インターネットの発達により、著作権や個人情報などの問題は更に深刻化してきている。このため、クリエイターも販売側もユーザーもその使用について細心の注意を払いながら創作活動を行なっている。
そのような状況下において、問題解決に白羽の矢が立ったのが最新技術であるブロックチェーンだ。仮想通貨の基盤技術である技術はそのフィールドを急速に拡大しており、このブロックチェーンがクリエイター界隈の長年にわたる問題を解消してくれるかもしれない。
今回は、ブロックチェーン技術を用い、クリエイターの情報を守ろうと立ち上がった2社を中心に公開情報と非公開情報をどのように分けるのか、その今後の展開をご紹介しよう。
アート×ブロックチェーンを展開するスタートバーン株式会社の狙いとは
仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンは、仮想通貨の盛り上がりと同時に注目され始めた。このシステムはデータの改ざんが難しく、安価にシステムの構築が可能なのが特徴だ。そのため、金融だけでなく、流通や不動産、貿易など様々な分野で採用されている。
そのなかで、また新たな分野がブロックチェーン技術を採用し、新しいサービスを生み出そうとしている。
アート×テクノロジーを中心に様々な事業を展開するスタートバーン株式会社は、2018年9月末をめどに文化・芸術品の管理に特化したアート×ブロックチェーンネットワークの構築の試験運用を開始する予定だ。
芸術・文化に関わる作品では、公開すべき「作品のタイトル、製作年、作者情報」などの情報と「所有者の個人情報や販売管理のための情報」をどのようにわけて管理するかという問題で長年意見が割れていた。
アートの発展において公開・共有するべき情報は発展のためにブロックチェーン上で管理することが業界では語られる一方、ギャラリーやオークションハウスでは、個人情報は厳密に管理したいという要望があり、対立していた。
こうした背景によってブロックチェーン化は難航していたが、公の資産を共有し、営利・非営利目的に関わらず、さまざまなプレイヤーの活動をサポートすることを目的としたアート×ブロックチェーンネットワークを構築が実現した。
このネットワークを活用することで、どの参加機関も独自の作品証明書発行サービスを行うことができ、作品売買・管理ができるようになる。また、それぞれの機関が運営中のサービスにアート×ブロックチェーンネットワークを組み込んでアップデートすることもできる。
このように、個人情報をはじめとした知的財産権を守ることにブロックチェーンを使用する事例が増えてきている。既存のシステムでは、情報を守るには不十分であるため、この流れは今後も波及していくだろう。
クリエイターの著作権を守り、ユーザーとの交流を促す。「CFun」とは?
著作権を始めとした知的財産権で最も問題が多いのが、アニメ・漫画などのサブカルチャーであろう。政府のクールジャパン戦略でも日本文化の一つとして取り上げていこうという気運は高まっている。
しかし、現状では対策の遅れがあだとなり、多くの海賊版や違法サイトが横行している。こうした違法サイトなどは世界中で作られており、一つを閉鎖したところで意味がなく、システムを作り、抜本的に問題に取り組む必要があると以前より指摘されていた。
今回、この問題にブロックチェーンという形で対応している会社が、CFunジャパン株式会社だ。同社はクリエイターの中国進出をサポートするという趣旨のもと、作品と世界をつなげるプラットフォーム「CFun」のβテスト版を発表した。
「CFun」の登場により、コンテンツのアップロードとユーザーとの会話が実現可能になった。またブロックチェーンを使用したことにより、作品を公開した時点で、誰が、いつ、どの作品を公開したのかが記録され、それぞれの作品における著作権の所在が明らかになる。
この技術により、公開したい情報は公開・共有をすることができるようになり、著作権などの厳重に管理したい情報は改ざんすることができないため、守れるようになった。
今後は、ファンからのコメントや、企業側からクリエイターに直接仕事の依頼を受けることができるなど、クリエイターとしての可能性を広げられる仕組みを同社では目指しているという。
ブロックチェーン技術による今後のクリエイター業界の展望
著作権・個人情報の問題は、インターネットの急速な発展とともに徐々に深刻化しており、クリエイターを始め、販売管理者、ユーザーにも大きな問題、負担としてのしかかってきている。
今後は、国内のみならず世界中で、さまざまなユーザーがこの問題に向き合うことになるだろう。以前のような著作権や個人情報をインターネット上に流すことは減るかもしれないが、依然として油断はできない。自分の権利は自分で守る必要があるということを認識しなければならない。
今回のように、ブロックチェーン技術による公開情報と非公開情報を明確に分けることで、著作権や個人情報の問題に一つの解答例が得られたといっていいかもしれない。
これは、創作を楽しむすべての人にとって、負担解消の大きな一歩といえるだろう。
img:PR TIMES