誰と行く?お金は?“宿泊を伴う旅行”が増加に転じる調査結果、その理由とは

宿泊旅行に出かける人の数が、増え始めている。

1年間に宿泊旅行を行った人の割合を示す、宿泊旅行実施率は、2004年から2016年まで減少傾向だった。2016年には、期間中最低の数字となっていた。しかし、2017年度についての調査では、回復の兆しを見せている。

旅行に関する情報を、スマートフォンから容易に収集できるようになったことが要因として考えられる。さらに昨今では、「民泊」「後払い旅行サービス」の登場など、旅行への関心を集める話題も多い。

盛り上がりを見せ始めた旅行業界。最新のデータから、傾向を探ってみたい。

宿泊旅行実施率は55.6%。前年度より改善し、下げ止まる

2018年7月9日、じゃらんリサーチセンターは、「じゃらん宿泊旅行調査 2018」を発表した。じゃらんリサーチセンターは、株式会社リクルートライフスタイルの、観光に関する調査・研究、地域振興機関だ。

「じゃらん宿泊旅行調査 2018」は、観光などを目的とした、宿泊を伴う国内旅行実態を把握するために行われている。そのため、出張・帰省・修学旅行などは対象外だ。

全国1万5,627人の宿泊旅行者を対象に、国内宿泊旅行の行き先や回数、旅行費用などを調査した。今年で14回目となる。

2017年度に宿泊旅行を行った人の割合は55.6%と、2016年度の54.8%から持ち直している。過去13回の調査で見られた減少傾向のなか、下げ止まったかたちだ。年間平均旅行回数は2.78回、宿泊旅行1回あたりの平均宿泊数は1.76泊、と前年並みだった。

とくに、20~34歳の男性で、宿泊旅行実施率が51.7%から54.8%へ、3%以上改善しているのが目立つ。

宿泊旅行の総費用額は、7兆5,352億円と、前年度比で6.3%増加した。宿泊費、交通費ともに単価が上昇している。1回あたりの宿泊旅行費用は、平均で51,600円。前年度の49,300円から2,300円増加しており、ここには宿泊費・交通費・現地小遣いが含まれている。

都道府県別の延べ宿泊旅行者数は、東京が1位。2位が北海道、3位が大阪と続く。昨年と比較すると、大阪が5位から3位にランクを上げた。増加率でトップだったのが沖縄。前年比20.3%アップでランクも11位から9位へ上げ、トップ10入りを果たした。

本調査では、宿泊旅行における同行者についても調べている。家族、友人、夫婦、恋人、子連れ、職場、一人旅、といったカテゴリーに分けられている。もっとも割合が高いのは、「夫婦二人での旅行」で25.7%。次いで多いのが「一人旅」で17.2%だった。

旅行といえば「誰かと楽しみたい」と思う人は多いのではないだろうか。しかし一人旅のデータに着目すると「男性の一人旅」の増加傾向が顕著である。これには、どんな要因があるのだろうか。

増加傾向を見せる「男性の一人旅」

一般的に「旅行」というレジャーの実施には、「同行者」と「お金」の存在が大きな影響を与える。

旅行に行かない理由として最も多いのは「なんとなく」だが、旅行に行く理由として上位に入るのが「誘われたから」だ。誘ってくれるパートナーや配偶者などが少なくなると、旅行に行くきっかけを失う。

ここ数年の旅行実施率の減少は、シングル層が増え、誘われる機会が減ったことが要因と考えられる。

全体の旅行実施率が減少する中、増加傾向を見せていたのが「ひとり旅」。とくに「男性の一人旅」だ。シングル層の増加により、複数人で行くきっかけを逸した人が、ひとりで行くケースが増えている。複数人で行く人が減った分、一人旅へ移行しているということだ。

「ひとり旅」向けのコンテンツは、これからも需要が伸びそうだ。

また、「旅行」の実施に必要となる「お金」に関しても、注目したい動きがある。

旅行に行きたいときに、お金がないという場面がある。その問題を解決するサービスとして、「トラベルナウ(TRAVEL Now)」が登場した。過去に、即時買い取りサービスの「CASH」をリリースした株式会社バンクが、2018年6月28日から提供を開始している。

TRAVEL Nowは、手元に旅行代金がなくても旅行を可能にするサービス。10万円以内の旅行であれば、誰でも、ボタンひとつで、いま旅行に行ける。旅行代金は後払い、2ヶ月後の支払いでOKだ。

こうした、旅行の後払いサービスも、旅行実施率を上昇させる要因となっていくだろう。

“性善説”により創出される新たなビジネスモデル。あと払い可能な旅行代理店アプリ「トラベルナウ」が狙うは少額資金のニーズ

旅行の形態に影響を与える、社会やテクノロジーの変化

社会やテクノロジーの変化は、旅行の形態にも影響を与えているようだ。

シングルの増加は、複数人での旅行は減らしたが、一人旅の割合を増やした。これからも一人旅に対応したサービスが増えるかもしれない。

テクノロジーは、少額資金分野においてマス単位で事業を展開することを可能にした。リスクをコントロールし、旅行代金の後払いを実現する。今お金がなくても、行きたいタイミングで旅行に行ける。

これからは、時代の変化に合わせ、旅行に行くきっかけとなる新しいサービスが増えていくことになるのかもしれない。

img:NIKKEI

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