ミレニアル世代は「働き方は人並み」で「苦労はしたくない」傾向に。調査からミレニアル世代を読み解く

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今後の労働市場はミレニアル世代が主役となっていく。ミレニアル世代はデジタルネイティブとも呼ばれており、テクノロジーを駆使した新たなサービスなどへの抵抗がない。

さらに、それまでの世代とは異なった価値観から、今までにない経済体系を生み出していくと期待されている。しかし、今回の調査はこの期待とは反するような結果となった。

公益財団法人日本生産性本部と一般社団法人日本経済青年協議会は、平成30年度新入社員1,644人を対象にした「働くことの意識」調査結果を発表した。それによると、「働く目的」では、「楽しい生活をしたい」で最も多く、一方、「自分の能力をためす」は過去最低となった。今回はこの調査から、ミレニアル世代の特徴を象徴するような項目の結果をご紹介する

働く目的は「楽しい生活をしたい」。「自分の能力をためす」は過去最低に

まず、「働く目的」で最も多い回答は、平成12年度以降急増している「楽しい生活をしたい」で、過去最高水準を維持し41.1%となった。「経済的に豊かになる」がこのところ上昇し、30.4%と過去最高となっていることも注目される一方、かつてはバブル期を除いてトップになることもあった「自分の能力をためす」は長期にわたって減り続け、10.0%と過去最低を更新した。

また、平成に入って増加していた「社会に役立つ」は8.8%とこのところ低下に転じている。

近年、大学生を中心に奨学金を利用する学生が増え、その返済の負担が注目を集めているため、その利用状況についても質問をしている。返済する必要のある奨学金利用者全体(623人)の71.9%、四年制大卒では73.7%、大学院卒では71.5%が「負担に感じる」と回答している。

親の年収の伸びが限られる中、アルバイトと利子つきの奨学金で教育を受け、大きな負担を背負いながら社会人生活のスタートをきる新入社員が少なくないことがうかがえるとしている。

以下は、奨学金の利用状況である。

また、返済する奨学金を利用した人のみに質問したところ、

働くのは「人並みで十分」

その年の新入社員の就職活動が順調であったか(大卒求人倍率)で敏感に変化する項目に、「人並み以上に働きたいか」がある。景況感や就職活動の厳しさによって、「人並み以上」と「人並みで十分」が相反した動きを見した。

特にバブル経済末期の平成2~3年度には、「人並み以上」が大きく減り、「人並みで十分」が大きく増えたが、その後の景気低迷にともない平成12年度以降、入れ替わりを繰り返している。

ここ数年では、平成24年度に厳しい就職状況を背景に「人並み以上」が「人並みで十分」を一旦逆転した。

しかし平成25年度から「人並み以上」が減少(42.7%→40.1%→38.8%→34.2%→34.9%→31.3%)して今年度は過去最低を更新する一方、「人並みで十分」は増加(49.1%→52.5%→53.5%→58.3%→57.6%→61.6%)する傾向が続き、今年度は62.0%と過去最高を更新した。両者の差は、調査開始以来最大の30.3ポイント(昨年度22.7ポイント)に開いた。

仕事よりプライベートを優先

そして、「仕事」中心か「(私)生活」中心かという設問では差が拡大した。常に「両立」という回答が多数を占め今年度は78.0%だった。残りの「仕事」中心と「(私)生活」中心、という回答に注目すると、「(私)生活」中心という回答は平成3年の22.8%をピークに下がり続け、一時「仕事」中心が上回る結果となった。

しかし平成24年から「(私)生活」中心が再び増加し、「(私)生活」中心(平成28年度11.0→昨年度14.0→15.2%が「仕事」中心(8.6→6.9→6.7%)を上回り、今回はその差が8.5ポイントに広がっている。

また、デートの約束時に残業を命ぜられた場合は、「デートをやめて仕事をする」が68.5%、「ことわってデートをする」の30.9%を大きく上回り、プライベートな生活よりも仕事を優先する傾向が引き続きうかがえる。

全体としてはプライベートな生活よりも仕事を優先する傾向が引き続き見られるが、平成23年をピーク・ボトムとして「デート派」が増加(「残業派」が減少)し、今年はその変化がさらに継続された。「仕事」中心か、「(私)生活」中心かなど、他の項目にもプライベートな生活を重視する傾向が見られたとしている。

苦労はしたくない。自分の技能や能力、職種への適性に関心

若いうちの苦労についてどう思うか聞いたところ、平成23年度から「好んで苦労することはない」が増え続け、34.1%と過去最高の結果となった。

逆にその間、「進んで苦労すべきだ」は約20ポイント以上減っている。

また、会社選択の要因について最も多かった回答は、引き続き「自分の能力、個性が生かせるから」が31.0%だった。以下、「仕事が面白いから」の19.0%、「技術が覚えられるから」の10.0%の順となる。

長期にわたって減少傾向の「会社の将来性」と入れ替るように平成14年度から増えた「仕事が面白いから」は、平成23年度から平成28年度で10ポイント近く減少した(26.8%→17.3%)が、昨年度・今年度と増加した。中長期的には、職場に“寄らば大樹”的な期待をもつ傾向が退潮し、自らの技能や能力、あるいは職種への適性に関心がもたれる時代へと変化しているようだ。

柔軟な勤務形態がもたらす労働者と企業双方の利益

このようにミレニアル世代は個人のライフスタイルにあった仕事観を重視していることがわかる。それは、デロイト・トウシュ・トーマツの調査「デロイト ミレニアル年次調査 2017」の結果からもよくわかる。

この調査では、フレックスタイム制や、役割選択、雇用形態などを含めたグローバルにおける働き方の変化を見てみると、ミレニアル世代の84%が「自分たちの所属する企業では何らかの形で柔軟な勤務形態を導入している」と回答している。

また、柔軟な働き方を享受するミレニアル世代に、柔軟な働き方の影響を問うと、「生産性」「モチベーション」「健全な生活、健康、幸福度」などに影響していると8割前後が回答したという。

柔軟な働き方が提供されることで、ミレニアル世代はさまざまな価値を手にしていると感じていることがわかった。

そして、このような柔軟性は企業へのロイヤリティにも結びつくこともわかった。調査ではミレニアル世代は自身が所属する企業に対し、以下の点で責任感を感じるかを問う質問が行われた。「倫理的行動/企業の品位」、「企業の全体的な評判」、「企業の戦略的方向」などの項目でだ。この問いにおいて、柔軟な働き方をするミレニアル世代はそうでない世代に比べ、項目ごとの差はあれど、いずれも2~3倍近く責任感を持っていることが明らかになった。

数字的には全体の1/3程度にとどまっているものの、ミレニアル世代は働き方を柔軟に選択できるという自由を享受する代わりに、自身の行動を通し、企業に価値を返すかたちで責任を全うしているのだ。

ミレニアルが最大に力を発揮できる組織作りが生き残りのカギ

これから世界の人口はミレニアル世代がその多くを占めるため、柔軟な働き方を意識した企業づくりを進めていかなければならない。そのためには、彼らの指向を把握し、彼らが最大に力を発揮できる組織作りが、企業の生き残りを左右するだろう。

img: @Press

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