“5Gの40倍の無線伝送”が可能になる?毎秒100ギガビットの無線伝送の成功は生活に何をもたらすのか

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IoTの促進によりさまざまなモノがインターネットに接続され、通信インフラの需要は年々高まってきている。それに伴い、新たな回線である「5G」の商用サービス化が見込まれているが、それを前にして通信インフラの技術は次のステップに進んでしまうのかもしれない。

今回発表された技術には、近い将来の我々の生活を大きく変える可能性が秘められている。

NTTと東工大、超高速ICを開発

日本電信電話株式会社と東京工業大学は共同で、高い周波数帯でも動作する無線フロントエンド向け超高速ICを開発。テラヘルツ波の300GHz帯において世界最速となる毎秒100ギガビットの無線伝送に成功したと発表した。

従来、300GHz帯のような高い周波数を利用しても、IC内部や実装における各ポート間の不要信号の漏れなどが生じやすく、毎秒数10ギガビット級の無線伝送に留まっていた。今回、独自の高アイソレーション設計技術の適用により、300GHz帯においても毎秒100ギガビットの無線伝送を可能にした。

毎秒100ギガビットの無線伝送が実現したことにより、将来的には300GHz帯の広い周波数帯域を活かして複数キャリアに拡張できる。また、MIMOやOAM等の空間多重技術を併用することで、毎秒400ギガビットの大容量の無線伝送を可能とする超高速IC技術として活用できる。

毎秒400ギガビットの無線伝送は、現在のLTEやWi-Fiのおよそ400倍。次世代の移動体通信技術である5Gの40倍に相当する。今回の実験から実装できる超高速IC技術は、未利用のテラヘルツ波周波数帯の通信分野及び非通信分野への活用を切り拓く技術として期待される。

5Gが日常生活へ与える影響

では、まもなく訪れる「5G」時代になると、わたしたちの生活にはどのような影響があるのか?

まず考えられるのは、身近な存在のスマートフォンへの影響だ。3Gの普及によりスマートフォンで動画を閲覧することが普通になり、4Gになると通信速度の向上により映画をスムーズに再生できるようになった。5Gではさらなる通信速度の向上により、4Kや8Kなどの高画質の動画をスマートフォンでも鑑賞が可能になる。

動画の画質だけではない。5Gになると通信の大容量化により、イベント会場のように多くの人が集まる場所でも同時に快適な通信ができるようになる。現場の雰囲気を味わいながら、それぞれの人が見たい視点で楽しめる動画サービスの提供が可能だ。5Gによって映像コンテンツは大きく発展していくことが予想される。

5Gはソフトの面だけではなく、端末にも影響を与える。カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチの調査では、世界の5Gスマートフォンの売り上げは2021年までに225%の伸びを示し、ほぼ1.1億台に達すると予測した。

カギを握るのは、米国、韓国、中国、日本における5Gインフラの開発である。特に巨大市場である中国は、5Gに左右される可能性が高い。中国の5G端末への移行はゆっくりと一定のペースで進み、5Gのインフラが確立すると同時に市場は一気に成長すると予測される。

スマートフォン以外にも、5Gはコネクテッドカーの接続技術として欠かせないものとして期待される。

ドライバーに様々な利便性や情報を提供するコネクテッドカーには、高速の通信が必要となってくる。そこで、5Gインフラの開発が自動車の新たな市場開拓を後押しする可能性が大いにあるのだ。Counterpoint社のIoTトラッカーサービスの最新の調査によれば、世界のコネクテッドカー市場は2020年までに270%成長し、接続機能を搭載して出荷される乗用車は、2018年から2022年の間に1.25億台に達する見通しであるという。

コネクテッドカーの先にあるのは自動運転である。自動車にカメラとセンサーを搭載すれば、道路や周辺状況の解析をオフラインでも機能する。しかし、自動車の運転では刻一刻と変化する状況を予測しながら、ドライバーは瞬時に判断する必要がある。市街地での歩行者の動きや交通量の情報をリアルタイムに解析できれば、自動運転の安全性と利便性を飛躍的に向上させるはずだ。ネットワーク上にあるビッグデータを瞬時に活用できる通信技術を自動車に搭載することができると、自動運転の技術をさらに発展させることができるだろう。ここでもカギを握るのが、次世代高速通信「5G」技術だ。

5G、超高速ICがもたらす未来

通信速度の高速化は我々の生活にさまざまな影響を与えてきた。スマートフォンで動画コンテンツの視聴やWeb上でのファイルのやり取りなどの目にみえる変化だけでなく、身の回りにある製品がインターネットに接続することによる利便性の向上を享受している。

そして、次にやってくる波は次世代高速通信「5G」の商用化だ。4K・8K映像の高精細な動画配信や、AR(拡張現実)と組み合わせたライブ映像の体験など、各社ともサービスの開発に余念がない。自動車の自動運転が普及するためにも5G技術が必要だ。

さらに、その先を行く今回の毎秒100ギガビットの超高速通信技術の成功である。我々の暮らしやビジネスを大きく変える可能性がある技術が遠くない未来に待ち構えている。

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