日本のビジネスパーソンは世界一“金銭面への不安”に労働時間を費やす。日本企業が生き残るための5つのトレンド

テクノロジーの恩恵を受け、今までになかったサービスが矢継ぎ早に創出されている。AIによる業務効率化や、モノを共有するシェアリングエコノミーがいい例だろう。あらゆる価値観が刷新され、常識が覆されていく現代で、企業に求められるトレンドはどのようなものなのだろうか。

マーサージャパン株式会社の「2018年グローバル人材動向調査 (Global Talent Trends Study)」では、グローバル人材動向のトレンドとして、「迅速な変化(Change@Speed)」、「目的意識の共有」、「永続的な柔軟性」、「人材プラットフォーム」、「デジタル化の徹底」5つを挙げている。

今回は、この調査をもとにグローバル人材動向のトレンドをみていこう。
 

92%の日本企業がイノベーションを今年の主要な経営課題に

この調査は、世界44カ国、27業種から7,600名の経営幹部、人事リーダー、従業員からの回答をベースとした洞察となっている。レポートは、未来の仕事や働き方の新たな推進要因を評価し、変革に関する重要な障害を特定し、2018年に成長を取り込むための提言を行っている。

それによると、92%の日本企業が“イノベーション”を今年の主要な経営課題とし、88%の日本企業が、組織の再設計を計画していると回答しているという。

同時に従業員の側は、より柔軟な労働形態の選択(38%)などによる、ワークライフバランスのコントロールを求めている。このような“変化する能力”が、競争の激しい世界の中で成功を収めるための重要な差別化要因となっており、企業組織の課題は、従業員をその変化の旅路に導くことにあるとしている。

特に日本では、従業員が組織に求めるトップの項目が“明確な方針を定めるリーダー”であることがわかったという。

組織に力を与える5つのトレンドとは

新たな技術を求めていく中で、経営幹部は自身の組織に力を与える「ヒューマン・オペレーティング・システム」に焦点を当てなくてはならないと提言している。そして、マーサーは、2018年の調査で、以下の5つのトレンドを挙げている。

  1. 迅速な変化(Change@Speed)

    企業が未来の働き方に対してどのような準備をするかは、どの程度の創造的破壊が予期されているかによるという。最大級の創造的破壊を予想している企業は、敏捷性を自らのビジネスモデルに取り込むことに努め、より広いネットワークを構築することに投資をしている。(日本企業の27%が、社内外をまたがるネットワーク・コミュニティを構築している)。個々人に組織としての力を与えることは、組織としての能力と対応力をより早く築く上で重要なものとなる。

    もっとも、日本の人事リーダーは、既存の社員の再教育(リスキリング)への取り組みも不十分だと感じており(うまくいっていると確信している人事リーダーはわずか25%)、また、外部からの人材獲得のための備えも不十分(同26%)だと感じているという。
  2. 目的意識の共有

    日本において、個人としても職業人としても充実感を感じている活気のある従業員の58%という半数以上が、自身の所属している企業は意義ある目的に対する強い意識を持っている、と回答しているという。

    また、仕事の意義に加えて、新たな価値判断として、健康と金銭的な豊かさという要素が入っている。日本の従業員は、平均して週に約14時間の労働時間を金銭面で抱えている心配事に費やしている。これは、世界的にみて最も高い数値である。

    しかし、従業員の金銭的な健全性対処する方針を持つ日本の企業は22%に過ぎない。企業は、公正な処遇とポジションへのサクッセッションプランについてトップの優先度を置いているが、自身が属する企業が報酬と昇進の意思決定において公平性を確保していると回答している従業員は18%に過ぎないとしている。
  3. 永続的な柔軟性

    個人は、自身のワークライフバランスをコントロールするために、仕事の仕方に対する自身の希望を口にするようになっているという。従業員はより柔軟な労働の選択肢を望んでおり、企業は、その声に耳を傾け始めている。

    日本では、経営層の65%は、柔軟な働き方を自社の価値提案の中心をなすものとみなしている(比較して、世界では80%である)。柔軟な働き方を実現するという点について、自社が業界のリーダー的な地位を占めているとみなしている人事は3%のみである。そして、従業員の半数以上(57%)は、柔軟な働き方を選択することが自身の昇進に与える影響を恐れているとしている。
  4. 人材プラットフォーム

    経営幹部の78%が人材獲得競争の激化を予期している中、企業は、自社の統合的な人材管理システムを進化させ、デジタル時代の人事モデルにアップデートする必要性を理解している。まさに今がその時であるという。

    2018年には、5社中2社が、より多くの人材を外部から“借用する”ことを計画している。しかし、日本の従業員は他国と比べて、一時雇用の機会が少ないと認識している。世界的には78%の人がフリーランスとして働くことを考えるのに比べ、日本の従業員では、たった半分の50%となっているとしている。
  5. デジタル化の徹底

    日本企業は、顧客に対して提供するレベルのIT環境を従業員に提供することについて遅れをとっているという。自社がデジタル化されているかという問いに、世界では、回答者の15%がその通りだと回答しているが、日本ではわずか2%だった。

    従業員の39%が成功のためには最先端のツールが重要であると回答している一方で、仕事に必要なデジタルツールを持っていると回答したのは24%であり、人事についてデジタルでのやり取りをしていると回答したのはたったの19%だった。

    ビジネスリーダーは、人事が将来進むべき道を設定する際の戦略パートナーとしての能力を持っていることを一定程度確認している。つまり、人事が人事戦略を事業戦略の優先事項と整合するように設定していると認識している経営幹部は47%となっているという。

早急なデジタル化とフリーランス的な雇用の推進を

今回のレポートの分析の5つの項目がすなわち、今の日本企業に足りない項目だととらえてもいいだろう。 なかでも気になるのは、「日本企業は、顧客に対して提供するレベルのIT環境を従業員に提供することについて遅れをとっている」という事実だ。自社がデジタル化されていると感じるのは、日本ではわずか2%しかない。

また、日本は他国に比べてフリーランス的な雇用が少ないこともわかった。いずれにしても、これらの課題を早急に徹底することが日本企業には求められる。

img:PR TIMES

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