2017年、仮想通貨の年間入出金総額は2兆円以上にまで上り、さらに仮想通貨を活用した、新しい資金調達手段であるICO(イニシャル・コイン・オファーリング)での調達資金総額は、年間60億ドルを超えた。現状は法整備や詐欺事件といった課題がまだまだあるが、仮想通貨が新しい通貨として世界中に浸透しはじめているのは、確かな事実だろう。
ICOを利用するメリットは、調達額の高さだけではなく、世界中の人達からスピーディに資金調達を行うことができる点だ。しかし、実際に資金調達をしたくても、ホワイトペーパーの作成方法や、現在の国内での法規制の仕組みが分からず、ICOを実施することを現実的に計画できない企業、プロジェクトが多いのが実情ではないだろうか。
そのような背景のなか、フジマル・ニコルス氏がCEOを務める「Wowoo」は、2018年5月15日に香港に拠点を置く仮想通貨取引所「Bit-Z」での上場を果たした。そしてWowooのトークンであるWowBitは販売されて数分のうちに完売となり、仮想通貨業界から高い注目を集めていることが明確になった。
現在世界中から注目を浴びているWowooだが、今後はICOやブロックチェーンの知識がない企業や団体でも、ICOでの資金調達ができるよう、スマートコントラクトが実装されたプラットフォームの作成に向けて研究・開発を行っている。
2018年5月22日、オウケイウェイブ本社にて、
- WowooのCEO フジマル・ニコルス氏
- OKfinc LTD 代表取締役社長 松田元氏
※OKfinc LTDは株式会社オウケイウェイブが運営しており、仮想通貨関連事業を執り行う - Bitcoin.com CEO ロジャー・バー氏
こちらの3者が対談を行った。
対談では仮想通貨の発展、そしてWowooがこれから世界で果たす役割について、熱い言葉が交わされ進行した。
上場、ファーストリリース後のWowooの展開
対談のはじめに、ニコルス氏が、WowooがBit-Zでの上場を果たした時の市場の反応、そしてWowooのコンセプト、プロジェクトについて語った。
Wowoo CEO フジマル・ニコルス氏
ニコルス(以下敬称略):先日Bit-Zに晴れてファーストリリースをさせていただき、沢山の人の協力のもと、国内外からの注目を集めることに成功しました。一般セール、プレセール共にすぐに完売になってしまい、想像していたよりも多くの人に届けることができなかった点は残念でしたが、セールをクリアできたこと自体は嬉しく思っています。また、2018年5月15日にはBit-Zでの上場も果たしました。
Wowooのコンセプトは「人を助ける」ことです。そして最初のミッションとして、現在ICOのプラットフォームのβ版の研究・開発を行なっています。なぜなら年々ブロックチェーンに関わりたいと思っている企業や団体は増えていますが、どうやってブロックチェーンやホワイトペーパーを作ればいいのかなど、ICOの方法が分からない企業や団体が多いということを課題として感じたからです。
ですので、Wowooは企業にヒアリングをして、実装したスマートコントラクトによってICOに向けた適切なコンサルティングができるプラットフォームの開発を進めており、現在その実現を目指しています。
日本でICOを実施すること、そしてICOを拡散する上での課題とは
日本でICOを実施する際の課題に、法規制の問題がある。また、2018年1月に発生したコインチェックのNEM流出事件などの影響から、今後ICOの法規制はより強化される可能性が高い。また現時点でも、発行するトークンが仮想通貨に該当した場合、仮想通貨交換業の登録が必要になるなど、ICOへのハードルが高くなっているのが実状だ。
現在の日本でICOを実施する際の課題、また日本でICOでの資金調達をより身近に、広範囲へと広める方法について松田氏とニコルス氏が語った。
OKfinc LTD 代表取締役社長 松田元氏
松田:今の日本のICOへの法規制には若干のいびつさがあるため、日本ではなく海外でICOを実施するスタートアップは多いです。2017年にタイで上場した「Omise GO」もそうです。Omise GOは結果として日本に逆輸入されますが、最初に外国で立ち上げるスタートアップがいるのは、法規制の観点から見て、実施の難易度の高さから、どうすることもできないのが実状です。
ニコルス:ICOや仮想通貨の利用を地方や貧民街など、都心だけではなく広範囲にまで広げるには、日本だけではなくアジアもですが、今のペースではかなり先のことになると感じています。日本人は作ることに長けているので、そのうち国内でも高い技術のブロックチェーンが生まれると思います。しかし、日本人は作ったものを広めることが得意ではありません。
新しい文化を広めるためには大きなパワーが必要です。日本でもスマートフォンのように実際手に取って使う段階になれば、新しいものは一気に広がります。日本の場合、一度海外で流行ったものは広まりやすい傾向があります。ですので世界のICOやブロックチェーンの標準レベルが上がり、普及が広がれば、自然と日本でも広がっていくと思っています。
松田:いつの時代も、イノベーションは思いもよらないオーパーツによって起こります。そして大切なのは変革を正しく理解できるかどうかだと思います。自分の利権を考えず、解放してオープンソースにした方が、一つ一つのプロジェクトのミスも減り、結果として皆が得をします。
ICOは年々社会的認知を着実に得ていて、注目度も増していると感じます。これは2000年代のFXなど、過去に金融商品が出てきた時の状況と似ています。
