スティーブン・スピルバーグ監督によって1993年に映画化された『ジュラシック・パーク』。CGとアニマトロニクスを駆使したリアルな恐竜が描かれ、見る者を臨場感ある恐竜の世界に引き込んでくれる。
迫力ある映像に加え、生命倫理や生命の進化・歴史、科学技術の進歩と過信など考えさせられるメッセージも含まれており、子どもから大人まで世代に関わらず楽しめる作品だ。興行収入が当時世界1位となる9億1,469万ドル(約100億円)になったことからもその人気の高さがうかがえる。
『ジュラシック・パーク』シリーズの人気は衰えを知らず、今年7月にはシリーズ5作目となる『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が日本で公開される予定だ。子どものころに『ジュラシック・パーク』シリーズを観て、恐竜研究者の道を目指したいと思った人も多いかもしれない。
恐竜を研究する学問は古生物学だ。映画のなかでも描かれているように化石を用いて研究を行う。化石とそれが発掘された周辺環境から古代生物の生体・歴史・進化などを紐解いていく。
テクノロジーと融合する恐竜研究
古生物学者たちにとって重要な作業の1つに、化石発掘現場のデータ収集(写真によるマッピングなど)がある。恐竜の化石や足跡が発掘された場所を入念に分析することで、恐竜の生体だけでなく、群れで動いていたのか、捕食者から逃げてきたのか、などの情報が分かるという。
しかし、ほとんどの作業を人手で行っていたため、収集できるデータの量には限界があった。また危険な場所でのデータ収集は難しく、諦めざるを得なかった場合も多い。発掘現場が海中にあったり、100キロメートルに渡る海岸線にあったりするからだ。
そんな状況がテクノロジーの普及で変わりつつある。オーストラリア・クイーンズランド大学の古生物研究者らが、ドローンやレーザーを用いて、より精細かつ広範にデータを集める最新の方法を、科学ジャーナルサイトPeerJに寄稿した論文(2017年3月発表)にまとめている。
この論文によると、飛行機、ドローン、そして地上から写真やレーザーのデータを取得することで、発掘現場の3Dモデルを迅速かつ精細につくることが可能というのだ。この3Dモデルから、これまでは把握することが難しかった情報まで読み取れるという。たとえば、恐竜の種類やどのように移動していたのか、また恐竜の大きさや移動スピードなども推測することができるという。
Romilio A, et al. (2017) A multidisciplinary approach to digital mapping of dinosaurian tracksites in the Lower Cretaceous (Valanginian–Barremian) Broome Sandstone of the Dampier Peninsula, Western Australia. PeerJ 5:e3013より(https://peerj.com/articles/3013/)
テクノロジーを活用することで、研究のスピードと精度を格段に高めることが可能であり、今後の古生物学における発見も増えていくかもしれない。
実際、2018年4月にスコットランド・スカイ島で大型恐竜の化石発見に関する論文が発表されたが、この研究でもドローンが活躍したことが報じられている。発見されたのは竜脚下目という大型の草食恐竜の化石。またこれらの草食恐竜を捕食していたとみられる肉食恐竜の痕跡も発見されたという。
これまでスコットランドで発見された化石は少なく、貴重な発見だと伝えられている。発掘場所には断崖絶壁の崖が多くドローンの力が存分に発揮されたようだ。
ドローンやレーザーを使う手法は、古生物学だけでなく考古学などでも活用され始めており、研究者たちの必須ツールになっていくのは間違いないだろう。
恐竜の進化を知ることは、哺乳類や人間などの他の生物の進化を知り、さらには地球の歴史を知ることにもつながる。テクノロジーの活用で、知の領域をどこまで広げることができるのか、これからの展開が非常に楽しみである。