IoTをはじめとした、ブロックチェーンやフィンテックなど、世界でITの需要が急速に高まっている。ITに力を入れる国内企業は市場の成長が比例するかのように増えているようだ。しかしその背景にはエンジニア不足の問題を抱えており、求人が高騰しているのが現状である。
求人検索エンジン「スタンバイ」による求人動向調査によると、同サイトに掲載された全求人840万件のうち、求人のなかに「ブロックチェーン」の単語を含む求人は前年同月比4.2倍に増加していることがわかったという。
「ブロックチェーン」求人が4.2倍に急増
「スタンバイ」は株式会社ビズリーチが運営するは求人検索エンジンである。今回は、「スタンバイ」に掲載される求人を対象に、IT関連の技術や概念、職種などのキーワードについて調査した。
その結果、2018年4月に同サイトに掲載された全求人840万件のうち、求人のなかに「ブロックチェーン」の単語を含む求人は前年同月比4.2倍に増加していることがわかった。
また、「AI/人工知能/機械学習」「IoT/M2M」「自動運転」「フィンテック/FinTech」「サイバーセキュリティ」のいずれかの単語を含む求人数はそれぞれ2倍以上だった。
さらに、求人のなかで提示された最高年収を見ると、「IoT/M2M」で4,600万円、「AI/人工知能/機械学習」と「フィンテック/FinTech」で4,000万円、「データサイエンティスト」「ビッグデータ」「情報セキュリティ」で3,900万円、「サイバーセキュリティ」で3,000万円となっている。この結果から、先端IT人材の人手不足によるニーズの高さがうかがえるとしている。
2021年の国内ブロックチェーン関連市場規模は298億円に
IDC Japanによると、国内ブロックチェーン関連ソリューション市場の2016年から2021年の年間平均成長率は133%で2021年の市場規模は298億円になると予測されており、市場が急成長するなか、求人も急増しているという。
「スタンバイ」におけるブロックチェーンの求人を見ると、IT企業、大手通信会社などで、仮想通貨関連のほか、新規事業立ち上げに関する求人が目立つ。
また、EY総合研究所の2015年の調査では、AI関連産業の市場規模(AIを活用した機器、システムなどの国内さまざまな産業分野での市場規模)は、2015年の3.7兆円から2030年に約87兆円に成長すると予想されている。
このように、市場が急成長するなか、求人も増加している。「スタンバイ」における「AI/人工知能/機械学習」の求人を見ると、IT企業やメーカーをはじめ、広告業界、教育業界など募集企業の業界は多岐にわたり、エンジニア、研究員、コンサルティング営業など幅広い職種の求人が掲載されているのだ。
一方、国内のIoT市場におけるユーザー支出額は、IDC Japanによると2017年の6.2兆円から2022年に12.4兆円に成長すると予測されている。
なかでも2017年に市場規模が大きかったのは、組み立て製造、プロセス製造、官公庁、公共/公益、クロスインダストリーだった。2021年から2022年には、住宅内の家電製品や空調の利用効率を向上させる「スマートホーム」関連の市場が伸び、一般消費者に向けたIoT市場が急成長すると予想されており、今後IoT/M2Mの求人はますます急増すると予測している。
「スタンバイ」におけるIoT/M2Mの求人は、前年同月比2.1倍で、メーカー、IT企業、携帯キャリア、タクシー会社、コンサルティング会社をはじめ幅広い業界で、職種もエンジニア、コンサルタント、事業・商品企画、営業など多岐にわたった。
自動運転、FinTech、セキュリティの求人が2倍に
また、ボストン コンサルティング グループによると、レベル4・5の自動運転車は、2030年に世界の新車販売台数(乗用車)の1割になると予想されている。
そして、今後10年から15年で加速し、自動車業界の収益構造を大きく変化させると考えられている。「スタンバイ」における自動運転の求人は、前年同月比2倍で、自動車関連メーカーのシステム開発エンジニア、テストエンジニア、製造責任者などがあり、今後も急増すると予想している。
国内のFinTech(フィンテック)市場規模は、矢野経済研究所によると、2015年度の48.8億円から2021年度には808億円に成長すると予測されている。
「スタンバイ」におけるフィンテック/FinTechの求人も前年同月比2倍に増加しており、金融機関、IT企業、コンサルティング会社などのエンジニア、事業企画、コンサルティング営業、グローバル職など多岐にわたる。
一方、富士経済によると、2020年のセキュリティ関連市場は、2016年比18.1%増の5,577億円と予測されている。
セキュリティについては、日本政府は、2020年に向けて、今後3年間の政府目標となる「次期サイバーセキュリティ戦略」において、サイバー防衛体制の整備および対策を強化する方針を示している。これによると、今後、サイバーセキュリティ人材のニーズがさらに高まると予想されるという。
「スタンバイ」におけるサイバーセキュリティの求人は、前年同月比2倍で、金融機関、保険会社、監査法人、コンサルティング会社、自動車メーカー、IT企業などのサイバーセキュリティ担当、コンサルタント、営業、自動車におけるサイバーセキュリティ技術開発などがあります。経済産業省によると、情報セキュリティ人材は、現在約28万人で、不足数は現在の約13万人から2020年には約19万人に拡大すると予想しており、今後求人はますます増加すると予想している。
日本では各業界で大型のIT関連投資が続き、情報セキュリティのニーズが増加すると同時に、ブロックチェーン、AI、IoT、ビッグデータなどの新技術の登場により、IT人材不足が深刻化している。今後ますますIT需要が拡大する一方、労働力人口の減少が見込まれるなか、IT人材の求人数増加と人材不足、給与の高騰は進むと予想している。
デジタルトランスフォーメーションの加速が求人を高騰させる
日本マイクロソフト株式会社によると、今後、デジタルトランスフォーメーションが加速し、2021年までに日本のGDPを約11兆円、年間成長率を0.4%増加させると推測している。
加えて2017年には、GDPに占める割合は約8%に過ぎなかった、モバイル、IoT(モノのインターネット)およびAI(人工知能)といったデジタルテクノロジーを直接活用した製品やサービスが、2021年までに6倍以上の約50%へと到達すると予測している。
おそらく、今回のエンジニア求人の高騰もその需要に対する人材不足から起こっているのはないだろうか。
だとすると、このような変化の結果、実際にはどのような変化が起きるのだろうか。まず、日本マイクロソフトの同調査によると、日本からは150人が回答しており、デジタルトランスフォーメーションによる効用を以下のとおり答えている。
- 利益率向上
- コスト削減
- 生産性向上
- 生産・運用時間の短縮
- 顧客獲得時間の短縮
一方、調査からは、デジタルトランスフォーメーションが社会に対して以下の3つの主要な利点を提供するとの結果が得られた。
- よりスマート、安全で効率的な都市
- 健康状態の予測と管理の向上によるヘルスケアの強化
- 高付加価値の職業の創出
さらに、回答者の75%が、今後3年間にデジタルトランスフォーメーションによって職業が変革され、現在の雇用の約半分が高付加価値の職種に再配置されるか、デジタル時代のニーズに合致した形で再教育されることになると考えているという。
時代のニーズに対応した的確な対応策が必要
このように、IT人材が不足しており、それは今後も続くだろうことがわかった。しかし、前述したように今後はデジタルトランスフォーメーションによって職業が変革されるであろうことが予想され、時代のニーズに合致した形で人材を再教育することが必要となるだろう。
そして、これはなにもIT分野に限ったことではなく、少子化による労働力自体の不足が懸念されるため、あらゆる分野で時代のニーズに対応した的確な対応策が必要になるだろう。
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