民泊新法の施行が間近に迫り、不動産や観光などさまざまな業界が注目している。住環境の保護や違法民泊への制約が盛り込まれており、ユーザーやホスト、第三者などに配慮がなされた民泊が普及することが期待される。しかし世間の民泊への意識はネガティブなものであった。
不動産関連の比較査定サイト「スマイスター」を運営するリビン・テクノロジーズ株式会社の調査によると、約6割が民泊利用したくないと回答しており、民泊の認知度も46.7%と半数以下だった。
『Airbnb』でさえ認知度は1割にも満たず
ミレニアル世代に関していえば、民泊への興味関心は高く、その利用にも抵抗が少ないというのが定説だが、今回の調査は、6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)施行に合わせて、「スマイスター」を利用した40歳以上の男女全国418人を対象に行ったもの。
民泊事業を業務としている、今後民泊関連に従事しようとするミレニアル世代には、今後40代以上のユーザーも民泊のターゲットとなっていくため、現状と傾向の把握、対策として役にたつかもしれない。
まず、スマイスターを利用した40歳以上の人に「年齢」を聞いたところ、40代は25.1%、50代は39.5%、60代以上は35.4%だった。
次に「民泊を知っているか?」を聞いた。
・『知っている』(40代:40.0%、50代:45.5%、60代以上:54.7%)
・『なんとなく知っている』(40代:18.1%、50代:16.4%、60代以上:21.6%)
・『聞いたことがある』(40代:27.6%、50代:24.2%、60代以上:14.9%)
・『知らない』(40代:14.3%、50代:13.9%、60代以上:8.8%)
となり、意外にも年齢が上がるにつれて認知度は高くなることがわかった。
次に「知っている民泊サイト」を聞いた。
・『知っているものはない』(40代:84.8%、50代:84.2%、60代以上:87.2%)
となり、全ての年齢で最も多い回答となった。
世界的に有名な民泊サイト『Airbnb』でも認知度は各年代で1割にも満たない結果となった。
60代以上は民泊制度を好意的に思っている人が約7割も
では、彼らは民泊制度についてはどう思っているのだろうか?
・『賛成』(40代:10.5%、50代:17.0%、60代以上:14.9%)
・『どちらかというと賛成』(40代:51.4%、50代:41.2%、60代以上:54.1%)
・『どちらかというと反対』(40代:26.7%、50代:27.3%、60代以上:18.2%)
・『反対』(40代:11.4%、50代:14.5%、60代以上:12.8%)
となった。また、60代以上は民泊制度を好意的に思っている人が69.0%もいることがわかった。
「賛成」または「どちらかというと賛成」の人にその理由を聞いた。
・『空き家(空室)の活用ができる』(40代:61.5%、50代:60.4%、60代以上:57.8%)
・『宿泊施設不足の解消になる』(40代:44.6%、50代:50.0%、60代以上:38.2%)
・『地域が活性化する』(40代:33.8%、50代:33.3%、60代以上:25.5%)
となり、『空き家(空室)の活用ができる』といった意見がどの年齢からも多い結果となった。
これは、昨今増加している空き家問題や、政府が観光立国を目指しているのに宿が足りないという矛盾を解決してくれる。また地方に外国人観光客が訪れることによる地域活性や地方創生をメリットと考え、「賛成」または「どちらかというと賛成」と思っている人が多いのではないかと同社では分析している。
また、「反対」または「どちらかというと反対」の人にその理由を聞いた。
・『犯罪に利用されたら困る』(40代:57.5%、50代:60.9%、60代以上:69.6%)
・『地域の治安が悪化する』(40代:55.0%、50代:43.5%、60代以上:71.7%)
各年代において犯罪や治安の悪化を心配している回答が多く、住環境の保護を一番に考えていることがわかる。
実際、ヤミ民泊が犯罪に利用された事件やトラブルが報道されているため、住宅街に観光目的の訪日外国人が頻繁に出入りすることに抵抗を感じている人が多いのかもしれないという。特に、治安の悪化に関しては、50代が43.5%だったのに対し、60代以上は71.7%もの人が『反対』の理由に挙げているからだ。
