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フリーランスの数が過去最高になるなど、働き方やキャリアへの考え方は明らかに変化している。
特に1980年代~1990年代前半生まれのミレニアル世代や1990年代後半生まれのZ世代はその傾向が強く、それより上の世代の考え方が通用しないことも稀ではない。
この世代と円滑なコミュニケーションをとるためにも、新しい世代の考え方について理解を深めることは重要だ。
会社に望むのは円滑な人間関係
人材教育・研修コンサルティング会社の株式会社ヒップスターゲートは、2018年度に社会人となったZ世代の新入社員1,672名に対し、仕事の意識や価値観に関する調査を行った。
同社のゲーミフィケーション手法を取り入れた新しい研修メソッド「Do★Do★Do」は、「社員研修をもっと真面目に楽しむ」ことを提唱し業界から注目されている。今回の調査も、新人・若手社員を対象とした人材育成の品質向上を目的としたものだ。
この調査によると、「会社に対して望むこと」は、「希望の職種、勤務地(海外を含む)」(20.8%)や「定期的な昇給・昇格」(7.7%)を抑え、「人間関係が良好」(61.3%)であることがダントツの首位となっている。
また上司に対して求めることも、「部下の意見の尊重」(10.3%)や「リーダーシップ」(7.8%)といった主体性・厳しさに関する項目にはあまり回答が集まらなかった。かわりに「親しみやすさ」(34.9%)や「丁寧な指導」(23.8%)、「公平な評価、平等性」(22.5%)といったより円滑な人間関係を望む回答の割合が上位をしめている。
出世については強いこだわりはもっていない
この調査によると、Z世代は出世に関する意欲が強くないようだ。「出世をしたくない」(1.5%)という回答はさすがにほとんどないものの、「部長になりたい」(19.1%)や「役員・社長になりたい」(15.3%)、「課長になりたい」(10.5%)を抑え、「ある程度出世はしたいが、とくにこだわりはない」(51.9%)という回答が過半数をしめる結果となった。
平社員のままでいることを望むわけではないものの、出世をして組織の運営に力を発揮するような上の世代が好んだ働き方にはあまり関心がないようだ。これもZ世代の特徴を表す結果といえるだろう。
ワークライフバランスを重視した働き方を求め給与・賞与の使い道にもそれが反映される
特にZ世代の仕事への意識を顕著に示すのは「働き方について」というアンケートの回答だ。「仕事に打ち込むキャリアアップを図りたい」(18.8%)や「安定した環境でできるだけ長く勤めたい」(12.2%)という回答も一定数集まっているものの、「余暇やプライベートも充実させたい」(50.3%)が約半数にのぼった。
仕事そのものに対する希望より、ワークライフバランスを重視するZ世代の意識が見て取れる。組織人として会社への忠誠や仕事のやりがいを大切にする、より上の世代との意識の乖離が想定される。
給与・賞与の使い道に関するアンケートでも似た傾向がみられる。「生活費、貯蓄、返済(奨学金など)」(41.3%)に回答が集まるのは当然だが、それをおさえて「趣味(旅行・レジャー・車・服飾など)」(41.7%)と答えた割合が多く全体の1位となった。ワークライフバランスを重視し、プライベートの時間を充実させたいZ世代の意識が、ここでもみてとれる。
なお「社会人になって期待していること」という設問では、「自己成長」(31.8%)や「出会い」(27.5%)や「経済的な自立」(19.3%)といった回答が上位をしめていた。この点では上の世代と同様に、大人として見られることの意識や覚悟がみてとれる。
コミュニケーション能力が高く主体性にかけるZ世代
2018年度の新入社員の強みと弱みの集計データも公開されている。強みでは「コミュニケーション力・協調性」(18%)がトップだった一方で、弱みとして「主体性や当事者意識が低く、積極的に発信ができない」(17%)という回答が一番多かった。
主体性を前面に出して突出するより、スムーズな人間関係を望むZ世代の特徴がこの回答にもあらわれている。
Z世代は貯金でなく資産運用への興味を強めている
前述の通り、給与・賞与の使い道として新入社員の約4割が「生活費、貯蓄、返済(奨学金など)」と答えている。ソーシャルレンディング比較サービス「クラウドポート」の運営元である株式会社クラウドポートが、2018年の新入社員に対して行なったアンケート調査では、貯金の使い道にも踏み込んでいる。
その結果をみると、「貯金を将来的に運用したいと思うか」というアンケートでは「思う」が65%に上り、「思わない」(23.5%)を大きく上回った。ちなみに2017年度の同じ調査では「思う」が57.3%だったため、それと比較して約8%上昇している。このように多くの新入社員が、貯金をそのまま預けるのではなく、運用して資産を増やしたいと考えているようだ。これもZ世代の価値観の傾向をしめすデータといえるだろう。
新しい世代の価値観と調和することが必要
現代では、ブラック企業といった社会問題が注目され、新入社員の不安のタネにもなっている。
プライベートの時間や寝る時間を削って働くのをよしとしていた、上の世代の価値観は見直す必要が生じているといえるだろう。
今回紹介したアンケートに見られるように、ライフワークバランスや職場での円滑な人間関係を大切にするZ世代の価値観を理解し、調和を目指すことが必要だ。