民泊新法施行が間近に迫り、新規参入者が多くなることが予想される。施行によりユーザーだけではなく、事業者の動きも活発になっているだろう。これにより事業者はユーザーの視点だけではなく、新法に沿ったサービス展開をしなければならない。利用者にとってはトラブルが懸念材料であるが、事業者目線ではどうなのだろうか。
楽天グループの通信会社である楽天コミュニケーションズ株式会社の調査によると、約半数の事業者が「ご近所への配慮」「カギの受け渡し」など民泊運営上の課題はあるものの、運営物件数を今後増やしていきたいと考えていることが明らかになったという。
今回は、この調査結果をもとに民泊について、事業者とユーザーの意識をみていく。
事業者の不安は「騒音問題など近隣とのトラブル」が最多
この調査は6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に向けて、民泊運営事業者300名を対象に民泊運営に関する意識調査として実施されたもの。
まず、民泊を運営していく上で不安に感じることは何か質問したところ、「騒音問題など近隣とのトラブル」が43.3%と最多となり、民泊運営には「ご近所への配慮」が欠かせないと考えている民泊運営事業者が多いことがわかった。
また、女性の民泊運営事業者が運営上で最も不安に感じていることは「鍵の受け渡し」であることがわかった。その他、外国旅行客との文化や習慣の違いによるトラブルや言語障壁などへの不安の声も寄せられた。
今後も運営物件数を増やしていきたいか聞いたところ、「大幅に増やす」「増やす」という回答は 47.3%となり、オーナーの約半数が民泊運営拡大を考えていることが明らかになった。
現在、民泊を運営している事業者のうち約4割の事業者が、今後は住宅宿泊事業法(民泊新法)の範囲で運営を検討していることが明らかになった。また、年間営業日数の上限である 180日ルール以外の活用方法としては「マンスリーマンション、ウィークリーマンション、スペースとして貸し出しする」が 78.3%と圧倒的に多く、リソースを存分に活用するための準備を進めている様子がうかがえるとしている。
民泊運営事業を進めていくなかで、工数を削減出来る IT サービスを使用したいか質問したところ、71.0%がそう思うと回答した。その中でも、特に IT を活用したい業務として、「予約状況の管理」「個人情報の管理」「チェックイン、チェックアウトの管理」などが挙げられた。また、AI を活用した運営も視野に入れているという声も寄せられたという。
ユーザーの約6割が「民泊を利用したくない」
一方、ユーザー側の意識はどうなのだろうか。不動産関連の比較査定サイト「スマイスター」を運営するリビン・テクノロジーズ株式会社の調査によると、約6割が民泊を利用したくないと回答しており、民泊の認知度も46.7%と半数以下だった。
この調査は、6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に合わせて、「スマイスター」を利用した40歳以上の男女全国418人を対象に行ったもの。対象年齢がミドル層以上になっているため、ミレニアル世代の声は反映されていない形となるが、民泊の対象ユーザーであることには変わりないため、この結果を事業者側は活かすことで、民泊事業上のヒントになるかもしれない。
対象者の年齢は、40代は25.1%、50代は39.5%、60代以上は35.4%だった。「民泊を知っているか?」を聞いたところ、意外にも年齢が上がるにつれて認知度は高くなることがわかった。
また、「知っている民泊サイト」については、世界的に有名な民泊サイト『Airbnb』でも認知度は各年代で1割にも満たない結果となった。
民泊制度についてはどう思っているかについては、賛成は60代以上が多く、反対は40代、50代が多かった。
また、各年代において犯罪や治安の悪化を心配している回答が多く、住環境の保護を一番に考えていることがわかった。
*「スマイスター調べ」のデータを使用しました。
開きのある事業者とユーザーの意識をどう解決するか
今回の調査から事業者は、これからも民泊を拡大傾向にあることがわかった。また、その不安は「騒音問題など近隣とのトラブル」といった近所への配慮が多かった。
一方、ユーザー側の意識は事業者ほど、積極的ではないようだ。認知度も低く、治安などへの不安が大きく、利用を躊躇している傾向がみられる。
楽天コミュニケーションズでは、このような課題に対して、民泊運営の効率化をIoTで実現するという「あんしんステイIoT」というサービスで、事業者を支援していく。民泊は事業者、ユーザー双方にとってメリットが大きいだけに、両者に安心をもたらし、利用が拡大すること期待したい。
img: NIKKEI