し、協業を開始する意向を示した。
ソフトバンクとfreee、会計・人事・労務における煩雑な手作業から社員を解放するRPAロボットを共同開発
ソフトバンクとfreeeは、企業の会計や人事労務に関する煩雑な20の業務を自動化するRPAロボットを共同で開発した。
このRPAロボットの利用にあたり、新たなシステムを追加で開発する必要なしに、登録作業・他ツールとの連携などが自動化できるので、ユーザーの業務負担を大幅に軽減することが可能だ。
なお今回開発したRPAロボットは、あくまで連携の第1弾だ。ソフトバンク・freee両社は、ソフトバンクのRPAソリューション「SynchRoid(シンクロイド)」を使い、freeeの「クラウド会計ソフト freee」「人事労務 freee」用のRPAロボットを今後も開発する予定だ。これによってユーザーの業務負担を軽くし、生産性の向上に貢献する。
RPAが人間に代わって書類業務をはじめとした単純作業を実行
RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)を略した用語で、AI・機械学習・ルールエンジンといった認知技術を活用し、主にホワイトカラーが行う業務をソフトウェアロボットによって自動化するテクノロジーをさす。
RPAを利用する場合、ユーザーは処理の手順をシステムへ登録するだけでよい。あとはソフトウェアロボットが登録された内容に従い、入力や登録、検索、抽出、集計、さらにはデータチェックといった単純な事務作業、膨大な書類業務を社員に代わり自動的に処理してくれる。
RPAは業務効率化や迅速化、さらにはコスト削減に役立つことから、少子高齢化などによる人材不足などに直面する日本で、以前より注目されてきた。そんな中でソフトバンクでは、RPAソリューション「SynchRoid」を2017年10月から提供している。
一方freeeでは、同社が開発・提供するソフトウェア「クラウド会計ソフト freee」および「人事労務 freee」が、中小企業・個人事業主などスモールビジネス領域のユーザーを中心に、広く活用されている。
これらは業務フローが簡単で、経理や人事労務の現場で数々の業務効率化を推し進めてきた。しかし、データバックアップ、紙の入出力、人事管理ツールとの連携など、数多くの業務において未だに手作業が必要な状況だ。
そこでソフトバンクとfreeeは、これらバックオフィス業務にRPAロボットを役立てる世界の実現を目指し協業を開始する。IT化で企業の業務が劇的に効率的に変わったことは今更言うまでもないが、RPAがこの流れを加速度的に速める鍵となろうとしている。
産学連携により、業務工数を1/3に圧縮した事例も
RPAについては、産学連携により実績をあげた事例もある。株式会社 GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)は、首都大学東京の高間研究室による共同研究により、RPA活用で不動産業の業務改善に効果が見られたとのこと。
具体的にはAIの画像解析技術を用いた、不動産業界で初めてとなるマイソク自動読み取りなどのRPA実現により、物件の仕入れに関する業務工数を1/3まで削減することに成功した。
その他、AIの機械学習による物件レコメンドシステムによって、リノベーション業務の際の物件提案にかかる時間(中古不動産仕入れ業務のスピード)も最大55%まで短縮することにも成功している。
RPAは労働力不足にあえぐ日本企業を救う切り札となるか
ソフトバンク・freee共同によるRPAを用いた取組みは、ホワイトカラーが抱える数々の単純作業を代行し、業務効率化を実現するのに成功している。
また株式会社 GA technologiesと首都大学東京による産学連携の共同研究でも、RPAによって社員の業務を数多く代行できることが証明された。
今後、日本が少子高齢化などによる人材不足に悩むことになる未来は明らかで、現状回避できる見立てはなさそうだ。この問題を鮮やかに解決するソリューションが必要となるが、RPAがその有力な候補として手を挙げているのは間違いないだろう。
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