ICT学習は本当に成績向上に貢献する?全国の4割以上の高校が導入する「Classi」の学習記録データを分析

ICTの教育への活用は、国をあげて推進されている。しかし幼少期よりICTによる教育環境が充実した先進国と比較すると、日本は学校にある端末数も足りておらず、遅れをとっている現状だ。

一方でプログラミング教育に注目が集まるなど、ICT教育への注目は年々高まっている。そんな中、ICTによる学習支援を行う企業によってICT学習に関する調査結果が提出された。

ICT教育によって成績向上が見込めるのか。国内最大規模のICT学習支援プラットフォームのデータを分析

Classi(クラッシー)株式会社は、同社提供の学習⽀援プラットフォーム「Classi」を利用する全国約170の高等学校(生徒数約2万人)の学習記録データと、高校生を対象とする総合学力テスト「進研模試」の統計データをもとに、ICTをどう使えば成績向上が見込めるかを検証した。

Classiは2014年提供開始から、全国にある高等学校の4割超(2,100校以上)が導入しており、利用する生徒数は80万人以上にものぼっている。

ICT教育用のデジタル学習コンテンツ利用が多いほど成績向上がみられる

今回の検証では、ICT教育用のデジタル学習コンテンツ利用が成績にどう影響するかについて分析された。結果、Classiが搭載するデジタル学習コンテンツ「WEBドリル」「学習動画」の利用が活発であるほど、成績が向上していることがわかった。

WEBドリルが「高活用」の学校では1年間で偏差値が2.80アップした一方、「低活用」の学校は1.45のダウンとなっている。また学習動画が高活用の学校が1年間で2.14の偏差値が上がったが、低活用の学校では0.65下がっていた。

これらの結果から、ICT教育用のデジタル学習コンテンツの活用が成績向上に役立っていることが分かる。

積極的にICTによるコミュニケーションを活用している学校ほど成績が向上

同調査では、ICTによるコミュニケーションが成績にどう影響するかも分析している。具体的には「メッセージ機能」の活用度合いが、成績向上度合にどう影響するかについて調査したものだ。

結果、メッセージ機能によって教師と生徒において活発にコミュニケーションをとっている学校ほど成績が向上していることがわかった。メッセージ機能について「高活用」の学校では1年間に偏差値が1.33アップしたのに対し、低活用の学校では0.73のダウンがみられた。さらに教師がより頻繁に生徒へメッセージを送っている学校の方が、WEBドリル・学習動画の利用率が高いこともわかっている。

ICTによるコミュニケーションの活用が、ICT教育を活発化し成績向上にも貢献しているようだ。

生徒が積極的にICTの学習記録をつけ、教師からのフィードバックが多いほど成績向上にプラス

さらに同調査では、生徒が主体的にICTに学習の記録を行っているか否かで、成績向上にどう影響するかも分析した。具体的には、「学習記録機能」を用い、生徒が学習進捗の記録をこまめに行う学校とそうでない学校とで成績向上にどんな差があるかを比較。

結果、学習記録機能について高活用群の学校の偏差値が1年で1.78アップしている一方、低活用群の学校では0.78下がっていた。このことから、積極的にICTの学習記録活用が成績向上に役立っていることが分かった。

また生徒の学習記録に対し教師がフィードバックを活発に行う学校の方が、成績が向上する傾向があることも確認されている。さらに学習記録に関する分析をすすめたところ、仮に教師のフィードバックが少なくても、生徒が積極的に学習記録をつける学校の方が、成績の伸び幅が大きいこともわかった。

ICT教育では、教師からのフィードバックも効果的ではあるものの、それ以上に生徒自身が主体的に学習習慣をコントロールすることの方が成績の向上に役立つということだろう。

家庭でもスマホ・タブレットを用いたICTによる学習に注目が集まる

ICT教育が注目されているのは学校だけではない。一般家庭でも、スマホ・タブレットによるICT教育について親たちの熱い視線が集まっているようだ。

さまざまなe–ラーニング関連コンテンツを取り扱うイー・ラーニング研究所の調査結果に、その傾向が表れている。同研究所では、20代から50代の親を対象として「子どもの生活に関するアンケート」を行った。

この調査によると、スマホ・タブレットを持っている子どもは全体の約8割にのぼり、それらを使い学習している子どもは全体の約6割だった。また子供の学習が学校の授業だけで十分だと思うかとのアンケートでは、「そう思わない」「あまりそう思わない」と答えた親が全体の約7割にのぼっている。

これを踏まえ、学校の授業を補うために必要だと思うサービスは何かというアンケートでは、2位の「英会話スクール」、3位の「学習塾」を抑えて「学習アプリ」が1位に躍り出た。このことから、家庭でもスマホ・タブレットを用いたICTによる学習に、大きな期待が寄せられていることが分かる。

ICTを活用した学習は成績の向上に寄与し、家庭でのICT教育の期待も高い

今回紹介したClassi株式会社の調査では、ICTを活用した学習が生徒たちの成績向上に効果があることがわかった。またイー・ラーニング研究所の調査をみると、子を持つ親たちのICTによる学習の期待度が高いことも明らかである。

国内で教育におけるICTの活用が先進国並みに進んでいくことに対する課題は山積みだが、結果が出ている以上、その方向に舵を切らない手はない。

img:PR TIMES

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