そして、過去の金融商品と同じように、ICOもこれから安定させるための規制を受けると思われます。今はユーティリティトークンを発行して、上場するという順番ですが、これからはおそらくセキュリティトークンが主流になります。規制はきつくなる可能性が高いですが、その分健全に発展していく可能性が高いと、見込んでいます。
ブロックチェーン開発に必要なのは問題提起とソリューションが出せるデザイナー
仮想通貨全体の時価総額は2018年1月のピークの時期よりは下がっているが、長期的に見ると仮想通貨市場は年々大きな成長を遂げている。そして、ICOの対象分野も年々拡大しており、広告、芸術などの非産業分野にも広がりつつある。
続いて、これからの仮想通貨市場とICOが成長するための課題、また今後の見通しについて3者が語った。
左から フジマル・ニコルス氏、Bitcoin.com CEO ロジャー・バー氏、松田元氏
松田:現在ブロックチェーン開発に対して課題を感じている人はいると思いますが、実際のところ技術自体はそんなに難しくないと感じています。私は技術者ではないですが、リードするアーキテクトがしっかり技術教育を実施すれば問題ありません。技術者が集まらないということもないでしょう。ビットコインで起きた課題はビットコインキャッシュで解決されているように、ブロックチェーン開発は着実に改良されています。
むしろ、弊社が課題を感じているのはデザインです。ブロックチェーン技術を使用してどのようなサービスが作れるのか、またどのように社会的変容を起こすことができるのか、このような問題提起とソリューションを明確に出せるデザイナーが必要とされています。
ニコルス:仮想通貨の大きなメリットは、国内、国外問わず金銭的な支援をしたい企業が出てきた時、国内外を問わず、スマホさえあれば手軽に送金ができる点です。ICOは投資家だけではなく、一般の人も支援に参加できます。そのため、今後はスタートアップだけに限らず、企業内のチームや小さな自治体など、少数のプロジェクトでも発展する見込みがあります。
ロジャー:今後はIPOよりICOの方が人気になる可能性が高いでしょう。なぜならICOは購入する参加者が企業との繋がりを直接作れる、とても良いシステムだからです。
今は3種類のお金があります。セキュリティトークンとユーティリティトークンと、現金です。そしてセキュリティトークンとユーティリティトークンなどの仮想通貨は仮想通貨のまま使った方がいいと思っています。これから仮想通貨を利用する会社は絶対に増えるし、全ての種類はそのまま使った方が結果としてメリットを得られるからです。
Wowoo のターゲットは、ICOによって大きな相乗効果を出せるユーザー
Bit-Zでの上場を果たし、今年の夏にはβ版のプラットフォームを発表する予定のWowooだが、長期的な視野では今後どのような展開を計画しているのか、ニコルス氏がその展望を語った。
ニコルス: ICOのプラットフォームは、Wowoo以外にもいくつか前例があります。そして、他のプラットフォームとWowooを差別化できる点として挙げられるのが、権利関係とスマートコントラクトです。これらに関してはより良いものを作り込む自信があります。
そしてWowooのターゲットは、そのプロジェクトでICOを実施することで、大きな相乗効果が生まれると感じる人たちです。それこそ大学のサークルコミュニティくらいの小さなレベルのプロジェクトでもいいと思っています。Wowooを利用し、気軽にICOを実施できるようになるのが目標です。
今年に関しては、いち早くブロックチェーンやICOのメリットを沢山の人に知ってもらうため、スピードを重視しています。現在は10プロジェクトほど請け負っていますが、一つでも進行しているプロジェクトが人々の目に止まり、「ブロックチェーンとはこういったものなのか」と、理解するきっかけになってくれたら嬉しく思います。
ただしICOの欠点として、大きなことを謳い、多額の資金調達をしたのにもか関わらず、サービスをローンチしないという点が挙げられます。しかし、弊社では確実にプラットフォームをリリースする予定なので安心してほしいです。今後は本当にブロックチェーンを必要としている業界、またブロックチェーンがあればよりスムーズに発展できるところにサービスを提供していきたいと思っています。
ロジャー:人々にとって役立ち、便利なものは活用しなければいけません。そしてWowooにはそれがあります。自分にできることはやろうと思い、Wowooに協力していくことを決めました。
Wowoo のプラットフォームでICOをより身近に、気軽にICOを活用できる社会へ
仮想通貨という新しく生まれた通貨も、ICOという新しい資金調達の手段も、今はまだ情報感度が高い人であっても、投機の対象という認識でいる人が多いのではないだろうか。
しかし、今回の3人の対談から伝わってきたのは、投機によって上げられる利益の高さではなく「課題解決への希望の一手」としての展望だ。一人でも多くの人が簡単にICOを実施できるようになれば、社会の課題解決の速度は加速し、また世界中の人と協力して問題に取り組むことができる可能性が高くなる。
Wowooのプラットフォームが開発されることによって、小さなプロジェクトも気軽にICOが実施できるようになり、ICOがもっと身近に、そしてもっと世界中の人が仮想通貨を通じて繋がることができる社会がそこまできているのかもしれない。
※この記事には仮想通貨に関する情報が含まれます。
仮想通貨の利用につきましては、金融庁ウェブサイトの内容を合わせてご確認ください。
「仮想通貨の利用者のみなさまへ」(金融庁ウェブサイト)