どの年齢も民泊未経験者がほとんど
そして、「民泊の利用経験」を聞いたところ、
・『ある』(40代:2.9%、50代:3.0%、60代以上:6.1%)
・『ない』(40代:97.1%、50代:97.0%、60代以上:93.9%)
となり、どの年齢も民泊未経験者がほとんどであることがわかった。
つぎに「今後民泊を利用したいか?」を聞いた。
・『国内で利用したい』(40代:28.6%、50代:19.4%、60代以上:23.0%)
・『海外で利用したい』(40代:9.5%、50代:10.9%、60代以上:6.1%)
・『国内外で利用したい』(40代:7.6%、50代:6.7%、60代以上:14.9%)
・『利用したくない』(40代:54.3%、50代:63.0%、60代以上:56.1%)
となり、民泊制度に「賛成」または「どちらかというと賛成」している人が約6割いたにもかかわらず、利用したいと思っている人は約4割しかいないこともわかったとしている。
最後に「機会があれば民泊を経営したいか?」を聞いた。
・『経営したい』(40代:22.8%、50代:24.8%、60代以上:14.9%)
・『経営したくない』(40代:76.2%、50代:75.2%、60代以上:84.5%)
・『既に経営している』(40代:1.0%、50代:0.0%、60代以上:0.7%)
という結果となった。
「経営したい」または「既に経営している」と回答した人にその理由を聞いた。
・『空き家(空室)を活用できる』(40代:48.0%、50代:56.1%、60代以上:65.2%)
・『ゲスト(宿泊者)との交流が楽しめる』(40代:36.0%、50代:43.9%、60代以上:26.1%)
・『未経験でも経営できる』(40代:28.0%、50代:26.9%、60代以上:26.1%)
となり、全ての年齢において『空き家(空室)を活用できる』という回答が多くなった。
また、40代24.0%、50代34.0%だった『投資目的』は60代以上では4.4%、40代24.0%、60代以上26.1%だった『先行投資が安い』は50代では7.3%と低い結果になった。
民泊ゲストの信用度を可視化するツールも
これらの結果をみると、民泊についてはホストもユーザーも、信用や安心感といった点で問題が大きいようだ。それに対し、その信用を可視化しようというサービスが準備されているのをご存じだろうか。
アプリではじめるIoTアパート経営「TATERU Apartment(タテルアパートメント)」の開発・運営を行う株式会社TATERUと子会社である株式会社TATERU bnbが開発中の「bnb SCORE」がそれだ。
「bnb SCORE」は、エルズサポート株式会社からデータ提供を受け、ゲストの信用スコアを可視化しようというもの。このシステムは、ビッグデータを活用し、機械学習させることで、信用スコアの出力をオートメーション化するAIシステムだ。
ソーシャルメディアやブログから収集したプロフィール情報(趣味・嗜好など)や行動履歴に加え、同社が保有する約4万件の属性データやアクテビティ、さらにはエルズサポートの保有する約40万件の属性データやアクテビティなどの定性的データを、データベースに蓄積し機械学習させる。
これにより、スコアリングモデルを生成、信用スコアを出力するというものだ。
TATERU bnb社の運営するIoT民泊アパートでは、日本人宿泊者の割合が6割を超えており、今後は同システムを無人運営施設などで利用することで、ゲストの質を見極め、不正利用を防止、トラブル回避につなげるという。
世間の民泊への意識の改善に向けた取り組みが肝要
インバウンドの増加や2020年の東京オリンピックの開催を控え、民泊に注目が集まっている。しかし、今回の調査結果からはいまだ、認知度も低く、イメージも決して良くはないことがわかった。
民泊は、気軽に事業として始めることができ、ゲストとしても気軽に利用できるが、それだけに、信用度・不安の問題が付きまとうのは否めない。これを払拭するには、ホストの努力、ゲストがマナーを厳守することはもちろんだが、前述した「bnb SCORE」などのツールを活用するなど世間の民泊への意識の改善に向けた取り組みが必要ではないだろうか。
*この記事は「スマイスター調べ」のデータを使用しました。
img:スマイスター調べ