旅先の宿泊場所を探す時、何を基準に選ぶだろうか。値段、立地などのほかにも、Airbnb、ゲストハウス、またはホテルなど、様々な選択肢がある。
アーティストが手がけるお洒落な空間、行き届いた細やかなサービス、そして周辺の地域に溶け込みコミュニティを創出するシアトル発の「Ace Hotel」は、ファッションや音楽、カジュアルなお洒落を好む人なら必ず一度は泊まりたいホテルだ。
ホテル業界に大きなトレンドを作り、数々のファンを魅了してきた「Ace Hotel」が2019年に京都へ上陸する。アジアへの進出は日本が初めてだ。
“地域性”を重視した場作りで、コミュニティ機能を持つホテルへ
1999年にアメリカ・シアトルで生まれたデザインホテル「Ace Hotel」。目指すのは新たなカルチャーを創出する場だ。地域や周辺企業とコラボレーションし、リノベーションや地元のアーティストへデザインを依頼するなど“地域性”を意識したホテル作りを行っている。
例えば、Ace Hotel NewYorkは、長年アパートとして使われていた建物を、人気デザイナーであるRoman & Williams(ローマン・アンド・ウィリアムス)がリノベーションを手がけた。天井の高いロビーは開放的で、ソファに腰をかけて本を読む人もいれば、コワーキングスペースとして使う人もおり、宿泊者だけでなく地元の人も集まる場所となっている。
コミュニティの場としても成功したAce Hotelだが、現在はニューヨークやロンドンなど、アメリカ、イギリス国内の9か所に事業展開。このたび、10店舗目に京都の土地を選んだ。
「Ace Hotel Kyoto」で目指す、新しいカルチャーを育む空間
Ace Hotelが京都を選んだ理由を明かすところによると「日本の産業、芸術、文化などの発展や歴史にゆかりがあり、かつ世界有数の都市だと感じているから」という。日本の歴史でも欠かせない、数々の文化が作られてきた風土を引き継ぎ、さらにAce Hotelが今後の文化を育む場所となりたいという思いが込められているそうだ。
Ace Hotelは過去に、BEAMSやPORTER、トラベラーズカンパニーなど日本企業とコラボレーションを行っており、その過程で日本での開業を考えていたという。今回、NTT都市開発株式会社とパートナーシップを結ぶことで、国内外から観光客が集まる京都での事業展開が実現した。
「日本での展開は、私たちの長年の夢でした。京都の美と歴史に敬意を表しながら、世界に向けての繋がりと新しいカルチャーを育む空間を造りたい。私たちが抱く夢の完成にむけて、NTT都市開発や隈研吾氏をはじめとする、名実ともに優秀なチームとパートナーシップを組むことは、光栄であり身が引き締まる思いです」 と、Ace Hotel代表取締役社長のBrad Wilson(ブラッド・ウィルソン)氏は語る。
Ace Hotel Kyoto完成イメージ
2019年に完成予定のAce Hotel Kyotoは、2016年に閉館した商業施設「新風館」の跡地に、複合施設の一角として建てられる。ホテルの他には飲食店や物販、地域に開放された中庭の設計が進んでいる。Ace Hotelを中心とした新しい商業施設は「伝統と革新」という新風館のコンセプトを継承し、京都のランドマークとなることを目指すという。
新風館はもともと、1920年代に建てられた「旧京都中央電話局」を利用して、2001年にオープンした商業施設だ。2016年に閉館したが、Ace Hotelでは建物の一部をそのままにリノベーションを施す。デザインについては世界的に有名な建築家・隈研吾氏が監修する。客室数は213室で、ホテル内にはレストランやバー、宴会場なども計画中だ。
「京都という都市は、世界中から様々な人が集まる、非常にインターナショナルな場所だと思います。そのような場所で、ローカル/インターナショナルを問わず、クリエイティブ/カルチャラルな交流が行えることを楽しみにしています」と、Ace Hotelは日本進出に対して期待を寄せる。
京都以外の事業展開について、具体的な計画は未定。まずは京都のオープンに向けて注力していくと話した。
アメリカ生まれの企業が作る、京都での“地域性”を主軸としたホテルは、日本や訪日客にどのように受け入れられていくのか。また、「Ace Hotelらしさ」は京都の街へどのように溶け込んでいくのか。新旧の融合、そして和と洋の融合が実現するAce Hotel Kyotoは、見逃せない。