少子高齢化による人口労働の減少影響から、テクノロジーを用いた業務効率化が進んでいる。中でも処理フローを機械学習し、情報処理などの業務を代行するRPA((Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)に注目が集まっている。ニーズが高まっているが、専門知識を有した人材が不足しているのが現状である。
そんななか、RPA専門人材を育成・派遣する新サービスが登場した。総合人材サービスのパーソルグループで、人材派遣・アウトソーシング事業を手掛けるパーソルテンプスタッフ株式会社と、コンサルティングやシステム開発・運用を手掛けるパーソルプロセス&テクノロジー株式会社が連携し、RPA専門人材を育成・派遣する新サービス「RPAアソシエイツ」を開始する。
これにより、RPA専門人材の枯渇を解消し、さらなる企業の生産性向上を支援するという。
年間1,000人の育成・派遣を目指す
昨今、国内では少子高齢化にともなう労働力人口の減少が進み、パーソル総合研究所「労働市場の未来推計」によると、2025年には約583万人の労働力が不足すると予測されているという。
このような状況の中で、人が行う仕事の自動化が実現できるRPAへの注目が高まり、ITR Market Viewの「AI/RPA市場2017」によると、RPAの市場規模は2015年の2億円から2018年は44億円と3年間で22倍、さらに2021年には80億円以上まで継続的に拡大すると予測されている。
このようにRPAニーズが高まる一方で、専門知識や専門ツールの操作スキルを有した人材の不足により、多くの企業でRPAの導入が進まない、導入したものの活用できていないといったケースが増えており、今後さらに深刻化してくことが想定される。
同グループではこのような社会問題である労働力不足に対し、解消の一手としてRPAを重要な手段と位置づけ、早期から一丸となりソリューションの提供に取り組んできた。新サービスでは、RPAツールを操作したロボット開発や、メンテナンスまで対応できる専門人材を、年間1,000人育成・派遣することを目指す。
約1カ月間の研修でRPA専門人材を育成
具体的には、パーソルテンプスタッフに登録する派遣スタッフを対象に、RPA専門人材育成を目的とした約1カ月間(90時間)の集中研修を実施。修了したスタッフをクライアント企業へ派遣する。
同研修は、パーソルプロセス&テクノロジーが、これまで多くの「WinActor®」のスペシャリストを育成してきた実績と、多くのRPA導入支援を行ってきた知見やノウハウを盛り込んだ、オリジナルの人材育成プログラムだ。ロボット開発だけでなく、RPA導入後の課題であるメンテナンス対応についても学ぶため、トラブルや動作停止が起こった際の対応も可能となる。
また、専門のサポートセンターを設置し、就業後のサポートも行う。教育を受けたRPA専門人材が就業することで、RPAを活用できていない、RPAの適用業務を拡大したいなどの企業において、RPAの活用を促進しさらなる生産性向上が可能となる。
さらに、RPA専門人材の育成・派遣だけでなく、要望に応じて業務コンサルティングや業務フローの設計までを行い、クライアント企業のスムーズなRPA導入、定着を支援する。
人が判断するRPA、自動で判断するAI
ここで、AIとRPAの違いについてまとめてみたい。
この二つはよく似ている技術として扱われるが、実はその本質は大きく違う。
ある作業を自動化しようとした場合
- 人の手で処理フローを全て定義する
- 蓄積された内部データと照らし合わせることで都度システムが判断する
のいずれかで実行することとなる。
この際、前者の「人の手で処理フローを全て定義する」のがRPAで、後者の「蓄積された内部データと照らし合わせることで都度システムが判断する」のがAIという区別となる。
つまり、人間が判断するのがRPAで、システムが勝手に判断してくれるのがAIというわけだ。
<参照元>
拡大する国内RPA 市場。18年度は44億円、21年度には82億円へ
このRPAについて、独立系ITコンサルティング・調査会社である株式会社アイ・ティ・アール(ITR)が、国内のRPA市場規模推移および予測を発表している。
同社によると、RPAは、2010年代半ば以降、金融・保険業など一部の業種で採用が進んでいたが、近年、働き方改革に対する関心の高まりや参入ベンダーの拡大、IT知識の乏しい現場スタッフでも利用できるロボット開発環境の登場などにより、導入意欲は他業種でも急速に高まっているという。今後はAIシステムとの連携が進み、より高度な自動化が実現されることが見込まれるとしている。
2016年度の売上金額は8億円、前年度比4倍増と急速な伸びを示し、2017年度も同2.5倍増と引き続き高い伸びを予測している。
また、2018年度には2016年度の5倍強となる44億円、2021年度には同10倍強となる82億円と、今後も継続的な伸びが見込まれることから、CAGR(2016~2021年度)は59.3%を予測している。
個人での専門スキルが必要な時代へ
機械による業務効率化を図るサービスが次々と展開されているが、専門知識を有した人材が不足してしまえば、そのスピードは失われ、さらなるイノベーションも期待できない。
テクノロジーに仕事を奪われないためにも、テクノロジーをうまく利用するためにも、これからは個人でも専門スキルを身に付けていかなければならい時代になりそうだ。