年収が高い職種といえば何だろうか。
まず思い浮かぶのは、医師や金融関連の職種かもしれない。専門性が高く人手不足の医師はもちろん、ファンドマネジャーやプライベートエクイティといった成果主義の金融関連職がイメージされる。
しかし最近のトレンドとして、「ブロックチェーン」「サイバーセキュリティ」などのキーワードから、IT関連の高度人材に注目が集まっているようだ。最新の職種別年収ランキングでチェックしてみたい。
職種別年収ベスト30にIT専門5職種がランクイン
求人検索エンジン「スタンバイ」調べ
2018年6月19日、求人検索エンジン「スタンバイ」が「正社員職種別年収ランキング2018(提示年収の中央値 ベスト30)」を発表した。
「スタンバイ」は、HRテック・ベンチャーの株式会社ビズリーチが運営する、求人検索エンジンだ。国内の全業種・全職種・全雇用形態を対象に、800万件以上の求人を一括で検索できる。
調査は、2018年4月30日時点で「スタンバイ」に掲載されている正社員求人約319万件を対象に、職種別の提示年収の中央値について調査した。
1位となったのは「医師」で1,400万円。医師不足の状況が続き、24時間体制の医療機関では医師が夜勤や当直に対応するなど、生活が不規則だ。
命を預かる責任の重さ、高い専門性に加え、激務に対する対価として高年収が提示されている。
金融専門職から9職種がランクインしているのが目立つ。プライベートエクイティ2位、ファンドマネージャー3位、財務アドバイザリー3位、アクチュアリー6位、ストラクチャードファイナンス6位、プロジェクトファイナンス6位、コーポレートファイナンス9位、金融商品開発15位、M&A18位といった具合だ。
利益率が高く、「高度プロフェッショナル制度」に入ることから分かるように、徹底した成果主義であることが要因となっているようだ。
また、IT専門職の5職種がランクインしていることが、最近のトレンドとして注目される。
ブロックチェーン、AI(人工知能)、IoT、ビッグデータなどの新技術が次々に登場し、日本では各業界で大型のIT関連投資が続いている。情報セキュリティーのニーズも増加し、IT人材不足が深刻だ。
セキュリティコンサルタント9位、プロダクトマネージャー18位、データサイエンティスト23位、システムコンサルタント23位、パッケージ導入コンサルタント29位といった職種が、上位に入った。
またIT人材に注目が集まる中、CIO(Chief Information Officer、最高情報責任者)が5位になっている。経営戦略に沿った情報戦略・IT投資計画の策定などに責任を持つ上位役員だ。経済産業省の調査によると、国内のCIOの設置率は29.5%。需要過多の状況で、高年収が提示されている。
従来から高年収のイメージがあった医師・金融関連に加え、最近のトレンドとしてIT関連の職種が目立つことが分かる。さらにIT人材にフォーカスして、求人動向をみてみよう。
IT関連の求人動向
求人検索エンジン「スタンバイ」調べ
2018年5月31日に、求人検索エンジン「スタンバイ」は、IT関連求人の動向調査の結果を発表している。
IT関連の技術や概念、職種などのキーワードについて、「スタンバイ」に掲載される求人を対象に調査を行った。求人に含まれるキーワードごとに、求人数と、求人数の前年比、最高提示年収を見ることができる。
例えば、全求人840万件のうち、「ブロックチェーン」の単語を含む求人は1,099件で、前年同月比4.2倍に増加しているのが分かる。
最高提示年収は、2,200万円だ。年収も、増加率も高い。求人を見ると、IT企業、大手通信会社などで、仮想通貨関連のほか、新規事業立ち上げに関する求人が目立つようだ。
「AI/人工知能/機械学習」キーワードでは、求人件数は19,959件、前年比は2.2倍、最高提示年収は4,000万円となる。
IT企業やメーカーをはじめ、広告業界、教育業界など募集企業の業界は多岐にわたる。職種も、エンジニア、研究員、コンサルティング営業など幅が広い。
「IoT/M2M(Machine to Machine)」の場合、求人件数は17,660件で、前年比2.1倍。最高提示年収は、調査の中では最も高い4,600万円という結果となった。
市場規模が大きかったのは、組み立て製造、プロセス製造、官公庁、公共/公益、クロスインダストリー。これからは、「スマートホーム」関連の市場の伸びも予測されている。メーカー、IT企業、携帯キャリア、タクシー会社、コンサルティング会社をはじめ幅広い業界で求人が見られる。
「自動運転」のキーワードを含む求人は、求人件数が5,806件で、前年比2倍。最高2,100万円の年収が提示されている。
ボストン コンサルティング グループの予測では、2030年に、世界の新車販売台数(乗用車)の1割が、レベル4・5の自動運転車になる。今後10年から15年で、自動車業界の収益構造を大きく変化させるキーワードだ。
キーワードとして「フィンテック/FinTech」を含む求人を見ると、求人件数は3,459件で前年比2倍、最高提示年収は4,000万円だ。矢野経済研究所によると、国内のFinTech(フィンテック)市場規模は、2015年度の48.8億円か、ら2021年度には808億円に成長すると予測されている。
「サイバーセキュリティ」では、求人件数は1,481件、前年比は2倍、最高提示年収は3,000万円となっている。日本政府は、2020年に向けて、今後3年間の政府目標となる「次期サイバーセキュリティ戦略」を策定した。
サイバー防衛体制の整備および対策を強化する方針を示しており、サイバーセキュリティ人材のニーズがさらに高まると予想される。
経済産業省によると、情報セキュリティ人材は、現在約28万人。不足数は現在の約13万人から、2020年には約19万人に拡大するとの予測がある。
IT関連の求人が前年比で大幅に増加し、提示される年収も高くなる傾向が読み取れる。
IT分野への投資が広がり、人材への需要は増え続ける見通し
AIやIoTといった新しいテクノロジーの登場は、その分野への投資を呼ぶ。投資が増える分野では、そこで働く人材も必要となる。今回みてきた調査では、IT人材への需要が前年比で2倍以上になるケースも多くみられた。
IT人材への需要が増えれば、また提示される年収も高くなる。年収ランキングに、IT関連職種が多数入るというトレンドが見られるようになった。
IT人材に注目が集まる、求人と年収のこのトレンドは、これからも続きそうだ。
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